表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
5歳の女の子と獣人さんのお話
137/873

137回目 フォール

「なんでよ!」

ケイト(15才)が強くテーブルを叩き、

マシューはひっくり返ったコーヒーカップを皿に戻しながら伏せていた耳をピンと立てて彼女を見る

カフェの中の人々の奇異の視線などお構いなしだ、今言わなければいけないことを言うために腹を決めた

「もう限界なんだよ、頼むからもう俺に関わるんじゃねぇ。仕事場にまで来るなんて頭いかれてんじゃねぇか!?」

「いかれてるって・・・私はただあなたのことが心配で」

「心配ならなおさらだ、お前のためにももう俺たちは会わない方が良い」

わるいけど、そういおうとしてマシューは口をつぐんだ

ケイトの目は彼を憎々しく睨んでいる

これで終わりにしよう、そう心の中で呟き、椅子にかけていたジャケットを羽織りながらマシューはその場を離れる


「私絶対諦めない、絶対にあなたを逃がさないから!!」

カフェから出たマシューを追いかけてケイトが外に出ると、彼の姿は人混みに紛れもうどこにもなかった

「地獄に堕ちろクソ犬!!」

奇しくもその晩マシューは頭から血を流して倒れているのを発見され、病院へ搬送された




「はい、リンゴ剥けたよ」

そういって渡されたリンゴのつややかな輝きを見つめながら、

病室の真っ白なベッドの上でマシューはなにかを考えていた

「お姉ちゃんはボクにとってどんな人なの?」


マシューがそういうと、ケイトは自分の左手を広げてみせる、薬指には婚約指輪。

「婚約者、私とあなたはお互いがとっても大切な相手なの。そうだ、あなたの指輪してあげるね」

言われるままマシューが指を差し出すと、ケイトは嬉しそうに彼の指に自分の指輪と同じものをはめる

「ありがとうお姉ちゃん、大切にするね」

マシューが満面の笑みでそういうとケイトは彼を抱きしめ、もう離さないと囁いた


マシューは頭に深い傷を負った影響で小さな子供時代まで精神と記憶が退行していた

それは退院するときまで続き、医者ももう回復は望めないだろうと言った

身よりのないマシューはケイトの家で養われることになったが、

マシューは次第に浮かない顔をするようになっていった




ケイトが家に帰ってくると、マシューはまた浮かない顔をしていた

彼女の顔を見るとおかえりと小さな声で言い、申し訳なさそうに顔をうつむく

「どうしたのマシュー、何か欲しいものがあるなら私が買ってくるよ」

「うんありがとうお姉ちゃん、でも違うんだ。ボクこのままじゃいけないと思って」

「どうして?」

「お姉ちゃんに迷惑かけてばかりだから、なんとか一人でもやっていけるようにがんばらなきゃって」

「どうして?」

「えっ、あの、お医者さんがそうしたほうがいいよって・・・」


ケイトはころっと優しい顔で彼を抱きしめ、風呂上がりで湯気の立つその頭をタオルで拭く

「マシューはね私と一緒にいればいいの、私がなんでも欲しいものをあげる。私がなんでもしてあげる

 だから私と一緒にいればいいのよ?」

「ごめんねお姉ちゃん、ボクお姉ちゃんのこと傷つけちゃったかな」

「いいの、いいのよ」

ケイトは耳をたたみ伏せ目になったマシューを抱きしめると優しい声でそういった




彼女の温もりを頼もしいと感じ、なにもしらないマシューは安堵のため息と共にしっぽを振る

「ボクお姉ちゃんのこと好きだ」

「ケイトって呼んで」

そういうとケイトはさらに強く抱きしめる

「もう一回・・・言って」

「ケイト、好きだよ」

「マシュー、私のマシュー!」


ケイトは彼をベッドに押し倒し、そのふかふかの毛皮に顔を埋めると部屋の電気を消す

その一瞬マシューには彼女が狂気をはらんだ笑みをしていたように見えたが、

彼は気のせいだと自分に言い聞かせ、彼女に自らの体の自由をゆだねた




「ねぇケイト、ボク早く記憶を取り戻したいな。そうしたらケイトも嬉しい?」

「そうね。でも今のままでもいい、今のあなたも素敵だものマシュー、前よりもずっと」

ケイトが彼の耳元に口を近づけると、その目が赤く光る

「記憶なんて取り戻さなくても良いのよ」

マシューの目から光が消えた

「うん、ボクこのままでいい」


「そう、良い子ね」

ケイトが彼の頭を撫でるとマシューは正気に戻り目をぱちくりさせた




記憶なんて取り戻さなくても良い、それは彼女が本当に望んでいたことだ

むしろケイトにとって彼が記憶を取り戻すことは彼を失うことに相当していた

なぜなら彼が記憶を失ったのはケイトが彼の後頭部をハンマーで殴りつけたからだ

ケイトはあの晩無理心中を図り、すでに事切れていた

ここにいるのは一人の女の執念、悪霊と世間では呼ばれる存在なのだろうなと彼女はあざ笑った


これは純粋な愛情、それを悪だというのは世間が腐敗した証拠だと彼女は考えていた

絶対に逃がさない。彼は私だけのものなのだ

邪魔する奴はみんな殺してやる


薄暗い部屋で眠りに落ちたマシューを抱く彼女の姿はさながら悪魔のそれに似て、

夜の帳の中へと深く沈んで消えていった


ごさいじは教会で暮らす霊感の強い子で

ここからマシューに近づいてケイトからあなたを切り離すには

貴方の意志で彼女から離れたいと思わなきゃいけないのよ

とか助言したりしながらケイトと対決するんだけど

ケイトがどんどん力をつけて、教会のエクソシストを殺したりするの

んで教会が神という名をつけた聖書に閉じこめた悪霊を

彼女の霊力で操ってケイトを食わせてマシューを寝取るの


でマシューが記憶を取り戻すんだけど、ごさいじに言われたとおりにしなかったため

彼の内部にケイトの断片が残って人格は彼女のものになるってオチなのですが

ちょっと別バージョンに昔の自分が書き換えたようです。理由は昔すぎて覚えてない…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ