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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
5歳の女の子と獣人さんのお話
128/873

128回目 ダークネスグロリア

アメリカのとある辺境の街で奇妙な変死事件が連続していた。

犯人の痕跡や、被害者の殺される理由、すべてが白紙の通称「盲目の聖者事件」。


主人公はハイエナ獣人のゲイツ。

彼の捜査で犯人を見つけ、犯人を逮捕に向かったゲイツ。

しかし犯人を目の前にした次の瞬間彼の前にあったのは一人の人間の死体と、

彼の両腕にかけられた手錠だった。


状況証拠しかないという理由で無罪放免となったゲイツ。

しかし事件自体を恐れる人々は彼を再び法の執行者とすることを恐れ、

政府は人々の意向にあわせ彼を免職させる。


警備員やベビーシッターの仕事を転々としながら、

刑事時代のコネを使いながら個人的にあの事件を調べ続けるゲイツ。

すさみ腐りきっていたゲイツだったがベビーシッター先で出会った少女ルイニー(5さい)の

不思議な魅力が彼を癒し励まして、少しづつ人間性を取り戻し、

おざなりになっていた私生活も回復の兆しを見せ始める。

ルイニーはまるで人の中で欠けた物を見抜く力があるようだった。

彼女がある日自分の見てきた事件の現場で綺麗だと思った景色を絵に描いているのを見て、

少し不思議な気持ちになるゲイツ。

恋人と選んだお礼の熊のぬいぐるみを贈り、無邪気に喜ぶ彼女を見てそんな気持ちも忘れていたのだが。


ルイニーの両親とも親しくなった彼が、

彼女に買い物を教えてあげて欲しいと言われ一緒にディスカウントストアに向かった先でそれは現れた。


ディスカウントストアでハンマーを振り回し物を壊す妙な行動をする二人組を見かけ声をかけるゲイツ。

なれなれしく話しかけてくる二人組の青年。

「いやーあのときは助かったよ、その後やりやすくてさ」

意味不明な言葉の連続の中にあの事件のことを思い出し表情を変えるゲイツ。

「思い出した?でも無駄だよ」

そういうとおしゃべりな男の後ろにいた寡黙な男が前に出てゲイツの頭に手をかざす。

「なんのつもりだ?」

不思議そうな顔でそれを見るゲイツに驚く二人組、次の瞬間彼の後ろを睨み付ける。

「お前か?まさか・・・」

店員が駆けつけ逃げ出す青年二人。

「おじちゃん行こう?」

そういってルイニーに手を取られ歩き出すゲイツ。


青年達はルイニーを見ていたのか?


犯人不明の事件が起きたのはその数日後の事だった。

凶器はハンマーのような鈍器。ゲイツの脳裏にはあのディスカウントストアの二人組、

そしてルイニーの顔。


そして事件は思わぬ方向に進み始める。


地震が多発し始める街。

殺人現場のような絵を描き始めるルイニーを心配する両親が彼女を病院に連れて行こうとするが、

彼女はゲイツとじゃなきゃ行かないといって聞かない。


ゲイツは両親と行くべきじゃないのか?と言いながら快くそれを引き受ける。

「時間がないの」

そういって彼女が見せた絵にはあのときの二人の青年。

「みんな死ぬわ、彼らに殺される。そのまえに手を打たないと」

「TVの見過ぎだ」

「オーブラム通りに向かって、サイモン・クラウ」

「雑貨屋の店主がどうした、それより病院に行かなきゃ」

「まぬけ」

「ん?」

「とんだ間抜けだぜ、玄関には鍵をかけて裏口は南京錠。こんなもん簡単に破れる」

「・・・何を言ってる」

「早く行って、私をまともにしたいと思うなら」


ゲイツが向かった家から二人の男が走り出してくる。

目深にフードをかぶって姿は判らないがゲイツにはそれがあの二人だと理解できた。

一人が車の中の彼を凝視した瞬間脳に直接声が聞こえる。

「次はお前だ、お前を殺してやる」


心配するルイニーを大丈夫だとなだめて、銃を手入れして身の守りを固めるゲイツ。

しかし彼を襲ってきたのは青年ではなかった。

妙な状況になり身柄を警察に確保されるゲイツは、

元上司から自分を襲ってきた人間を洗うと未発見の犯罪を犯している人間ばかりだとわかる。

「どういうことだ?」

ファイルを読んでいるゲイツの頭に上司が銃を押しつける。

「世の中には逆らっちゃいけない人間がいるのさ」


家で眠っていたルイニーが突然目を覚まし電話をかけ始める。


警察署内で電話が鳴り気をとられた上司を押しのけ警察署から逃げ出すゲイツ。


次はゲイツの携帯にルイニーからの電話が入る。

「番号は教えてないはずだぞ」

「わかるの、きっとあのお兄ちゃん達も私と同じ。でも私とは違う、信じて」

「・・・わかった、お前の家に向かうあと30分でつく準備しろ」


実は青年はテレパシー能力使いであり、

殺人を犯したときに死体に能力をかけて『殺人につながる根拠の喪失』をさせるようにしていた。

それに対抗できるのはルイニーの能力だけだが彼女はまだ非力な5さい、

彼女の能力は特殊で他のテレパシー能力者の能力使用の履歴や行動がすべて見える。


二人で協力して廃ショッピングモールに青年達を追いつめるが、

青年達を追ってたどり着いた先には彼らの殺人の原因があった。

無数の信者に囲まれ王として君臨する二人。

彼らは他者の都合の悪い人間を代理で殺すことでシンパを増やし、

ある種のカリスマになっていたのだ。


追う側が逃げる側に。


逃げながらルイニーはテレパシー能力を持つ青年にメッセージを送り続ける。

被害者の感じていた日々の幸せ思い出そして理不尽に殺される苦しみや悲しみを贈り続ける。


「メリークリスマス、デイビー」


ルイニーがそう言った瞬間テレパシー能力をもつ少年が銃で自分の頭を撃ち抜き自殺する。

車に乗ってゲイツ達をひき殺そうとしていた青年がそれに驚き運転を誤って横転し、

青年が閉じこめられる。


近くにいた信者に助けを求めるが、能力を持つデイビーが死んだ今彼を助けようとする人間は誰一人いなかった。


爆発炎上する車。

到着した警察達によって逮捕される信者達。

事件は人の闇を照らすことなく解決した。




クリスマスパーティをルイニーの家族と恋人連れのゲイツがすごす。

ルイニーからのプレゼントを開くとその中には警察バッチが入っていた、

彼女の両親が警察から彼に渡して欲しいと頼まれたと言う。


心当たりがあるのはゲイツの若い元部下の豚獣人のディックマンだ。

「これで仕事探しからは解放されるな」

恋人と顔を見合わせ彼女の肩を抱き笑みがこぼれるゲイツ。


事件が続いていた時とは全く違う屈託のない子供らしさを取り戻したルイニーにだっこをせびられ、

しぶしぶ彼女を抱きかかえながらも幸せそうな笑顔を見せる彼は、

よその人間が見たらまるで兄妹そのものであっただろう。


両親のいなかった彼は今家族を手に入れたのだ。


記念撮影をしながら、彼の心は今暖炉が放つ暖かな幸せの温もりをかみしめていた。

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