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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
5歳の女の子と獣人さんのお話
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127回目 ラブレス

社会構造の問題で一般市民は結婚や出産子育てが不可能になり、政府が半端に人の尊厳を守った結果、一般市民の新規IDは全て一般市民に課せられた精子と卵子の提供により集められたライブラリーから人工子宮で産み出された子供達だけになった。

恋愛し結婚して子を授かり育てられる富裕層はそうして産まれた子供達をラブレスとさげずんでいた。


人間の出生から管理できるようになると人間の悪性はやはり悪意をむき出しにし、社会が管理しやすいように個人的な視点や思想を持たないように管理教育し、ガスマスクのようなマスクの着用を義務付けた上で、それでも彼らに自由があるかのように世にはなっていった。


富裕層のボディーガードとして勤めることになったラブレスの青年バナーは主の愛玩アンドロイド「リーディ」を暫く預かることになってしまう。

主のプライベートな長期旅行のため旅行期間中はラブレスなど連れて行けるかとバナーと彼の相棒のランドーの同行を拒んだ主はリーディだけを彼に預けたのだった。

人間らしさをプログラムされたリーディに人間性を要求され戸惑いながらも、バナーは真似事から初めて少しずつコミュニケーションのキャッチボールが可能になっていく。


主がリーディが彼と親しくしている姿を見た持ち主は、彼女が彼と性交渉をしたと勘違いしリーディをその場で破壊してしまう。

バナーはその瞬間憎しみと怒りを知る。


主に対する復讐を決意したバナーの精神状態の異常は脳内にインプラントされたデバイスにより速やかに彼を作ったメーカーへと連絡されバナーと瓜二つの殺し屋が何人もやってくる。

彼らの遺伝配列はバナーとほぼ同じ、つまりバナーにとっての量産された双子の兄弟たちだった。

感情を持ったバナーが犯罪を犯し製造した会社が責任追及を受けないように秘密裏に製造されていた入れ替え用の個体だったのだ。

メーカーに彼の殺害を依頼したのはメーカーの筆頭株主でもある彼の主だった。

バナーはゴミのように転がるいくつもの自分と同じ顔の死体の中で命乞いをする主を無慈悲に殺害する。


バナーの元に彼の相棒のラブレスランドーが現れる。

バナーとアンドロイドの姿に彼も感化されランドーにも自我と意識が芽生えていたのだ。

相棒に諭されるがバナーは彼に謝罪する。

「感情の行き着く先を体感してみたい、だからなるべく大きな形で大義名分で復習を成し遂げたい」

ランドーにバナーは麻薬中毒者のような笑みを向けた。

彼の目的はラブレスを生み出したもの全てに対する復讐、その手段としての虐殺。

ランドーは決意を固めバナーと殺しあう。


相棒の手にかかったバナーは穏やかな表情をしていた。

「感情の力は強い誘惑にあらがい切れなかった」

そう悔いるバナーにランドーは

「お前の心は目覚めたばかりで幼すぎたんだ」

そういって彼の手を握る。


バナーの呼吸が次第に弱く体温が冷たくなっていく、その体が死に沈んでいくのを見届けたあとでランドーは上層部への報告を行った。


後日。

新しい主の元でのボディガードの仕事を新人のラブレスと行うことになったランドー。

新人のラブレスはまるで出会ったときのバナーのように無機質な人間性しか持ち合わせておらず、彼は懐かしさと共に一つの決意を抱く。

ランドーは新人の肩を軽く叩くと、彼の心をゆっくり育てていくことをかつての相棒に誓うのだった。


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