126回目 絆創膏とすり傷少女
「ん、もういいよ」
「無理するな、もうすこししっかり傷を癒せ」
「でも・・・うん、わかったよ」
シスター姿の少女リオ(5さい)はその毛むくじゃらの腕を握りしめる
それに答えるように彼女を抱きしめる形で座っている大男は、
より彼女をしっかり抱きしめられるように姿勢を変えた
「あ・・・はぁッ」
リオが小さく吐息をもらすと彼女の体が空に浮かぶ月と同じ色に鈍く輝く
彼女が少し胸を開けて傷を確認すると、さっきまで滲んでいた血も痛みも消え、傷跡すら残っていなかった
ふとある事を思い出したリオは大男に顔を向けた
目深にかぶったフードの中を地面に反射した月光がほのかに照らす
獰猛な獣の顔、その表情が優しく動く
彼は温かな毛皮に包まれたその手でリオの頭をぽんぽんと撫でた
「ねぇ、ルルド君の力って人の古傷とかも消せる?」
「ん?まぁできなくもないが・・・俺の力はお前限定でしか使えないぞ、忘れたか」
「そっか」
残念そうにうつむくリオにルルドと呼ばれた男はふと考えるような顔をする
心当たりがあるのはあの一件、気持ちは理解できるが
「昼間の女の子だな?」
「うん、気にしてない振りしてたけど。きっと彼女、自分の傷で苦しんでる」
自分の事よりも他人を気にするこの感情、愚かしい。以前の彼ならそう一笑に付すところだろう。
しかし今の彼は違った、彼を変えたのは他でもないリオだ
「俺はお前のために作られた絆創膏だ、それ以上でも以下でもない。すまんな」
「謝ることないよ!私ルルド君がいてくれてほんとに幸せ、だからそんな顔しないで」
愚直なまでのこの優しさに一度死んだ彼の魂は救われたのだ
それが絆創膏かどうかは置いといて
元々は魔族なんだけどルルド君の死体を元に
リオの肉体を修復する魔力回路としてフランケンシュタインになったんだ
魂を魔法で砕かれていてハイライトの消えた目をしてたんだけど
ある事をきっかけに心を取り戻したんだ
(上の方にそれが知れるとまずい)
リオは不死の肉体なんだけど、新陳代謝が一切行われない
だから歩いてると関節がすり減りっぱなしで痛いし
皮膚や髪も伸びなくて痛い、怪我も治らない
それをルルドの力で修復してるんだ体がミンチになっても死なないんだよ
ちなみに心臓貫かれた傷を治してるとこ
精神が少し壊れてる設定
世界の中に卵を産みつけられた人間が何人かいる世界で
リオもその中の一人なんだけど
その特異な力場の発生から魔王の卵を宿している可能性があるんだ
魔族は人に植え付けられた卵から生まれる
ルルドも元は山賊の腹を食い破って生まれたんだ
ちなみにリオは世界で一番世界を呪い憎んでいたから魔王の器に選ばれたの
優しさは憎しみの裏返しでしかない
優しくする相手には同じくらい憎しみを抱いてるんだよ
いつもみんな死ねばいいのにって思いながら笑顔を作ってるの
ルルドはそんな状態なのに演技でも人を気づかえる彼女の心は綺麗な心だと
たった一人信じて傍にいるんだ
自分ですら信じていない心をルルドだけは理解し受け入れてる
でもその愛情にまだリオは気付いてないんだ
そして憎しみで卵は刻一刻と成長してるんだよ
卵自体人間が生み出した物で、卵の成長も人の業から
そしてふ化した卵がまた人間に卵をうみつける事が出来るのは
ふ化した時に喰い殺された人間が「ほかのやつも同じ目に逢えばいいのに」
って望むからなんだ
原初の人間が生み出された時使われた赤い土
それは魔族の卵を孵化させるために使われる苗床だった
楽園が地上から切り離された今
魔族(元天界の住民)達は赤い土で作られた人間を苗床に繁殖する手段を選んだ
ちなみに楽園にいる神も実は人間で、
滅びかけた世界を世界の果て(文明の英知の集合体)を使い再生した
だから本質的には人間も魔族も同じ存在なんだ




