120回目 星降る夜に夢をみて
幼いころに母を亡くし、父の再婚した意地悪な継母と義姉達にいじめられながら、
埃まるけで毎日掃除をさせられている少女リンダ(5さい)
冷たい水で雑巾をしぼり終わり、氷のように赤く冷たくかじかんだ手を
一生懸命はーはーっと息をかけて暖めようとするリンダ。
チャカチャカチャカ、ちょこん。
少女が視線を上げると、そこには一匹のどぶねずみが少しえへんという顔をして
彼女に両手を広げて立っていた。
リンダは継母たちの目がないか確認し小さくうなづくと、彼をそっと両手ですくい上げる。
彼のぬくもりが手にしみて、リンダは感謝をこめて彼を胸に抱いた。
外に出る自由すらない彼女にはたった一人、いや一匹だけの
とても大切な無二の親友がいた。
お城の舞踏会があるという知らせをうけ、そわそわし始める継母と姉たち。
当然のごとくリンダはドレスやオシャレな小物を買い与えられることも
ダンスの先生の指導を受けられることもなかったが
遠い記憶の中にある父の教えてくれたステップを思い出しながら、
母の形見の手作りのドレスで目を閉じ
自分は今舞踏会にいて素敵な王子様と踊っているんだと想像しながら毎晩踊り続けていた。
それだけで十分幸せだという彼女に、ネズミのカッツはそんなのおかしいよ!と言う。
カッツは危険を承知で街中の黒ネコに掛け合い、
ある一人の親切な魔女を紹介してもらうことに成功する。
彼女のおかげで舞踏会にいける!リンダはカッツを潰してしまうくらい抱きしめ
キャーキャーと叫び声をあげて喜ぶ。
いざ舞踏会へ
魔女に城へ向かうために必要だと言われ、リンダはかぼちゃやハツカネズミやトカゲを連れてきました
かぼちゃは馬車にハツカネズミ達は白馬トカゲたちは従者に早変わり
リンダがいつのまにか肩の上からいなくなっていたカッツを探していると
馬車の上から素敵なネズミ獣人の御者がリンダに手を伸ばし彼女に声をかけました
リンダは彼がカッツだとすぐにわかりました
不思議と呼吸が止まり、その視線から目が離せなくなってしまうリンダ
「いそいで、舞踏会が始まってしまうよ!」
そういう魔女の声に我に返ると、
カッツの手を取りひらりと飛ぶように馬車に乗り込み、リンダは城へ向かいました。
魔女からもらった素敵なアクセサリーや
少しパワーアップした形見のドレスは
リンダの生まれついての魅力を引き立てるには十分な働きをし
王子様はリンダの美しさに夢中になって彼女をダンスに誘います
今まで夢に描くだけだった世界、そして自分の手を取り一緒に踊るのは国中の女の子たちのあこがれの王子様。
憧れていた時の中にあってもなぜかリンダの心は上の空、
頭はのぼせたようにぽーっとして、魔法が解ける時間に帰る時ガラスでできた靴を一足落としてしまうほど。
「どうだった?」
まるで自分のことのようにワクワクとした声で聞いてくるカッツに
「うん」
と空返事のリンダ。
その後王子が自分を探していると知っても、
勘のいい王子を騙してなんとか自分があの舞踏会の娘とばれないように画策するリンダ。
そんな彼女を見て獣人の御者の姿からただのネズミに戻ったノッツは首をかしげ、
「一緒になれば幸せになれるのにどうして君は彼から逃げるの?」
という彼に想いを伝えられずに、よなよな枕を抱いて物思いにふけるリンダ。
カッツも実は出会ったころからリンダのことが世界で一番大好きだった。
でも現実主義者な彼は自分がネズミだからと諦めてしまっていた。
せめて王子と一緒になって幸せになってほしいと、
まごころで王子を影から手伝い、
いとこのかわいい女の子と縁談が決まってデートをしている間も上の空な毎日が続く。
いとこもカッツの事を昔からよく知る妹のような存在で、
そんな煮え切らない彼を見かねていじわるなカラスたちをだまくらかして
舞踏会の夜の魔女を呼ぶ。
「あの夜王子様とお前は運命の魔法で結ばれたんだ、
真実の愛をなぜ避けるんだい?」
とリンダに尋ねる魔女にぽろぽろと涙をこぼしながら本当の気持ちを話すリンダ。
辛い時も楽しい時もいつも一緒にいて励まし共に笑ってくれたカッツは、
彼女にとって世界一大切な存在で、友達以上の感情を彼に抱いていたことを、
彼に対していだいていた心の中の愛に目覚めてしまった事を打ち明ける。
いとこの作戦で偶然それを聞いてしまうカッツ。
その気になり始めた彼をやれやれと見送りながら、少しさみしげな顔をするいとこ。
その時カッツの手伝いによって得たヒントから
ついに王子がリンダの元へたどり着いてしまう。
二人の間に飛び出すカッツ
瞬時に杖をふり彼を獣人の御者に変える魔女
王子はカッツのリンダへの愛の告白を聞き
彼に自分の手袋を投げつけ決闘を申し込む
互いが互いでリンダに愛されている、勝たねば!
という想いで戦う互角の勝負の中
なんの剣術もならっていないカッツが想いの強さで王子に勝つ。
王子が勝ちそうになった瞬間、リンダの顔が悲しげになったから剣を引いたのだとカッツだけは気付いていた。
リンダがカッツに飛びついて熱いキスを交わす二人。
でもネズミと人間の女の子がどうやって一緒に?
心配は御無用。
だってリンダは魔女に弟子入りして見習い魔女になったのです
弟子入り記念に貰った魔法の指輪をしっぽにしたカッツは
いつでも好きな時に獣人の姿になれますし
ネズミの姿でも今みたいに一緒にいられるのです
「風が来た、いくよカッツつかまっててね!!」
「ああっ大陸を神風のように突っ走るぜ!!ヒャッホーー」
魔法の箒に乗ったリンダとカッツは、空の彼方まで流星のように駆け抜けていきました。
ふたりは末永く幸せに暮らしましたとさ。




