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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
5歳の女の子と獣人さんのお話
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117回目 僕たちに誰かなんて必要ない

久しぶりに新しいお話書きました。

夕暮れ時になるといつも思うことがある。

なんで人間には他の誰かが必要なんだろうかって事。

誰もいない教室、物音すらしない廊下、眩しいくらいの夕日の影から近づいてくる夜の気配がなんでひとりきりだと心細くなるのか。



もし今この世界に私がひとりぼっちなら、きっと届かない誰にも聞こえない言葉を大きな声で叫ぶだろう。



ああ、なんで。

世界は滅んでなんかいないのに、少し探せばどこかの誰かなんていくらでも見つかるのに。どうして私はこんなに寂しいんだろう。



校舎の階段を登り、少し錆びた扉を軋ませて開く。

少し冷たい風と共に学校の屋上が姿を表した。



ため息を一つ。

小さな歩幅で歩く、歩く、歩幅を広げ、少しずつ速度を上げて、早足で、走って、私は大きな声で空に向かって叫ぶ!



「わあああああああああああああああ」



誰にも届かない言葉、誰にも伝わらない気持ち、それでも、足があれば行きたい場所に行きたいと思う。言葉を叫ぶことができるなら大きな声で叫びたくなる。

そして、……そして、私が人間であるなら。

誰かなんかじゃなく、名前で呼びたい特別な人と出会いたいって、そう思うんだ。



遠くから誰かの叫ぶ声がした。

それに続いてもうひとり、そしてもうひとり。

私はおかしくなって笑いが止まらなくなってしまった。

聞かれてたんだろうか、恥ずかしい、バカみたいだ。

それにあわせて叫ぶ人たちもみんなバカみたいだ。

でも少しだけ胸が暖かい気持ちで満たされていくのを感じる。



私はどこの誰かわからないみんなに言葉にはしないでまたねと心の中でいうと、屋上をあとにした。

声なんて聞こえたりしなかったのに、私はなぜかその時叫び声をあげた人たちみんなからまた会おうってそう言われた気がしたんだ。


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