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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
5歳の女の子と獣人さんのお話
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103回目 魔法少女るりかるでぃ

昔から世界中の他人に嫌われる体質のるりか(12さい)は、

壊れそうなくらい辛い事があるたびに

スマートフォンに送られてくる差出人不明の優しいメールを心の支えに暮らしていた。


でも彼女の心は日々少しずつ壊れていて、

ある満月の夜、無言で手首にためらい傷を付け続けるるりかの前に

一人のジャッカル獣人ルディが現れる。

「お前を守りに来た」

と彼は真っ直ぐに彼女に言った。


ルディは自分は悪魔であり、契約した魔女がるりかの遠い先祖で

その血を守らなければならないと言う。


よけいなお世話だとるりかは思ったが

彼は彼女が死のうとするたびに不思議な力を使ってその場に駆けつけそれを阻止してしまう。



彼女自身の生活でも追いつめられるりかは怪しげな姿の人物から貰った杖を使い、

人物に言われた通りの呪文を口にして生まれて始めての魔法で結界をはってしまう。


人物にあってから不思議とネガティブな気持ちが加速していた彼女は、

彼の監視を逃れついに手首の動脈を切り裂いてしまう。

流れ出る血を見てなぜかいつも駆けつけてくれる

ルディの顔が頭に浮かぶのを不思議に思いながら意識を失うるりか。


目が覚めるとそこにはルディがいた。

無理矢理結界を切り裂いたのだろう貴族めいた彼の服や毛皮がボロボロになっていて、

その手の中にはるりかの治療に使ったとおぼしき魔術媒体の燃えかすがある。

ぼんやりとした視界の中彼はるりかの全てを受け入れるようにほのかに微笑む。


「ふざけるな馬鹿野郎!!」

るりかの口から出たのは憎しみで震えた言葉だった。



「勝手な事するなぁ、怖かったんだぞ、痛かったんだ。

 寒くて頭痛くなって苦しくて、でもようやく楽になれるって思ったのに……ばかやろう」

るりかは彼を叩く力もなくただ彼の服を握りしめる程度しかできなかったが、

ルディは言葉のない痛みに悲しく顔をゆがめていた。


るりかを陥れた魔導師と一騎打ちをするルディ

でも魔女との契約をしていない彼が使える魔法はたかが知れていて、

ほぼ体術だけで戦う事になり、敵の呼び出した本来ならルディよりも格下の悪魔の登場で

絶体絶命の危機に瀕してしまう。


「騒がしいと思ったらなにやってるのよ」

「るりかッ!?来るんじゃない、こいつの狙いはお前だ!!」

ルディは彼女を守るために走り出すが弱った彼の体は言う事を聞かず、

敵魔導師の凶刃が彼女に襲いかかる。



彼女の前で無数の光弾になり霧散する魔法。

「映画とかアニメで主人公が天才的な活躍でピンチを脱出ってあるじゃない?」

杖を取り出しながら彼女は病んだ目で敵を見る。

「たまには他人を壊すのも面白そうね、主人公やってみちゃおうか」


魔術師の使う魔法の見よう見まねを瞬時にやってのけるるりかのセンスに舌を巻きながら、

ルディは彼女の足りない運動能力を抱きかかえる事で補い二人で戦う。


「魔法の戦いって格闘ゲームって言うより将棋とかチェスに近いのね、

 罠と戦略が鍵ってことか」

言ってる先からどんどん戦略を成功させるるりかは魔女そのもの、

敵は恐怖に囚われ半ば発狂しながら襲ってくる。

「殺すと捕まるから半殺し、ね?」

うなづくルディを見るとにたりっと笑うるりか。

るりかの魔法とルディの拳でぼこぼこにされ空の星になる敵、逃げていく敵の悪魔。



戦いが終わるとるりかを置いて去っていこうとするルディ。

引き留めるるりかに彼は自分の存在がかえってるりかを苦しめてしまったからと言う。


自分には兄も姉もいるのになぜ自分なのか、なんのためにそこまでしてくれるの?とるりかは聞く。

「俺にはお前が最後だからだ」

と悪魔はいった。


るりかの先祖の魔女との契約で

『深淵の者』から切り離されて生まれた悪魔の契約がるりかの代で切れ、

その役目が終わればルディは消えてしまう。

たとえ悪魔であっても永遠なんてないのだ。


それにルディは実はるりかが5さいの頃に会っていて、

その時に「私を守ってね」という彼女と約束したのだという。

それは偶然にも最初の魔女がルディと交わした契約の言葉でもあった。



対人恐怖症で他者との接触の可能性のある外での禁断症状が現れ始め震える体を押さえて、

るりかはルディの手を握りしめる。

「どうしたんだ」

「いいから待ちなさい」


さぁっと風が吹き、桜の花びらが街頭の光に輝きながら降り注いでくる。


「少し自分勝手だったかも知れないわね」

そういうと彼女はルディの顔を見る、その表情にドキッとするルディ。

「私がんばってみる、だからもう一度だけ言わせて」

「ああ」

そういうとるりかは手を差し出し、薬指の上に魔法陣が浮かび上がる。

「私を守って。ルディハント」

「イエス、マイマスター」

光を宿した魔法陣に口づけするルディの背中に悪魔の翼が現れる。



「契約完了だ、後悔はないのか」

「お優しい悪魔さんだこと、無いわよ?これっぽっちもね」

そういうとるりかは上機嫌でルディの腕にしがみつく。


「ねぇルディあなた私のしもべになったんでしょ?」

「ああ、そうだ」

「一度、やってみたかったの。お願い」


その言葉を聞いてルディはるりかの体を抱きしめ、数回羽ばたいて空へ舞い上がった。


るりかは頬を赤らめて嬉しそうな顔で星と夜景を眺めている、

その横顔に満足そうな顔でルディは風に乗り、さらに高く、高く月に向かって飛んでいった。

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