表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
千の夜と一話ずつのお話
1/873

1回目 陽炎の町

主人公はへんぴな田舎町でごく普通の仕事をしてごく当たり前の生活を送っていた。何の疑問もなく。

そんな主人公にある一人の男が話しかけてきた。

「この町の記憶は管理されている」

彼はそういった。


たしかにその町には少々変わった点がいくつかあった。

先進都市を目指すという役所の方針からあらゆる電子機器が町の住人に配布され、

学校教育でも電子機器を使う教育がしかれているため記録は全て電子機器に保存されている。


彼が言うには記憶の改変が行われると、その物証としての記録がまず役所からのハッキングから改竄される。

そしてその次は曖昧な記憶の改変である。

彼が例として示したのは主人公の昨日の夕飯について、だった。

彼はその日何の気なく同僚との会話の最中に昨日の夕食についての会話を行っていた。

昨夜は彼はその友人と一緒に飲み屋でサンマを食べたと記憶していたが、

友人はそれを否定し昨日の飲み屋でのレシートを見せ、彼が食べたのは鯖の塩焼きだと訂正させた。

どうでも良い事でもあったので彼はそうだったかな?と納得したのだが、

時間がたち今となってみると実際に鯖の塩焼きを食べたという記憶が残っていた。

そうした多数のどうでもよいような点から記憶をマクロ的に改竄し町規模で整合性をとっているのだと、

彼は言った。

そしてその町にいる全ての人間が本来送るべき自分の人生を簒奪されて、

他人としての人生を生きているという事。

そして主人公には本当は探さなければならない恋人がいたことを。


彼にアナログの写真で見知らぬ女性と楽しそうに映る自分の姿を見せられ、

半ばいぶかしがりながらも主人公は彼の捜査に付き合う事にした。


彼は合間にSNSでの情報操作も見せてくれた。

言われては都合の悪い事をAがBに言った場合の処理、

全てのユーザーのコメントはサーバー上で監視されているため、コメントはBには届かず、

Bからの返答を装ったサーバーのAIのコメントがAに送られるというものだった。

あたりさわりのない生返事を主人公はこれから警戒して生きていくハメになってしまう。


主人公のように消えてしまった知人を捜す人達の集まりがある事を知り、

その集会に向かった主人公は気づいてはいけない事に気づいてしまう。

ただそれを知っているはずなのだが、それについて考えるたびに頭にもやがかかり、

妙な罪悪感を覚え始める。


主人公は彼に不安を吐露する、彼はその事について考えるのをやめろという。

しかし主人公は恋人に対する思いを捨てきれず、真実を探せといったのは君だとせめる。

そして全てを思い出した主人公は、自分が本来は存在しない人間である事を知ってしまった。


消滅する主人公。


町の改竄された記憶の中で、実在していないはずの人物が人々の共通認識の中で

実際に存在しているものとして扱われて生きている。

主人公はその中の一人だった。

彼は記憶の中にしか存在しない人々を集めて、消えずにいられるように守っていたのだった。


傍らの彼の手助けをする少女はこの町に暮らす人の何人が本当の人間なのかと疑問を呟くが、

主人公のように消える事になるぞと釘を刺されて少女は生返事で了承する。

そして彼はまた一人に声をかける、今度は消えてしまわない事を祈りながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ