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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その九百七


「……神々と連続して戦い、勝利いたしましたか。『エルトジャネハ』に勝利する時点で、ストラウス卿には『神殺し』の素質があるのでしょうな」

「『『ゼルアガ/侵略神』なら、うちの祖父も殺している。アーレスもな!!『歌喰い』という悪神を殺したのだ。存在そのものを消し去るという、おぞましい巨悪を……つまり、血筋だな』」

「血筋というのも、呪術には大きなものです。ストラウス卿の一族が、『神殺し』を繰り返してきたのなら、一種の『巫女』のような立場かもしれません」

「『巫女か。オレは、男だが』」




「性別は問わず、役割のようなものです。『神殺し』をすることが、一族の役目となっている者たちもいる。その結果、世界は安定に近づくのです」

「『ゼルアガ/侵略神』たちは、我々の世界から『何か』を奪っていると言う。それを倒すことで、世界は『何か』を取り戻せる?」

「そういった考察もあります。世界が持つ、自己保存、あるいは自己修復の本能のような役割を与えられるのが、巫女の系譜。ストラウス卿は、その種の定めを背負っておられるのかもしれません」

「『無差別に神々を殺して回りたいわけじゃないんだが、悪神を殺すのは名誉であり快感だ。強い敵も、戦士としては歓迎したい。将としては、敵が強すぎると被害が多くて困るがな』」




「そのあたりのバランス感覚は、保っていて欲しいところだね。ストラウス卿が無理して大ケガするぐらいなら、場合によっては悪神との戦いだって控えていて欲しい。倒すべきは、皇帝、帝国なのだから」

「『ハハハ。ああ、分かっちゃいるとも』」

「しかし。『トゥ・リオーネの神々』の呪術、か。つまり、『クイント』には呪術めいた信仰があるのか、あるいは、イルカルラのように他所から流れ着いた呪術の秘跡がある?」

「『思うに、どちらもだろうな。そのあたりは『西』にも詳しいプレイガストに聞きたい』」




「国境というものは、文化や民族の流動性が激しい場所です。『クイント』は、古い信仰もあれば、新しい信仰もある。文化的・歴史的な背景が複雑な人々が住んでいるため、それぞれの派閥の信仰もまた、勢力を取り合う形になっていた。帝国軍に制圧されたなら、より古く、より報復的な神々の信仰が力を取り戻したことでしょう」

「『ふむ。拠点めいたものはあるのか?』」

「地下神殿がいくつか。秘匿された場所であり、私もかつて一か所だけ案内してもらったのですが。すでに死に絶えた神殿。盗賊どもの根城になりつつあった」

「復活しているかもしれないね、反逆のために使われているのなら、歓迎すべきだが。しかし、悪神である可能性は?」




「ありますとも。そもそも、『トゥ・リオーネの神々』は、『西』に流れ着いた者たちが信仰していた古い信仰。およそ、古い信仰というものは、攻撃的であり、排他的な性質を有している。復讐神や、戦神、軍神、呪い神……強い力を有しているのは、他者を攻撃するためである。他者には、帝国軍だけでなく、『自分たち以外』のすべてが含まれているのは、ごくありふれたことです」

「『困ったもんだな。神々と、一戦、やれるのかもしれん』」

「喜んでいるじゃないか。ストラウス卿、やるのならば、一人で挑まずに」

「『おう。お前も参加したいわけだ。男として生まれたなら、『神殺し』はやってみたいことだろう』」




―――騎士の家系に生まれた者ならば、武勇に恋焦がれるものだ。

メイウェイは庶民の家に生まれたから、義務めいた武勇への追求こそないものの。

乱世で鋼を振り回し、敵と殺し合いをする日々を過ごせば。

多少なりとも超越的な武勇の名誉を、求めたりするものさ……。




「否定は、しないでおくよ」

「『素直なヤツだ。だが、忠告は聞いておく。敵について、知っておきたい。プレイガスト。シドニア・ジャンパーの狙いを』」

「……祭祀呪術や、遺跡。古代からの掟を冒涜することでしょう。それらは古き神々を、揺さぶり起こすことにはなるものです。皇太子レヴェータと、その師であるクロウ・ガートとやらも、狙っていたのかもしれません。方針としては、それを継続する」

「『トゥ・リオーネの神々』を起こして、操り切れるのか?」




「ライザ・ソナーズを『神格』として復活させるための、生贄にするのです。素材、あるいは燃料として、『西』の神々を利用する……ライザ・ソナーズの意識を『寄生』させるような手段で、疑似的な復活を果たす。そんなところでしょう」

「『寄生』か、なんというか……」

「『完全な方法ではない。だが、偽りであっても、となりにいて欲しいのだろう。自分が仕えるべき君主を、作り直すとは……切なさがあると言うべきか?』」

「どちらかと言えば、狂気だと思う」




「『ククク!たしかに。さて……『逆流』をやれそうだ。ノヴァーク、お前、何をしでかしていたんだ?』」




―――ノヴァークと多くの『亡命呪術師』どもは、市場で食事をしたあとで。

帝国兵どもが警備をしていた地下の神殿へと向かう、小さい神殿だった。

倉庫のように飾り気が少ないものの、それは偽装のためらしい。

ノヴァークが壁の一部にナイフを突き立てた、岩壁に偽装されたタイルの継ぎ目に……。




「こいつを、外せば……っと。ほうら、出てきやがった。クロウ・ガートの情報は、正しいようだぜ。古い骨がある。人骨だな。エルフか。ケットシーじゃないところが、罪深い。誘拐してきた敵でも、生贄に捧げたのかね」




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