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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八百九十八


―――学生たちや大学そのものが、強烈なビジネスの装置なのさ。

さすがは最も文明が進んだ土地、『プレイレス』の頭脳である大学半島だ。

偏屈な賢者たちが大陸の各地に住んでいるが、ここはやはり別格だよ。

ソルジェは大いに喜んでいる、ガルーナ王国の『未来』を考えながらね……。




―――ガルーナ王国の復興は、かなりの難事業にはなるはずだけれど。

大学半島の人々との縁があれば、大きな救いを得られるわけさ。

あまり賢くないソルジェだからこそ、夢を見る力そのものは大きい。

空っぽの容器には、多くのものが入るだろう……。




―――武術ばかりの猪突猛進の竜騎士は、大人になってからの勉強に向いていた。

賢者や教師に吹き込まれた知識が少ないほど、自分で考えられもするからだ。

プレイガストは教育者らしく、ソルジェのその柔軟性を見抜いていたらしい。

狂暴な復讐者であるはずの立場を忘れ、嬉しそうに笑っていた……。




―――メイウェイからすれば、うらやましくもある。

ソルジェはガルーナの王になれるが、メイウェイはいまだに国を持たない。

『西』に自分の統治する国を作る、もう一度国家の頂点に立ちたい。

ないと思い込んでいた政治的野心が高まるのを、彼は感じていた……。




―――乱世の特性のひとつだろう、王の器を持つ者たちに大いなる道が開かれる。

メイウェイもガマンする必要はないよ、十分な器を彼は持っているのだから。

もちろんあまり表立って示すことは、反発を招くかもしれない。

『ペイルカ』を中心に、『プレイレス』の市民は『西』の『強王』を好まない……。




―――『西』は間違いなく経済的には、『プレイレス』に従属していたからね。

その序列を変えかねない男だと、『史上最長の進撃』をすれば認定される。

ボクたち『自由同盟』の首脳陣の半数からは好かれるが、全員とは言えない。

政治をするには慎重さってものが、どうしても必要になる……。




―――軍事でなく政治で失脚させられた男は、学んでいるのだよ。

ソルジェの肌で感じ取っていくたぐいの学習と同じくね、苦労の多い男だ。

政治とは誰かを選び、誰かを見捨てる行為に他ならない。

予算や権力を与える者を選び、選ばれなかった者からは恨まれるのさ……。




―――だかれメイウェイは、あまり欲望を表に出さないようにしている。

自分だって大学半島の『莫大な知的財産』が、欲しいのにね。

若くて弱々しさの多い学生兵たちを、見る目が変わってしまいそうなほどさ。

彼らは強烈な『未来』の宝だ、コネを作っていなければ大損しかねない……。




―――政治屋だったら、もっと露骨に動き始めていたかもしれない。

戦争をそっちのけで、コネ作りに奔走している政治屋はよくいるよ。

彼らの文脈のなかでは、戦場での死傷者よりも経済や権力構造の変化が大切だ。

第六師団出身の英雄が嫌う行為でもある、あくまでも軍人なのさ……。




―――まあ、メイウェイにも運が向いてくるだろう。

『西』の『強王』の誕生を、『プレイレス』は嫌うだろうけれど。

イルカルラのドゥーニア姫は、敵の敵が強くなったという論理において。

メイウェイが王国を手に入れることを、容認するかもしれないのだから……。




―――メイウェイに力をつけさせ過ぎれば、イルカルラを奪われるリスクはある。

イルカルラの民の半分は覚えているからね、メイウェイは名君だった。

人気こそドゥーニア姫の方が強いけれど、実務と実績では軍配がどちらに上がるか。

メイウェイを警戒するのは、彼女にとっては基本的な使命だね……。




―――イルカルラを侵略される日があれば、メイウェイを止められないかもしれない。

互角の軍勢を与えられたとき、ドゥーニア姫が勝つのは難しいのさ。

だが『西』に王国を作り、『プレイレス』と対立してくれるのならば。

イルカルラまで、政治的・軍事的プレッシャーが及ぶことはない……。




―――その種の政治的緊張感の管理については、外交の経験値がモノをいう。

ドゥーニア姫にはそれがあるよ、教養深い大臣のご令嬢だからね。

反乱勢力を率いて、戦い抜いた経験もある。

政治能力はソルジェよりも、腕がいいのさ……。




「『うらやましそうな顔するなよ、メイウェイ。お前も、偉大な王国をきっと手に入れるぞ』」

「……その種の欲望は、しばし封印しておくことにするよ。嫉妬心が生まれれば、戦場での勘が鈍る。そういった敵を、よく見て来たし……イルカルラ砂漠で、私自身で証明済みでもある。欲望のリスクに、呑まれるつもりはない」

「実に冷静な考えです。さすがは、メイウェイ殿だ」

「経験が、悲鳴を上げるのだ。私は政治的な失策を、選びたくはない。欲しがるのは、勝ってからにしておこう。あくまでも、今の立場は、傭兵なのだからね」




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