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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八百八十八


―――『政治だけが権力を有するのは、どうにも危険だと思ってはいる』。

『私は学問全般と、そして呪術に対しての愛情を有しているのだから』。

『権力者を利用する、という言い方は露骨なものになってしまうが』。

『歯に衣着せぬ言い方をすれば、その形も我々には理想的であろう』……。




―――『乱世ではあらゆるものが単調化され、私のような隠者すらも』。

『政治的な力の一部として、取り込まれてしまうからね』。

『私の現状は、パトロンたちのおかげでかなり満足したものではあるが』。

『これが永続的な立場などとは、毛頭思ってはいないのだ』……。




―――『優秀かつ熱心な『弟子』のおかげで、一時的な研究資金は得たものの』。

『呪術師が研究に対しての自由を満喫する機会は、今後も乏しいだろう』。

『リヒトホーフェン伯爵や、そして私がやろうとしている行為の成就は』。

『呪術師に研究資金と身分保障を招くかもしれないが、縛られるのだよ』……。




―――『歴史という巨大な文脈の一部に囚われて、私たちは道具にされる』。

『祭祀呪術という強烈な呪術は、軍事転用が可能だからだ』。

『栄華を極めた古王朝の軍隊さえも、祭祀呪術が生んだ神々には勝てない』。

『ユアンダートが恐れるほどの、軍事力が生まれようとしている』……。




―――『ユアンダートはある意味で、正しくはあるし畏れているのだ』。

『さすがは皇帝にまで上り詰めた男ということか、力について認識が鋭い』。

『祭祀呪術を始め、呪術が兵器として使われるような時代を警戒している』。

『ユアンダートの勢力さえも、覆しかねない強大な外的要因のように』……。




―――『そして、おそらくは大陸の文明そのものも揺るがす危険性があるとも』。

『信じているし、それは祭祀呪術の研究者からすれば正しいとお墨付き与えられる』。

『祭祀呪術が兵器としての成功を収めれば、すぐに誰しも真似をし始めるのだ』。

『帝国軍の敵である我々だって、祭祀呪術による反撃を試みるかもしれない』……。




―――『君たちの学生、あるいは私の教え子も含まれているかもしれないが』。

『学生たちは『世界を変えてしまう軍事力』を、求めてはいないと言えるかね?』。

『言えるとすれば、君は理想を信じすぎていると思う』。

『歴史家として希望を信じるのは、一種の義務かもしれないが』……。




―――『過去を評価し直し、語り直しながら人々は進むものだからね』。

『絶望しか語らなければ、希望が不在であれば未来は枯れ果てる』。

『世界は戦いと争いに歪みつつあり、学生たちは理解しつつあるのだ』。

『古王朝を滅ぼしたほどの危険な力にさえ、手を伸ばすべきだと』……。




―――『基本的に道具主義の私からすれば、祭祀呪術は研究対象である一方』。

『何よりも有効な軍事的オプションだとも、信じているのだ』。

『私の祭祀呪術の基礎知識に、歴史的な運用方法を君が与えればどうなる?』。

『学生たちが容赦も畏れもなく、私の実験よりも残酷に突き進めば』……。




―――『創れるよ、世界を覆してしまうほどの強烈無比な呪術兵器をね』。

『軍隊を構築して、武器を振り回して世界変革を試みるよりずっと手早い』。

『数百人を犠牲にして、数万人を参加させた呪術を使うだけでいいよ』。

『私と君の知識を受け継いだ、容赦ない若い頭脳が完成させられるのだ』……。




―――『それは、実際のところ私が望むものではないことも主張しておきたい』。

『古王朝は祭祀呪術の追求の果てに、滅びたのも事実だからだ』。

『力は正しく管理しておきたいが、管理者とは知的であるべきだと信じる』。

『良心を解ける立場とは、さすがに私も自分を評価しがたいよ』……。




―――『優秀ではあるが、外道であるのは間違いないからね』。

『君がその長い耳を閉ざしたくなるほどの邪悪な実験も、私はしている』。

『研究のためなら、何だってやれてしまうのだ』。

『研究者に向きはするが、管理者を名乗れるほどの良識には欠いている』……。




―――『情報を共有し合わないか、我が友よ』。

『避けがたい呪術と知性の戦争利用の日々を、よりマシにコントロールするために』。

『君は祭祀呪術の管理者となるべく、知識を有するべきではないか?』。

『私はどうせ研究してしまう、若者の興味に同調してしまうはずだ』……。




―――『祭祀呪術が世界を焼き払う未来にさえ、笑顔で加担してしまうだろう』。

『それはいささか、よろしくないのは自明の理というもの』。

『君を利用したいが、君も私を利用して欲しいのだ』。

『力を得てくれないだろうか、君が力を持っていれば』……。




―――『ライザ・ソナーズや我らの学生たちを始め、政治的野心を抱く若者たち』。

『歴史の文脈に従い、間違いなく暴走を始めるだろう若き心たち』。

『それを多少は制御する存在として、学問は力を持っていて欲しいのだ』。

『歴史家の君だって、次の世紀まで文明を存続させたいと願うはずだよ』……。




―――クロウ・ガートは、邪悪な呪術の研究家である一方で。

それゆえに呪術師が、今後の世界にどれだけの影響を与えるかを知っている。

祭祀呪術が有効なら、使ってしまうのさ。

現に使われ始めているからね、ギルガレアに女神イースもだ……。




―――数週間のあいだに、ソルジェが遭遇してしまい。

ソルジェ自身も使った、『世界の文脈』に働きかけるアンチ祭祀呪術。

それらも含め、すべて強大で兵器化された戦争用の特大呪術だった。

クロウ・ガートの未来予知は、良くも悪くもかなりの精度なのさ……。





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