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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その八百八十七



―――『リヒトホーフェン伯爵の人生は、複雑にして怪奇』。

『彼の愛娘について、君が知れば同情や共感を得るだろう』。

『医学界にとっての功績は、門外漢の君さえも知っているかもしれない』。

『この伯爵家の一族のおかげで、多くの治療薬が今日も完成に至るのだ』……。




―――ソルジェは戦士だから、自分が倒した敵が褒められると嬉しくなる。

リヒトホーフェンは絶対悪ではなく、いい側面も多々あった。

医学界の発展だけ見れば、『ゴルゴホの蟲使い』よりもあるかも。

リヒトホーフェン父娘は技術の秘匿を、究極的には拒まなかったから……。




―――『彼らは医学界に大きな力を与えている、私や君もその恩恵を得るかも』。

『いずれにしても、名誉ある人物と評すべき立場の方々であるが』。

『彼らもまた、祭祀呪術を求めているのだ』。

『ライザ・ソナーズ中佐の紹介が、私と私の弟子の知識を東に伝えている』……。




―――『君にとって、正しいと思える状況かは全くもって分からないが』。

『リヒトホーフェン伯爵は、大いなる力を復活させるだろう』。

『君のいる大学半島も、そして大陸の各地に対しても』。

『祭祀呪術を求める者たちのつながりが、構築されている最中だ』……。




―――『皇帝さえも畏れる、往古の時代の協力無比なる呪術』。

『世界の文脈と呼ばれる歴史的な価値観に根差した、不可避の絶対の呪いたち』。

『それのひとつを、リヒトホーフェン伯爵は復活させるのだ』。

『その名を、ギルガレア。『罪科の獣神』である』……。




―――『ここから見える『西』の土地の信仰、『トゥ・リオーネの神々』と』。

『歴史的には恐らく遠くない時代に『創られた』、ヒトの祈りに報いるための神』。

『女神イースが架空の文脈により生まれた概念で、皇帝が好むのは』。

『基本的に女神イースが実在しない神であり、哲学的衝撃しか持たないからだが』……。




「『訂正したくなるね。女神イースは、実在させられたぞ。『カール・メアー』の巫女戦士たちは、その信仰心を形にしやがったんだ』」




―――『可能性はすべてを語ってしまうから、科学においては忌避される』。

『神々の半分は、『ゼルアガ/侵略神』であるし』。

『残りの半分は、ヒトが創造した空想あるいは祭祀呪術の産物だ』。

『神々は人々の祈りにより、受肉を果たすものとも言える』……。




―――『私は、自らの知的好奇心を満たしたいだけでもあるが』。

『それと同時に、良質な研究空間の存続を心から望みもする』。

『つまりは、君の協力さえあれば、多くの願いが叶ってしまうのだ』。

『もちろん、それはライザ・ソナーズの力となり、君らの庇護の力ともなる』……。




―――『信じられないかもしれないが、これは私なりの友情だ』。

『その言葉で表現するのに、不適切が発生するのならば』。

『人類への憂い、ゆえに』。

『歴史は粘りを帯びて、いつの世の誰の世代にも強直を起こしがちだ』……。




―――『人々は新しい世の中の形を、求めているのではないだろうか』。

『私は隠者であり、歴史や社会においてはどう評価しても傍観者である』。

『だが、立場と地位のある君にはその自由さは許されないだろう』。

『だからこそ、友情や人類への憂いのために君へ選択肢を与えたい』……。




―――『帝国軍にではなく、ライザ・ソナーズに力を課すのだ』。

『ギルガレアの復活が観測されれば、神の創生プロセスはおよそ解明する』。

『世界の文脈たちがつながり合い、大いなる結実を起こすのだ』。

『つまり、『古王朝』の神々の力をもライザ・ソナーズは得るに至る』……。




―――『遠からず、そうなるのだ』。

『多くの力と意志が動き始めており、それらはすでに歴史的必然性を帯びている』。

『誰が途中で突発的なトラブルで、欠けてしまったとしても』。

『ときに誰かが代役として、下手すれば私の代役を君が果たすかもしれないが』……。




―――『皇帝ユアンダートと、彼の政治的な信条と野心によって』。

『世界は正しかろうとも悪かろうとも、確実に揺さぶられて変質している』。

『君に、選択肢を与えたいのだ』。

『歴史的必然性の果てに、私の代役となるかもしれない君に』……。




―――『積極的に参加して、この大陸の命運を握る祭祀に対して』。

『主導権というものを、その手にしておいて欲しいのだ』。

『大学半島の知恵ある賢者たちの代表が、運命に参加することを私は望む』。

『そのために、君の知識提供をお願いしたいのだ』……。




―――『率直に伝えておきたい、私はリスクも感じている』。

『我が弟子は純粋であるが、それゆえの狂気も宿してはいる』。

『その危なっかしい弟子を通して、大いなる力がライザ・ソナーズに渡る』。

『彼女だけが力を持つのは、どうにもリスクだ』……。





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