第三話 『ドワーフ王国の落日』 その十
『くくくくくッ!!ああ、腹が減ったぞおおおおおおおおッッ!!竜騎士ぃいッ!!貴様の肉を喰わせろおおおおッ!!血で、喉の渇きを沈めてくれええええええッ!!』
「グルメなことだ。オレを喰いたい?アンタの趣味、サイコー!!うちのヨメどもかっつーの……ッ!!」
こっちのトークを無視かね?オレはこのクソみたいな『聖なるほこら』のなかで、襲いかかって来たハサミのラッシュを躱しながら舌打ちする。
「チッ!!……狭い穴のなかで、無意味にデカくなりやがって!!」
『ハハハハッ!!ああ、爽快だぞ、この肉体ぃいいいいいッ!!まさに、生まれ変わったようだぞおおおおおおッ!!』
死にかけていた年寄りが原材料とは思えないぐらいには、体力に満ちているね。あとは野心と……おぞましいが、生殖本能もかよ。
ハサミと巨体のラッシュをかいくぐる。ヤツにとって大切なものであるはずの、土塊でつくられた地母神サマの土偶やら、黄金にメッキされた露骨な神聖さをキラキラさせてる器とか、銀の燭台とか、ぜんぶ、ぶっ壊れていく。
おかげで薄暗くなっていくね。ヒカリゴケのおかげで、視界は覚悟できているが―――じいさんは?
『視界が、うつくしい!!ああ、幼き頃のようだあああああ!!』
そうか。目玉が『増設』されているからな。あれらのどれかは未だに白内障かもしれないが、新しく生えて来たモノは、クリアな視界を持っているのかい……しかも、暗所でも敵を見失わない。
厄介なことだね、健康と生殖能力を取り戻して、歓び狂っているのか。狭い場所で暴れるのはカンベンして欲しいモノだけどね……。
『あああ。肉体の痛みが消えたぞ!!どこも、痛くない!!ワシは、健康になった!!戻ったのだ、本来のワシに!!完全無欠な、王の血にッ!!』
「その姿で完全無欠……どうかしてるぜ?」
『ああああああ!?……竜騎士よう、なぜ、祝いの言葉をくれないのだああ?』
「そりゃ、敵だからだ。いや、敵ってほどのモノではないな―――」
―――アンタはもはや、ただの害虫だもん。
「かつて、ガルードゥだった虫けらよ。貴様は、はしゃいでいるが、何か大きな勘違いをしているぞ」
こちらの挑発に反応する。ヤツの動きが止まる。感動にケチをつけられているのが分かるのか。そうだな、蟲になっても、ジジイになっても、去勢されちまっても、やっぱり男の子だよな。
自分が軽んじられることに、自尊心が耐えられない。
『……竜騎士よ。貴様は、なぜ、笑っている……?』
「さあね。笑えるモノが目の前にいるからだろう」
『……何……ッ!?』
「だってさ。アンタ、そんな蟲になって、この国を……す、救う、とか!?……はは、はははは、ハハハハハハハハハハッッ!!」
爆笑モノだぜ!!
「あ、アホも、アホも休み休み言えというのだ!!……ハハハハハ!!あ、ありえるわけねえだろ?……貴様のような心の醜い狂人が、その身までさらに醜く成り果てたのだぞ?……雄壮なドワーフの戦士が!!貴様のような虫けらに、従うわけがないだろうッ!!」
『否ッ!!我は、大義を帯びた我はッ!!うつくしい存在だッッ!!』
ガギュイイイイイイイイインンッッ!!
ハサミの強打を竜太刀で、受ける。クソ!!さすがに、力は強い。重たいねえ。寝不足だし、長旅だし、連戦だし……コンディションが良くないオレからすると、なかなかハードな威力だぜ。
膝を屈しそうになる?……いいや。技巧を使っているのさ。こうして重心のぶつかり合いをズラして、オレは回転する。ハサミの押し合いをすり抜けてやりながら、強烈な斬撃をヤツの八本もある脚の一つを切り裂いてやるのさ!!
『ぎゃあああああぐうううッ!?』
痛みに呻き、ヤツが後退する。
……ふむ。おかしいな?お前はミアに腕を切り落とされても、冷静だった男だろ?その無数の脚の一つを切り落とされたぐらいで、何を焦る。二本脚じゃない八本だぞ?七本も残っていれば、問題はなかろう?
『……き、貴様あ、よ、よくもッ!!』
なるほどな。『完全無欠』―――去勢されてから数十年。そんな日はなかったものな?ああ、想像するだけで両脚のつけ根に寒気がするよ。去勢て?……そんな目に遭ったら死にたいよ。それでも、貴様は生きていた。『不完全で欠損した肉体』を抱えてね。
生まれ持った障害ならば、運命だと折り合いをつけられるかもしれん。だが、貴様の場合は兄に生殖器を奪われたのだからな?……納得は行かなかっただろう。
だから。
とにかく信仰に走り、とにかく自分を誤魔化した。
それでも、貴様は、たしかにドワーフだ。
野心と戦意がくすぶっている。
「なあ。ガルードゥだったモノよ?」
『何だ、竜騎士……』
「貴様は、弱くなってしまったことに気がついているか?」
『ハハハハハハハハッッ!!我が、弱くなっただとおおおおおおおおおッッ!!』
ズガシャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!
岩壁にあの巨大な『地獄蟲』の爪が突き刺さる。かんたんそうにね。そして、威力を誇示するために、ガリガリ音を立てながら岩壁を削ってしまうのさ……。
『この力を見るがいいッッ!!間違いを、認めるのだな、竜騎士よッッ!!我に宿りし大地母神マーヤさまの大いなる祝福に、貴様の畏怖を向けるのだああッッ!!』
「……ああ、頭に血が上ってるぜ、おじいちゃん?」
『なに!?』
「貴様は狂っているぜ。ああ、ほんとクソ野郎だ。間違っていると思うが……それでも、さっきまでのアンタは、自分なりの正義は貫いて来た男じゃあった」
オレは抜き身の竜太刀を肩に担いだまま、ガルードゥの爪が傷つけた岩壁に近づいていく。そこでしゃがみ、指で砕けた岩の破片を浴びて、割れちまった土偶の女神を引きずり出す。
「……あーあ。マーヤさまとやらが、粉々だぞ?……アンタがやったな?」
『……ッ!?』
「オレから見れば、アンタの人生なんて、本当に無価値でつまらん人生なんだが……ひとつ感心は出来ることもあった。信仰心、うん、大したモンじゃあったよ」
ガルードゥは無言。無言のままに聖なるほこらに響くオレの言葉を聞いていた?それもあるが、その無数に増えた、よく見える眼球とやらで、自分が暴れて壊れてしまった聖なる場所のあちらこちらに視線をやっている―――。
『……わ、わしが……ッ』
「そうだ。アンタがやっちまったな」
『ち、ちがう!!き、貴様のせいだッッ!!』
「別にいいぜ。そう思いたければ、そう思ってみても?」
アンタ自身を納得させられるロジックが、そこにあるのなら……だけど?
『がああああああああああああああああああああああああああああッッ!!』
くくく、ああ、叫びやがったな?この男は、元々、とんでもない変人だが……体がモンスターに成り果てたことで、情緒不安定具合が、さらに深まったのかね。
まあ。オレだったら、こんな害虫のフルコースが混じったような形状になってしまったら?火山にでも行って、火の海に飛び込みたい。
「……まったく、大した信仰心だったのに。翳っちまってねえか?」
『違う!!ワシの信仰心は、マーヤさまへの愛は、変わってなどはおらん!!』
「そうかね。だが……もうオレは、アンタの信仰心の篤さを信じられないね。力を誇示したいがために、暴れて?……マーヤさまたちを割っちまったんだ」
『……こ、言葉で、ワシを操るか!!こ、この悪魔があああッッ!!』
ガルードゥがオレへの攻撃を再開する。ああ。それでもいい。言葉責めも好きだけど、やはり戦いとは、こういう接近戦が楽しいからなッ!!
ガギュイイイイインンンンッッ!!
ワンパターンだ。蟲としての肉体の構造を、ガルードゥはコントロール出来ない。ロジンと違い、ヒトとしての心……まあ、歪んでいるのかもしれんが……心は、無事だ。
ヒトとしての記憶が、ヒトとしての精神が宿っている分。動きは、『隠し砦』で戦った『大地獄蟲』に比べても単調だぞ。
『この巨体と、力比べなどおおおおおおッ!!』
『自称・聖隷蟲』が吼えて、アーレスの竜太刀を折ろうと圧をかけてくる。
だが、ガルードゥよ、お前の言う通りだ。オレは、疲れているんだ。貴様なんぞと力比べをしてやる気など、毛頭ない。だから、片手で竜太刀を握っているんだ。左手が、貴様の顔へ向けられるぞ?
『ぐううッ!?』
さすがは戦士ではなく、神官だ。素人め。その無数に増えた複眼の全てで、オレの左手を凝視する?引っかけてるんだぜ?……本命は。オレの影。背中に隠すように、風を集めまくっている。ここは狭い空間だから、一瞬で風をかき集めるのはムリ。
だから……トーク中も集めていたぜ?オレの影に、オレの背中に―――とてつもなく大量の風をな?複眼か?……いや、呪術師としての勘かね?ようやく、見えたようだな、オレの腹が。
『……風を、集めて……いたのかッ!?』
そう。『いた』。『いる』ではない、すでにかき集め終わっているぞ?ドSだからね、下品に笑うよ、こういうときは。そして、ヒトの精神を残しすぎている貴様は、オレの笑みに恐怖を抱く。ビビるな、戦は、ビビったほうが負けだぜ、戦士で無きモノよ?
動きが止まり、すべては手遅れとなる。
「『魔を帯びた風の槍よ―――」
『ひ―――ッ』
逃げる道を選ぶか。それもいいが、どうせ手遅れだ。
「―――我が敵を貫き、その覇を示せ』……『タイクーン・バリスタ』ぁあああああああああああああッッ!!」
瞬間、圧縮された風がオレの影から唸りを上げて、解き放たれるッ!!
ギャギャギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!
唸り、逆巻く竜巻の『巨槍』がッ!!音の数倍の速さを帯びてぶっ放されたッ!!
後退しようとした『聖隷蟲』の巨体に、その竜巻の尖端は即座に追いつき、ヤツの長く太い首の根元へと着弾していたッッ!!ヤツの巨体をグイグイと押し込み、そして―――。
バシュウウウウウウウウウウウウウウウンンンンンンンッッ!!
風が炸裂する。『聖隷蟲』の甲殻を破裂させながら、暴れ狂う風が、このせまいほこらの内部で嵐となった。
女神の土偶が壊れて、燭台やランプや油容器の火が消える。わずかに生えていた貴重なヒカリゴケたちも風の弾道に巻き込まれて、裂かれて、剥がれて……風は闇を呼んだ。
『―――は、はは!!愚か者め、こんな場所で、暗闇だと!?』
そう。真っ暗ではないが、かなり暗いね。だから、有利だと思ったのか?この空間で数十年を過ごし、病んだ目で、この空間を見続けた貴様のほうが?
だが。
もしも、そう考えているとすれば……お前は、やはり戦士ではない。熟練した戦士が、真の猟兵であるこのオレさまが?……無意味な大技など、使うとでも思うな。備えるべきだ。希望的観測など捨ててしまえ。
―――闇ね?
嫌いじゃないさ。なにせオレには、この『魔眼』があるからね。
『……ッ!?』
闇のなかに、貴様はオレの光る眼を見てしまったのか?声に怯えが混じっている。それはいけない。そう、怯えてしまう。すると、こんな風に退避が遅れるぞ?
ザシュウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!
『ぎゃがあああああああああああああッ!?』
走り込みながら、ヤツの脚の一つを切り裂くのさ。強い一撃ではない。走力と体重移動を使った、竜太刀の切れ味に依存した撫で斬りだ。それでも、貴様の甲殻に傷を入れ、火花を散らし、肉の線維を断てるぜ。
痛みに歪むヤツの脚を斬っては走り、斬ってはステップ。ヒット・アンド・アウェイ/一撃離脱を繰り返し、手傷を刻んでいくのさ。魔眼があれば、闇の意味はない。オレには、すべてが見えているぞ、ガルードゥよ。
「……ボサボサしてたら、脚を全部、失うぞ。せっかく、完全無欠とやらに戻れたのにな?」
『ちょこざいなああああああああああッッ!!』
『聖隷蟲』が暴れる。暴れようとする―――だが。『真横』から飛来したファイヤーボールなんぞに頭を爆撃されて、その動きが止まる。
『な、なに!?だ、誰だ!?ほ、他に、誰がいるッ!?ジャスカかッ!?』
「いいや。オレとアンタの一対一だ」
『ばかな!!なぜ、炎が、横から!?』
―――よそ見するなよ?
ザシュウウウウウウウウウウッ!!
『ぎゃあああああッ!!』
「ハハハハ!!どうした、じいさん!!『聖隷蟲』なんてのは、雑魚なのかよ!?」
『お、おのええええええええええッ!!竜騎士いいいいいいいいいいいッッ!!』
ブチ切れした『聖隷蟲』がその巨大なハサミを振り回す。ああ、残念だ。ここにもヒトが残っている。視野が悪いのはお互いさまか?動きが雑だ。そして、恐怖心から、こちらのフェイントにかかり安くなっている。
良くない戦い方だ。
……そんな雑な大振り。たとえば、ミア・マルー・ストラウスなら潜りながら攻撃を加えてしまうだろう?ああ、そうだよ、ガルードゥ。お前が必死に逃げるしかなかった、あの黒髪の猫系美少女ちゃんだよ。
ミアに、暗殺術を教えたのは、ガルフ・コルテスと……オレだぞ?
闇のなかを飛ぶ。闇のなかを踊る。闇のなかで、その巨大で雑な攻撃の軌道を潜りながら切り裂いていく。鎧を着ていない今なら、ミアの真似事も、これぐらいなら出来るぜ。
『な、なんで!?なんで、あたらないッ!?』
「致命傷を狙っていないからな。普段よりも、ずっと早く軽快に動けるのさ」
『バカな!!さっき、砦で見ていた時とは、別人ッ!?』
「同一人物だ。だが、手加減しているか―――本気で殺そうとしているか、その違いは大きいのだよ」
『……ッ!?』
そうだ。オレは、本当にお前のことが嫌いだ。
オレのカミラの友人たちを襲ったな?ロジン・ガードナーをバケモノにして、ジャスカ・イーグルゥ姫の命を狙い……彼らの作った命にさえも、殺意を抱いたな?
貴様は、ジャスカ姫の腹で子を成すとかどうとか言っていたが……アレはすでに、あの胎児の居場所だ。貴様の下らん種が、近寄る?……言葉で言うだけの権利さえないのだ。
『ひ、ひい!?……わ、ワシは、負けぬ!!母よ!!ワシに、力をッ!!』
「借りろよ、力を。オレも……オレが信じる『竜/アーレス』の力を借りている」
炎が走る。ヤツの複眼がそれを追う。それは壁を走った。壁のヒカリゴケの残骸を焼き払いながら―――安心するか?外れたと?
いいや。それではダメだ。想像力がなさ過ぎる。貴様は……見ていたんだろう?いいや、それとも、あのときはミアに追い回されて必死に逃げていたのかね?
『闇』さえ操る『呪眼』を……見忘れていたとすれば、残念なことだ。
壁を走った炎が、唐突に軌道を変える。驚愕する『聖隷蟲』の頭部に、ファイヤー・ボールが命中するのさ。炎の直撃にえぐられて、風の炸裂でヒビ割れていた甲殻が爆ぜて飛ぶ。
『な、なぜ―――ッ!?』
怯えたな。その複眼で炎を見たか。
闇のなかを、駆け回るファイヤー・ボールたちさ。大した威力ではない。子供でさえ仕える単純な初歩の術。炎の魔力を込めて、お手玉さ。炎のジャグリングからスタートするんだ、お前もしただろう、一世紀近くの昔にさ?
でも、今のそれは違う。まったく知らない軌道だろう?壁を転がるそいつが、急にお前に飛びかかる。大地を走るそいつが、急に飛び上がってアゴを撃つ。外れて飛んだそれは、Uターンして後頭部を焼くのさ。
そうだ、気づいていないのだろうが……この闇の始まりに、貴様が金に輝くオレの左眼を見てしまったときに、こうなることは運命づけられていた。
あの瞬間に、貴様の顔面には『呪印』が施されている。アーレスの瞳と同じく、金色に輝く竜の呪いがね。そいつに向かって、オレのファイヤー・ボールは飛んでいくのだ。いきなり角度を変えてな。
だから、対応できんだろう?ありえぬ軌道で飛来する火球を、読むことなど、熟練した戦士でない貴様には不可能だ。さらに、指を鳴らすのと同じぐらい簡単なファイヤー・ボールだ。走り回りながら、貴様を刻みながらでも、いくらでも撃てる。
くくく。
難儀なものだな。右から火球に焼かれれば、右にオレがいるような気持ちになる。だが、左の脚を斬られるぞ?後ろだと思えば、前から。下に潜られたと思えば、上からも来る。
オレはどんどんこの戦術を洗練させていくぞ。火の球を呼ぶのは、とても、簡単なことだからね。
わざと炎を壁に走らせて、貴様の集中を誘い。本命は竜太刀だ。そして、火球の魔力を読もうとすれば?風の魔術が貴様を切り裂くぞ?
自在だね。
もう、こうなってはオレに敵うわけが無い―――魔術に怯えすぎて、隙だらけだぞ?自分を削っていく小技を警戒するのは正しいが、あまり、そればかりに気を取られて守りを堅めすぎると、痛い目に遭うぞ?
『―――ッ!?』
そうだ。その大きなハサミで顔面を隠している場合ではない。お前は火球なんぞに気を取られて、オレの真の恐怖を警戒していなかった。知らないから、仕方がない?いいや、お前に一対一で、正面から、こんな狭い場所で戦う男だぞ?
必殺の何かを用意していると考えなければ、戦士としては二流以下だな。
竜の劫火が逆巻き揺れる。
アーレスの竜太刀に、その刃に、暴れる劫火が宿るのさッ!!
『な、なんだ!!そ、その魔力はッッ!!竜とヒトが―――』
「―――共に在るのさッッ!!魔剣ッ!!『バースト・ザッパー』ぁああああああああああああああああああああッッッ!!!」
劫火を帯びた竜太刀が、大地に叩き込まれるのさッ!!地面が爆ぜて、灼熱を帯びた爆風の牙が、『聖隷蟲』の巨体を焼き払いながら切り裂き、爆砕していくッ!!
『がああああああああああああああああああああああぁぁッッ』
脚を刻んでいたおかげで、退避行動ゼロだった。ヤツはオレの必殺の劫火を全身でまともに浴びて、その肉体を爆破されながら岩壁に叩きつけられていた。全身が砕け散り、焼かれていく……。
『……ばかな……たいぎが……くずれて……もえていく……ッ』
「貴様の願いは、大義などではない。祈りにすら劣る、ただの欲望だ」
『ふ、ふふ……な、なるほど……たしかに…………ああ……まーや、さま…………』
「祈ればいい。地母神とやらは、死に往く者へも、生き抜く者にも、祝福を与えるだろう」
岩壁に半ば埋まったままの『ソレ』を……金色に輝く劫火の残り火が―――その不気味な『聖隷蟲』の死骸を焼いていた。
「……ではな。隠者よ。この場で果てたのならば、貴様にとっては満足な結末だろう」
……それゆえに?
神官たちを、ここで殺害していたのか?
もしも、そうならば―――少しは女神も貴様の愚行を許すかもな、ガルードゥよ。
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