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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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火の記憶、火の祭り

キリアラナ王国はクレド語が使われている、クレド語は公用語として大陸間の政治外交や社交

ギルド間の連絡や商取引で使用される最もメジャーな言語である。

その他タルミラ語、アヤビラ語、イラハ語といった民族ごとの言葉の他にマトラ神教の教典に使われる

特殊な言語もあるが、そういったこの世界(マトラーン)のどの言葉にも当てはまらない文字の羅列。


「可愛い」


びっしりと日本語が刻まれた何かの呪術の祭壇かとも誤解されそうな一室の異様な光景に

リチャードの反応は、唯一理解出来る挿絵のヒロイン(男)の感想だった。


「なんて可憐な令嬢なんだ」


一面に刻まれた内容はweb公開の全年齢版では無くイベント販売の紙媒体の手足臓物が切り離されたり

下半身が連結結合してるイチャイチャハーレム(男)な血飛沫と謎の汁塗れの、グラーシアが見たら

龍骨扇乱打必須の発禁確実のR18が付く内容と、表紙イラストやエンディングのハッピーエンドの

素敵挿絵との温度差は意味が解れば風邪を引きそうであるが、日本語、いやこの場合は

古代勇者語と呼ばれる漢字混じりの文章が読めないリチャードは幸福だろう。


「これは古代勇者語だろう、意味は解らないけれど学園の装飾で見たことがある。

とすると、この令嬢は古代勇者時代の姫君か異世界のやんごとない御家の御令嬢ですか?」


はるか昔、既に地に無い伝説となった国に召喚された勇者は魔王を滅ぼした後に

その国の王女を娶り様々な文化を遺したとされ、既に伝承も廃れ失伝した古文書に使われた文字は

異世界趣味とされ格調高い装飾文様として色んな場所を彩るデザインとして現代に残る。

そんな格調高いとされる装飾に縁取られた、受けというより女体化に近い睫毛の長い美少女(男)に

心奪われたリチャードはうっとりと見惚れている。


「そうだその者は、信州上田の真田幸村というグラーシアの住う地の英雄だ」


地元の英雄もゲームのキャラ化された上にベーコンレタス風味に調理された全くの別人だが

何も知らないからと、アーダルはリチャードに向かって適当な事を吹き込んでいる。


「えと、この方は?」


「火の精霊使いの冒険者のアダルさん、暫くシナノに逗留して俺を手伝ってくれるからヨロシク」


「少々疲れたので暫くクラウドに世話になる、これはその手土産といったところだ」


長椅子でグッタリしているアーダルの様子にリチャードも、クラウドが企画外で普通の精霊使いなら

ここまでの大掛かりな火魔法を行使すれば疲れるよなと、クラウドの紹介に疑問を持つ事も無く

クラウドの知り合いの新たな入植者の一人だと納得したようだ。

それよりも目の前の美少女(男)が、領主レディシナノの前世の郷土の英雄と知ってリチャードは

感動を深めているようで、壁に焼き付けられた肖像を卑猥な文章ごと剥ぎ取って

ウエダ城の本殿に飾ろうかと世迷言を吐いている。


「アダさんちょっとこれはヤバいよ、壁の文章はweb版に差し替えて」


クラウドは生粋のマトラーン人ならともかく、日本語を理解出来るグラーシアがこんな物を目にしたら

ひっくり返るどころの騒ぎではないだろうと元凶にやり直しを要請する。


「今は無理だ、もう少し力が戻るのを待つか何か回復出来るような祭りを頼む」


おかきを頬張りながら火酒と濁酒をチャンポンしながら脱力している今のアーダルは

呑んだくれのオッサンにしか見えないが、神様がこのままでは困るとクラウドも考える。


「火と戦争の神様だし火を焚く祭りか、ケンカ祭とかの方が効く?」


折角なら開拓団の裁量を任され市役所でいうところの助役相当する立場になった事で、スワ湖とスワ地区の

行政権を任され屋敷と共に土地を下賜されたクラウドは、念願の木落とし坂を我が物にしたのだ。

早速御柱貯金を始め、入植者も活きの良さそうな元気な住民をスカウトして引っ張ってきている程だ。

しかし新たなスワ湖に住むのは水の精だし元々火の要素が無いし、何より入植によって新築ラッシュだし

それに合わせて結婚した人達が多くて物忌令(ぶっきりょう)に定められたタブーに引っ掛かる。

御柱の年は家の新築改築、嫁取り婿取りは慎めという、中世の頃はもっと厳しくて葬式を出すなと

死者を出して穢れがあった場合も一旦仮埋葬をして引導を渡すのを翌年に回す程だ。

残念だけど予行を兼ねたアーダル復活御柱祭は断念するが、さりとて他の祭なんてよく知らない。


「道祖神祭なんかどうだ?神力の使い過ぎと、異界の記憶に手を伸ばした事で神格を二つ三つ下がる所を

シナノに石像を置いたのと氏子のグラーシアを助けた礼だとかで、彼方のサルタヒコ殿とアメノウズメ殿の

二柱がノザワで行われているやらの祭りの力を分けてくれてな、男達が顔に火傷を負いながらも大きな社に

火を付ける者と守る者との攻防が凄まじい良い祭りであった」


「日本三大火祭りの一つじゃねぇか!ってか、神格落とすってBL本の為にそこまでしたのかよ!?

つかおグラさんが氏子?おグラさんは上田人だろ?だとしたら何で道祖神なんだ、上田だったら

真田神社とか生島足島(いくしまたるしま)神社とかの氏子なら解るんだけど」


クラウドは諏訪の人なので上田人の信仰について詳しくない、生島足島神社も母親に引き摺られての

聖地巡礼(真田詣で)で諏訪祭神に粥を献じた二柱の神を祀ってて武将の尊崇を集めて武田真田といった

戦国ビッグネームの起請文があるから知ってるくらいだし、真田神社は上田城の敷地にあって

明治の創建だったから昔からの信仰と問われると今いちピンとこない。

夏祭りで有名なのは『上田わっしょい』という昭和の頃に始まった市民祭なので代表的な上田の信仰と

問われてもサッパリであるがそこは神様の一柱、アーダルはその辺の記憶も道祖神の夫婦二柱に

神火と共に分けて貰っている。


「道祖神信仰は上田辺りでも盛んらしくてな、どんど焼きという名で糸屑虫(カイコ)の繭を模した

餅玉を焼いて食したり、子供だけで汁を煮て餅やら赤飯を食しサルタヒコ殿の札を男児が刷って配り

大人から小遣いやら菓子を貰う楽しげな祭りをしておったぞ、幼い頃のイト嬢も楽しそうに

繭玉を焼いたり豚汁とやらを啜っていたが、我はノザワという所のあの火祭りの方が良いなぁ」


アーダルは火と正義と良き戦士の神なので、子供達がワチャワチャしたほのぼのした祭りより

青年と壮年の男子が命懸けで火で戦って社を激しく燃やす祭りの方が好みのようだ。


「あの規模で無くとも構わぬ、頼む」


野沢温泉村の道祖神祭はかなり大掛かりな祭りだ、当事者は仕事を一週間くらい休んで臨むくらいには。

その規模で無くても良いならと、開拓の慰労祭としてならとクラウドは思案を始めその場にいたリチャードは

二人の会話からアダルと名乗った冒険者が只人に非ずと内心慄いていた。


「あ、あの、アダルさんは一体」


「ただの火を使う冒険者って事にしといてくれよな、なっ!」


「偶に火と正義と良き戦士の為に色々する事もある何処にでもいる普通の火を使う冒険者だ。

な、そういう事にしておいてくれるなら我も幸村の話をクレド語で焼いても良いと思っている」


上機嫌で良い感じに酔いが回っているアーダルの発言にリチャードはその神の正体を察しながらも

口をつぐむ事を選択したようで、首を縦に振った。


「ならさアダさん、ソレを銅板に反転してやれないかな?」


アーダルの提案に銅版画を思い付いたクラウドが口を挟めば、アーダルも物語を印刷して

紙媒体で携行閲覧が出来ると気付いて賛同し、早速領主のグラーシア宛に開拓の慰労祭として

火祭りを行いたい旨と『シナノ月刊新聞公社』の印刷所を借りたい事を手紙に(したた)めると

レディシナノお抱えの配達員に託したのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オグラさんの心意気と神仏や自然に対する畏敬の思い [気になる点] 腐界が広がってる件(* ̄∇ ̄*) [一言] これからも楽しみにお待ちしております。大変な時期ですが、お身体大切にお過ごし下…
[一言] BL汚染の力・・・はんぱないな^^;
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