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転生公爵家令嬢の意地  作者: 三ツ井乃


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奸計なんて関係無いねと振り下ろす豪腕。

アルフヘイムにて捕らえられていたユリウスの側近達が王都に護送され、キリアラナ王国教会にて

大司教 クレメッティの名において裁かれる宗教裁判、神判に掛けられる。

神罰の軽減に口添えをした、その稀少さと最悪は死を賜り王家の贖罪とするべきユリウスを

救った功を鑑みて再び王城に呼び出されたグラーシアとその一行。

アーダル神の眷属を害したという禁忌の誘導を為した罪で、ユリウスを誑かしたとされる側近達は

火刑に処される見通しなのだが当人であるアーダルは何故と首を捻る。


「火の神様への贖罪だからで御座いましょうね、火によって罪で穢れた魂が浄化されるって

考え方もあるみたいですし、アーダル様がお喜びになるとか何とか教会で聞いた事が」


「そうなのか?別に愚か者が死んだな〜って思うだけで、嬉しくも何ともないが」


教会で聞き齧った説話や法話といったグラーシアの説明に、何だそれ?とばかりに驚くアーダル。


「火で炙って嬉しいのはコカトリスの肉だな、美味だれ焼き鳥とやらのタレは本当に美味だった」


ウットリと信州上田のB級グルメに思いを馳せる神様、玉ねぎとリンゴを擦り下ろした物に

ニンニクを加え醤油と酒、味醂で味を調えトロリと煮たタレをかけたり浸したりして食す焼き鳥に

心奪われたアーダルにクラウドは諏訪の味噌天丼を勧めている。


「彼方の信州とやらは旨い物が溢れているのだなぁ、ソースカツ丼、五平餅、ニラ煎餅に

ワカサギの唐揚げに甘露煮、おやきに山賊焼き…そして濁酒」


「ウチに到着しましたらたんとご馳走いたしますわ!」


「神様仏様おグラ様!是非とも天ぷら饅頭をお願いします、コッチじゃ全然無いし食べれない」


そもそも饅頭の無いキリアラナには、お盆も無いから天ぷら饅頭も無いと手を合わせるクラウドに

お安い御用よと請け負うグラーシア、やはり転生人組に着いて来て良かったと

未知のグルメに期待を膨らませるアーダルの乗る馬車に向かって来た一騎の遣い。


「其処なる馬車はファングル公爵家令嬢のお乗りになられておられる馬車で御座いましょうか」


名指しで現れた使者、御者が警戒しつつ馬車を停め何者だと誰何すれば、その場で下馬し

片膝着いて名乗る青年は教会よりの使者であった。


「私はマトラ神教キリアラナ王国教会所属聖騎士 ミハエルと申します。

昨日キリアラナ王国教会大聖堂にマトラ神様が御降臨され神託を下されました事によりますと

其処なるファングル公爵令嬢グラーシア様がマトラ神様の加護を受けたる"聖女"様と承りまして

御迎えに参上仕った次第」


ミハエルと名乗った聖騎士とやら、しかし公爵令嬢グラーシアが声を返す事は無かった。


「怪しいよな…」


ポソリと馬車の外に聞こえないように声を落として囁き問うクラウドに無言ながら

コクリと頷くグラーシアとアーダル、側付きのメイドも無言ながら身を固くしている。

それもそうだろう、マトラ神の寵愛を一身に受けた"聖女"と言えばキリアラナ王国だけでなく

この世界では神の代理人の立場に立ち、神力の一端を授けられたが故に不毛の大地を

一指で以って肥沃の地に変える程の力を有すと伝わっている。

その"聖女"様はマトラ神教大司教の上に位し儀礼の際には一国の王と同等、特に宗教儀式や

重要な式典では王も聖なる娘に上座を譲る。

仮に庶民の中で"聖女"と成り得る特別な力を持った娘が見つかったと噂になればすぐに王家と

教会の上層へと奏上され、迎えには特別な馬車が仕立てられ、その土地の領主と

娘を相手にするからか夫人、または母が付き、近隣の教会の司祭と王家と大司教の使者が揃う

大層な行列になったと過去の記録にもある。

だからこそ教会所属の聖騎士とはいえ馬車も介添えも無いたった一騎での

"聖女"の迎えなど絶対に有り得ないのだ。

何よりグラーシアはファングル公爵家令嬢なのだ、先触れもアポイントメントも無く突然現れた

得体の知れない騎士一人にノコノコ着いて行くなどグラーシアに付き随う侍従や護衛騎士

婆ややメイド達が許さない、それ以前に近付けさせないだろう。


「リリア」


貴族令嬢としての常識があるからこそ沈黙を守るグラーシアは一言、この無法者の相手を任せたと

側付きのメイドの名を呼ばえば、意を得たりと頷いたメイド リリアは馬車の横に随う護衛騎士に

無礼者の相手を任せたと二、三言葉を掛けると馬車を出すよう御者に命じた。


「早速おグラさんを囲い込もうってやつかな?」


走り出した馬車が自称 聖騎士とやらから離れるとクラウドが口を開いた。


「であろうな、過去には死人を生き返らせろと願った…いや、願わされた娘もいたぞ」


人よりも永い時を過ごし神様事情や神界事情にも通じた現役火神様であるアーダルの零した裏話に

車内の一堂が目を剥く。死者を蘇らせるだなんで何の復活の呪文だよ!?と口に出して

驚くクラウドに懇切丁寧にそこらへんの裏事情…人間の、その奇跡を行なったとある国の権力者の

美談風に飾り立てられたキナ臭い権力の乱用について詳しく語ってくれた。


「あれは600年前程かな?此処より西のもう滅んだ国の話なんだが、魔族の侵攻を食い止めるとか

何とか理由を付けて異世界から勇者を召喚したのだが"渡り"の際にチートと呼ぶ

勇者としての力を授かってはいても所詮は多勢に無勢、魔族の長を前に魔物に喰われて死んだ」


「その勇者を蘇らせた?」


「そうだ、聖女の両親を人質にな。

だが"聖女"は神に愛された加護を受けただけの只の人に過ぎん、人の身で器以上の膨大な

魔力を用いて世界律を乱すような奇跡を起こせば如何なると思う?それがその国の滅びの原因

だからこそ死者復活、反魂の禁呪の詳細が残らなんだのよ」


重々しく見てきたように語るアーダル、何故そんなに詳しいのかと疑問が皆の顔に出ていたのに

アーダルは何でも無いように実際に見たままだと言う。


「我は火と正義と良き戦士の神だぞ、正義を審判するに客観視せねばならぬし

火は太古より人の営みと共にあるのを忘れたのか?」


つまりは灯されたり焚かれた火を介して人々の凡ゆる行いを(つぶさ)に見つめ続けていたのだと

アーダルは自らの神としての力の一端を人に知らしめたのだ。

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