ジェンツーペンギン
ジェンツーペンギンだな、よし分かった!
◇ ◇ ◇
よしここだ。
ほらあそこ、あの足が黄色いペンギンがジェンツーペンギンだ。
日本では飼育されていない種類を含めて、ペンギンは全部で18種類存在する。
実は、その中でも足が黄色いのはこのジェンツーペンギンだけなのさ。他のペンギンは、黒かピンクのどっちかだ。だから黄色い足をしたペンギン、イコールそれはジェンツーペンギンと覚えておけば、誰でも簡単に見分けられるだろう。
それから、あの両目を繋ぐような頭の白い帯模様が見えるか? あの模様もジェンツーペンギンの特徴なんだ。実はあれこそが、『ジェンツーペンギン』という名前の由来でもあるんだ。
ジェンツーとは、ポルトガル語で『異教徒』を意味する『Gentio』という単語に由来があるらしくてな。あの模様が、頭に巻くターバンを想起させることから名づけられたそうなんだ。
ジェンツーペンギンの体長は75から90センチくらいで、俺達コウテイペンギンとキングペンギンに次ぐ大きさだ。中型のペンギンの中では最大のサイズだな。
そしてジェンツーペンギンといえば、特筆すべき点がある。
彼らが、全ペンギンの中でもトップクラスの運動神経の持ち主だということだ。もっとも速く泳ぐペンギン、ペンギン界最高のスイマーとして知られていて、水中時速は最高で35キロに達するぞ。それにスピードだけでなく旋回能力にも目を見張るものがあってな、猛スピードで泳ぎ回るジェンツーペンギンの姿は、さながら魚雷だ。誇張抜きにして、その動きを目で追うのが大変なくらいさ。
時速35キロは、100メートルを10秒ほどで移動できる速さでな。ちなみに人類の最速記録が9秒台。しかも地上より何倍も抵抗のある水中でそれだけのスピードを出せると言えば、ジェンツーペンギンの身体能力の高さが分かるだろう。
人相……というかペン相? の良さもあるんだが、『温順ペンギン』という別名の示すように好奇心旺盛で、人慣れしやすい気質の持ち主でもあってな。観覧者に近寄ってくることも多いんだ。
北海道の『小樽水族館』では、冬季にはジェンツーペンギンの雪中散歩が開催されているんだ。ジェンツーペンギンを透明板なしに、間近で見られるイベントとして人気があってな。興味があったら調べてみるといい。ただしペンギンに触るのは禁止だし、ジェンツーペンギンの歩くスピードが速くて度肝を抜かれること必至だと思うから、シャッターチャンスを逃さないようにな。
ジェンツーペンギンは多くの施設で飼育されているから、会う難易度はそこまで高くはないと思う。
可愛さと人懐っこさ、ペアが集まって『おじぎ』をしたり(ちなみに謝罪ではなく、ペアの絆を深めるための行動らしい)、結婚指輪のごとくオスがメスに気に入った小石を贈ってプロポーズしたり。
とにかくユニークな生態が多くて人気が高いペンギンだが、ナンバーワンの運動神経とオンリーワンな特徴を併せ持つペンギンだと知っていれば、きっと『カッコいい』とも思えてくるはずだ。
俺がジェンツーペンギンについて知ってるのは、こんなところだな。
【ジェンツーペンギン】
【英名】Gentoo Penguin
【学名】Pygoscelis papua
【特記事項】
コウテイペンギン、キングペンギンに次いで世界で3番目に大きなペンギン。中型のペンギンの中では最大のサイズ。全18種類のペンギンの中で唯一足が黄色く、両目を繋ぐような頭部の白い模様が特徴的。
優れた運動神経を持つペンギンとして知られており、泳ぐ速さは最大で時速35キロに達する。水中を縦横無尽に泳ぎ回る彼らの速さたるや、動きを目で追うのが難しいほどだ。
多くの施設で飼育されており、会うのが比較的容易であること。それに人慣れしやすい気質から魅了される人も多く、人気の高いペンギンである。




