83 弟子
キリのいい所で区切ったら短くなっちゃいました
「黒いフードの男に出会った? しかも我が主のことを知っていただと?」
その日の夜。
書物庫が二人きりになったのを見計らって、クロエはグリモアに夢幻世界を出た直後のことを打ち明けた。
「それにグリモアのことも知ってて、師匠って呼んでた。名前は確か……ティアマト」
「ティアマト……?」
グリモアの顔色が変わった。
「心当たりがあるの?」
「ああ。同じ名前の弟子がいた。だが私が弟子をとっていたのは、封印以前の遥か大昔のことだ。奴が生きているはずがない」
「でもグリモアは生きているでしょ」
「確かにそうだが……他に情報はないのか?」
「顔ははっきり見えなかったけど、大きな傷が見えた気はする」
「なるほど、顔の大きな傷か。それは聞きたくない情報だった。おかげで確信に変わってしまったではないか」
「じゃあ、やっぱり……」
「そうだ。黒いフードの男というのは、私の弟子だったティアマトで間違いない。どうやってこの時代まで生きながらえたかは謎だがな」
グリモアは自身を魔導書に封印することで現代に蘇った。
ならば黒フード――ティアマトも同じように自身を封印したのでは、とクロエは考えたが違うらしい。
「奴は30人いた弟子の中で一番出来が悪かった。初歩的な魔法すらままならなかった奴に、封印魔法などという高度な術が扱えるとは到底思えん」
「でも敵意があるのは間違いないよ。ボクとエリィの命を奪おうとしてきたし、ベルディアの村や夢幻世界を荒らし回っているのもあいつの仕業だから」
「我が主の言うとおりだ。よし、今すぐ奴を懲らしめにいくぞ」
「え、今から!?」
クロエは思わず聞き返した。
グリモアはさも当然という感じで答える。
「早いに越したことはないだろう。それに弟子の不始末を片付けるのは師である私の仕事だ。居場所に心当たりはないのか?」
「たぶん、お城の中だと思う。玉座みたいのがあったし……」
「そうか、ならば『шавв』で飛べるな。さあ出陣だ我が主!」
「待って、まだ心の準備とか諸々が……!」
「話は聞かせてもらったわ。私も仲間に入れてくれないかしら」
いつの間にかエリシアが後ろに立っていた。
「ティアマトには私にも借りがあるわ。ね、いいでしょう?」
「もちろん歓迎する。ずっと眠らされ続けた苦しみをぶつけてやれ」
グリモアは快諾。するとエリシアは、不敵な笑みを浮かべた。
「ええ、もちろんそれもあるけど……私にはもう一つ、大きな借りを過去に残しているの。借りたままはよくないわ。返しにいかなくっちゃね……」




