表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/88

81 現の塔

 塔の最上階にたどり着いた三人。

 そこで目にしたのは、ゲートの前に立ちふさがる異形の姿だった。

 街に蔓延る異形と比べると圧倒的に小さく、二足歩行の大ウツボというより人間に近い。

 

 しかし、不気味さは普通の異形とは比べ物にならない。

 しかもこちらの姿を確認できているのにも関わらず、ピクリとも動かないのがさらに不気味さを加速させる。

 

「こちらの勝利条件は唯一つ。あのゲートの中に飛び込むことです。あの門番を倒すことは考えない方が得策です」


「それって強すぎるからってこと? ふふふ……ちょっと燃えてきたよ」


 やる気十分に前進するクロエを、エリシアが止める。

 

「駄目。それ以上近づいたら動いてくるわ」


「だったらこれでどう?」


 クロエは手の平を前に突き出し、得意の闇弾(уад)を放つ。

 しかし当たる寸前で、闇弾はシュッと消えた。

 

「あれ?」


「あいつに飛び道具は通用しないわ」


「近づくのも駄目、遠くからも駄目……いったいどうすれば」


「最初にトラオムが言ったでしょ。あいつとは戦わずゲートに入る。それしかないわ」


「ですがゲートに入るには、いずれにしろ近づかなければなりません。覚悟はよろしいですか?」


 トラオムの言葉に、クロエとエリシアは同時にうなずく。

 作戦開始。三人は一斉に門番の間合いに飛び込んだ。


(さあ門番、かかってくるのです。わたしは夢幻世界の『管理者』として、お二人を無事に目を覚まさせなければなりません)


 トラオムは囮だ。門番の攻撃が自分に来れば、クロエとエリシアに時間の余裕が生まれる。

 その目論見通り、門番はトラオムをターゲットにしてきた。

 

(速い! ですが受け止めます!)


 トラオムは防御魔法を展開。

 光の障壁が出現するものの、容易く突破されトラオムは壁際まで吹き飛ばされてしまう。

 だが、これでほんの少しだが時間が稼げた。

 クロエとエリシアは半分ほどの距離まで詰めている。

 そして次に門番がターゲットにしたのは、エリシアだった。

 

(くっ、間に合わない……!)


 エリシアには身を守るだけの余裕もない。

 為す術もないまま、門番にやられてしまう。

 

「かはっ……!」


「エリィ!」


「私に構わず行って!」


 門番の視線は、残されたクロエに向けられる。

 クロエとゲートとの距離は、あと少し。

 

 しかし、希望は潰えた。

 まるで三人の努力をあざ笑うかのごとく、門番がクロエの前に回り込んだ。


「うっ、パラダ――」


 そしてクロエの首を締め上げ、地面に叩きつけた。そのまま動かなくなってしまった。エリシアも同様――。

 

 

 

「クククク……ギギギギ……」


 今まで一言も発さなかった門番が、笑い声のようなものを上げた。

 

「コノテイドカ。ジツニアッケナイナ」


「うぅ、そんな……」


「アトハキサマダケダ」


「――ふ」


 その時、トラオムは不敵に笑った。

 瞬間、フロアの床が破壊され――下の階からクロエとエリシアが姿を現した。

 

「ナニ!? ナゼキサマラガ!?」


「その二人はボクが作った分身さ。そっくりでしょ!」


 クロエの闇魔法によって作られた二人の分身は、黒い霧となって散っていく。その隙にエリシアは、門番の背後を捉えていた。

 

「この距離なら無効化は出来ないはずよ。――《光槍(レイス)》」


 超至近距離から放たれた光の槍が、門番を貫く。

 

「グアアアアアーー! ダガ、コレデオワリトオモウナヨ……」


 門番は前のめりに倒れた。

 あとはゲートに飛び込むだけ。

 

「行ってください! お二人とも!」


 トラオムが声を振り絞って叫ぶ。。

 すべてはこの瞬間へとつなぐためだった。

 

 最上階に現れた三人は、全員囮。本物のクロエとエリシアは、下の階で待機していた。もちろん、エリシアの魔法で気配を消して。

 

 すべては作戦通り。

 

 

 

 の、はずだった。

 

『3』


 戦闘不能となったはずの門番から、無機質な音声が流れる。

 

『2』


 それは何かをカウントしているようだった。

 

「自爆してゲートを破壊する気です!」


 いち早く気づいたトラオムが二人を急がせる。

 

「エリィ。先に行ってみんなに会ってきてよ」


「クロエ!? 何をする気!?」


「トラオムを助ける。自爆に巻き込まれたらきっとただじゃ済まない」


「分かってるの!? これを逃したらもう帰れないのよ!?」


『1』


 クロエは黙ってエリシアを突き飛ばした。

 

「大丈夫。遅れるけどボクも必ず帰るから」


「待って、クロ――」


 エリシアはゲートの中に入って姿を消した。

 それを見届ける暇もなく、クロエはトラオムの元へ急ぐ。

 

「クロエ様!? どうしてですか!?」


「誰にも犠牲になってほしくないんだよ。ボクの友達なら特にね」



『0』



 ズドオオオオオオーーーン!!

 凄まじい轟音と共に、塔は崩壊した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ