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引きこもり聖女は闇魔法を極める  作者: 山本エヌ
第3章 グリモア
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65 羽ペンをつくってもらおう

 クロエは悩んでいた。

 羽ペンの素材となる『精霊の羽』を入手はしたものの、数は一つしかない。

 羽の根元を万年筆のように削る作業を失敗したら、振り出しに戻ってしまうのだ。

 もちろんクロエは器用さに自信はない。

 たぶん、グリモアも同じだろう。というか確実に自分より下……

 

「……むっ。我が主よ、今何か失礼なことを思わなかったか?」


「え。ははは、ソンナコトナイヨー」


「そうか、それならいいんだが」


 ホッ。グリモアが単純でよかった。

 話しかけられたついでに、クロエは羽ペンのことを聞いてみた。

 

「ねえグリモア。羽ペンに加工できそうな人とか知ってないかな」


「私が知るわけ無いだろう。我が主こそ、誰か知らないのか?」


「うーん。そうだなぁ」


 クロエは考えを巡らせる。

 羽ペンの加工は短いナイフを使う。

 となると、刃物を使うことに慣れている器用な人がいい。

 でもそんな人は、この大聖堂には……

 

「いる! 一人だけ、いる!」


「誰だ?」


「ベルディアだよ」


 その名前を聞いたグリモアの顔が曇った。

 

「……ああ、あの人間か」


「気持ちは分かるよ。でももう和解したんだからさ、いいじゃない」


「どうもあの人間は信用できん」


「もう、頑固だなぁ。他にできそうな人がいないんだから仕方ないでしょ?」


「……仕方あるまい」


 グリモアは渋々納得した。

 ベルディアが確実にいそうな場所といえば、前に行った地下室だ。

 二人はさっそく行動に移した。

 

 

 

 

 長い階段を下っていき、例の地下室にまたやってきた。

 前に来た時と同じく、グロテスタスの鉢植えがあちこちに置かれている。

 漂う薬品的なにおいもあの時と同じだ。

 そしてテーブルの上や下に散らばる紙類も――ふとクロエは気付く。

 大量にある紙の中に、一枚の写真があることを。

 

「これって……」


 その写真には、二人の人物が写っていた。

 姉妹だろうか。小さい方はベルディアに似ている気がしないでもない。

 

 と、その時。部屋の奥にあるドアが開く音がした。

 とっさにクロエは写真を元の場所に戻す。

 

「なんだ君達、また来たのか」


 ドアの奥からベルディアが入ってきた。

 

「あー、うん。実はベルディアにお願いしたいことがあって……これを羽ペンに加工してほしいんだ」


 クロエは精霊の羽を取り出す。

 するとベルディアは快く引き受けてくれた。

 

「分かった、任せてくれ。そういうのは得意なんだ」


「ありがとう!」


 クロエは精霊の羽をベルディアに渡す。

 

「この羽、とてもきれいだね。何の羽?」


「精霊の羽――って言ったら信じる?」


「ふふ、面白い冗談だ」


 ベルディアはくすりと笑った。

 精霊の羽、と口を滑らせた時はヒヤッとしたが、その後は上手くフォローできた。

 我ながら上出来のごまかしであると、クロエは一人感心する。


「さっそく作ってくるから、君達はここで待っててくれ。散らかってて悪いけど、ここにあるものは好きに見てていいからね」


 そう言うとベルディアは、再びドアの向こうへ姿を消す。

 好きに見てていいとは言ったものの――そんなことはせず、二人は近くにあった椅子に座る。

 そしてクロエは、さっき戻した姉妹の写真をまた取り出した。

 やっぱり妹の方はベルディアに似ている。

 

 じゃあ姉の方はというと、まったく見覚えがなかった。

 ベルディアの姉がこの大聖堂にいるという話は聞かないし、そもそも姉の話自体を聞いたことがない。

 写真を裏返してみると、隅に小さく10年前の日付が記されていた。

 

「我が主よ、さっきから何を見ているんだ?」


 グリモアが聞いてきた。

 

「テーブルの上で見つけた写真なんだけど、片方がベルディアっぽいんだよね」


 クロエがそう説明するも、グリモアは別の所に食いついてきた。

 

「しゃ……しん?」


 写真及びカメラは結構最近になって作られた物だ。

 グリモアが封印される前の時代には、当然そんな物はなかった。


「ああ、グリモアは知らないよね。昔の人だから」


「む、昔の人……なんだか引っかかる言い方だな……」


「じゃあ大先輩とか? いいよね、グリモア大先輩(・・・)?」


()は余計だ。あと先輩(・・)も要らない。普通に呼んでくれ」


 けどグリモアはボクのこと普通に呼ばないじゃん、とクロエがそう思った時。

 奥のドアが開いて、ベルディアが姿を現した。その手には完成した羽ペンがある。

 クロエはまた写真を元の場所に戻した。

 

「完成したよ。これでいいかな?」


「すごい、本当にペンみたいになってる!」


 ベルディアは謙遜しているが、クロエのような素人目から見ても羽ペンの出来栄えはすごくよかった。

 これなら魔導書を書くペンにふさわしい。

 実際に手に取ると、なおさらそう思えた。

 

「ベルディア、本当にありがとう。これ、絶対大事にするからね」


「どういたしまして。それよりクロエ、新しいグロテスタスは要らないか?」


「うーん……今日はちょっと遠慮しとくよ」


「そうか……要らないか……」


「ごめんね。じゃあ、ボク達はこれで」


 クロエは別れを告げ、あの長い長い上り階段へと向かう。

 グリモアもそれを追うが、その際、ベルディアが小さく何かを言っている事に気づいた。

 

 

 

 

「――これで全部揃ったわけか」




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