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引きこもり聖女は闇魔法を極める  作者: 山本エヌ
第2章 収穫祭編
42/88

42 不思議な夢

 時は少しさかのぼり――。

 

 

「あー、片付けとか面倒すぎる……」


 収穫祭終了後、片付けチームと情報収集チームに分かれた六人。クロエは一応大聖堂関係者なので片付けをしていたが、案の定ダルそうにやっていた。

 

 しかし、そんなやる気のない態度を咎める者はいない。周りに誰もいないからだ。

 

 クロエは一人、長い廊下を歩いている。二つの建物をつなぐ、両側がガラス張りの連絡路だ。景観はいいが、太陽の光が入ってくるのでクロエはあまり好きじゃない場所である。

 

 それにしても西日が眩しい。ふと横を見てみると、ガラスに反射した自分の姿と――背後から急接近してくる謎の影が映っていた。 

「――!?」


 直後、クロエの後頭部に激痛が走る。さっきの怪しい影に硬い鈍器のような物で殴られたらしい。薄れゆく意識の中、クロエは影の独り言を辛うじて耳にする。

 

「この小娘はあの六人の中の一人で間違いないな。ククク……次はコイツに化けるか」


(化ける……? まさか、鬼!?)


 その後、クロエはどこか暗くて狭い場所に閉じ込められてしまった。このホコリっぽさからして、長年使われていない物置のような部屋であることは明白だった。

 

 となると、誰かに助けてもらうことは期待できない。今すぐ自力で脱出しなければ。

 

 しかし、さっき受けたダメージが響いて体に力が入らず、しかも「ガチャリ」という音まで聞こえてしまった。外から鍵を掛けられた音だ。

 

 間違いない。鬼に人質として監禁されてしまった。

 そして、クロエは再び鬼の独り言を耳にする。

 

「そう言えばこの小娘、闇鍋をやるとか抜かしておったな。面倒だがまあいい、そこで他の奴らが集まるだろうから一網打尽にしてくれる。鍋に入れる食い物は……その辺に生えてる雑草でいいか。ククク……」


 その声は、完全にクロエの声だった。普通なら驚くべき珍妙な出来事だが、今ならこの状況に説明がつく。

 

 鬼が、自分(クロエ)に化けたのだ。

 

 状況には説明がついたが……この状況、あまりに悪すぎる。鬼はクロエそっくりの姿で他の五人に近づき、騙し討ちをするつもりだ。

 だが、この物置から出られない以上、状況を伝える手段はない……本当に? いや、一つだけある。

 

『鬼が、ボクに化けてる……みんなが、危ない……。寝てる場合じゃないよ、本物のボク(・・・・・)!!』


 分身クロエ(・・・・・)は強い祈りを捧げ、メッセージを送った。相手はもちろん、面倒な片付けを分身に押し付け、今頃は書物庫で隠れて寝ているであろう本物クロエ(・・・・・)だ。

 

(……もっと厄介な面倒事、本物のボクに押し付けさせてもらうよ!)


 ここで分身クロエの体は限界を迎え、黒い霧となって散っていった。

 



 ――そして、クロエは目を覚ました。すごく、不思議な夢を見ていた気がした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「誰かな、ボクの安眠を邪魔したのは……」

 

 未だに寝ぼけ(まなこ)のクロエが二度三度と目を擦ると、ようやく目の前に異形の化け物がいることに気づいた。

 

 本来の状態の鬼と対面するのは初めてだったが、さっき見た変な夢のおかげか奴が鬼であることは分かったし、そこまで驚きもしなかった。

 

「それより貴様! なぜここにいる! 貴様は監禁されていたはずだ!」


「……言う必要はないね(だって分身使ってサボってたのバレるから)」


 クロエは不敵な笑みを浮かべる。

 直後、瓦礫と化した本棚の山から桃太郎が姿を現した。

 

「けほっ、けほっ」


「あ、桃太郎。ホコリまみれだけど大丈夫?」


 クロエはちらりと後ろに振り向く。


「拙者のことはお気になさらず。それより黒衛殿の無事が分かったので、これでようやく拙者も本気が出――」


 そう言って鬼神刀を再び構えた桃太郎の目に映ったのは、大腕を振り上げてクロエを叩き潰そうとする鬼の姿。クロエが鬼から視線を外した、わずかな一瞬での出来事だった。

 

「危ない!」


 桃太郎の叫びと同時に、激しい衝撃波が発生する。

 

 ――遅かった。気づいた時にはすでに、腕は振り下ろされていた。桃太郎は後悔を噛み締めながら目をぎゅっと閉じる。視界が黒に染まったその瞬間、また叫び声が上がった。

 

 鬼の叫び声が。

 

「んんぐぅあああああッ!!」


 桃太郎は驚くように目を開ける。

 アリスが立っていた。アリスが、鬼の腕を吹き飛ばしていたのだ。

 

「ちょっとぉ。私の大事な読者(ファン)になんてことしてくれるの?」


「き、貴様ァ。『管理者』のくせにその小娘に肩入れするつもりか……!?」


「えー? 読者を大事にして何が悪いわけ? それとさ……」

 

 アリスは、鬼を鋭く睨みつけた。

 もう片方の腕も、見事に吹き飛んだ。

 

「んぐぅ、なっ……!」

 

「私のこと『管理者』って呼ぶの、やめてくれる?」


 さっきとは打って変わってとびきりの笑顔を見せるアリス。

 一瞬のうちにあまりに大変なことが起きすぎたが、ここでようやくクロエも我を取り戻していた。

 

「ありがとうアリス、ボクを助けてくれて。ところでさっきの管理者って――」


「――おっとクロエちゃん、まだ油断しちゃだめだよ。鬼にダメージを与えられたわけじゃないんだからさっ」


「その通りだ。まったく、無駄なことをしよって……」


 いつの間にか鬼の両腕は元通りになっていた。

 息は多少荒くなっているものの、ダメージがあるようには思えない。

 やはり、鬼を討伐するには鬼神刀が必要なようだ。

 

「というわけで後は任せたよ、桃太郎ちゃん、クロエちゃん!」


「うむ、後は拙者にお任せくだされ!」


「え? ボクも?」


 鬼神刀を持ってる桃太郎はともかく、なんでボクまで? とクロエは首を傾げた。

 

 しかし、自覚はしていないがクロエは確かに鬼を討伐できる力を持っていた。

 その事実を後に……いや、今すぐ知ることとなる。

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