離さない愛
周りに夕日の赤い光が目に差し込んできた。
とても赤く眩しい。
でも不思議と不快感はない。
むしろ安心までする。
クリートは目を開けるとノルンが抱きついてきた。
クリートの体は何一つも傷がない。
きっとフレイヤが助けてくれたのだろう。
「もうなんでこんなにも死にかけるのですか!」
「そうだぞ貴様、ノルンを泣かすのなら私が・・・」
「はいはいヴェル君今は口を閉じましょうね・・・」
「その件はマジですまん、ちゃんとお礼はするし謝罪だって……」
「でも良かったですよ、フレドさんも生きているし」
「そうか・・・本当に良かった」
「一応目が覚めているみたいですので行きます?」
「いや、あいつは今話すべき相手と話してあげた方が良い」
「・・・クリートさんらしい意見ですね」
「こういう所は空気読まなくっちゃな」
フレドは目を覚ますと目の前にフレイヤが居て心底驚いていた。
元々この戦い以降で生き残ってもフレイヤとは会うつもりは無かったのでかなり驚いてしまう。
フレイヤはフレドを馬乗りにして待っていたため顔との距離がとても近い。
「・・・う、うん?」
「良かった、お兄さん!」
「ふ、フレイヤ!・・・ごめん・・・本当は会うつもりなんてなかったでも揺らいでしまう、こんなんじゃ!」
「そんなことを言わないでよ!お兄さん」
「人を殺してしまいそんな人間なんかと会いたくないだろ」
「・・・お兄さんが故意で人を殺すような人ではないとわかっています!」
「・・・でも殺してしまったんだよ!ライアを!」
「・・・ライアさんですか?あの人は生きてますよ」
「・・・え?」
そうライアはギリギリだが生き残っていたようだ。
よく良く考えれば病院にライアらしき人を見かけたのを思い出した。
「・・・そうか・・・」
「でも私は何度も言いますがお兄さんが不可抗力で殺してしまったことぐらいわかってます」
「・・・でも・・・」
「でもじゃありません!」
今までにないくらい必死な形相で訴えてきた。
フレイヤはフレドのことを聞いた時いてもたっても居られないのは知っていたがここまで必死だったとは。
「私はあなたが故意に人を傷つけるような人だとは思いません」
「・・・」
「だからお兄さんが罪を背負っても私はお兄さんの罪を認めるし一緒に背負っていきます」
「・・・そんなことできない・・・俺はフレイヤに幸せになって欲しいんだ、家族を失って愛に飢えてる・・・少しでも愛を覚えて欲しいんだ、だから・・・」
「私はお兄さんとの暮らしが1番幸せです、お兄さんなりの愛情を感じます」
「・・・っ!?」
フレドはその一言で目から水が大量に溢れ出てきた。
フレドはこの暮らしにフレイヤはきっとあまり幸せでは無いと思っていたが実際は反対でとても幸せだと聞き何かがちぎれたのだろう。
フレドはフレイヤを楽しませるために頑張っていた。
その努力が報われるのは嬉しいこと限りないことだ。
フレドはフレイヤの胸に飛び込み思いっきり泣いた。
もう背負うものが無くなり心が楽になったのだろう。
「あ、ありがとう!ありがとう!フレイヤ!」
「お兄さん、これからも一緒にに暮らそうね」
「あぁ!そのつもりだ!」
揺らいでしまった気持ちを持っていた時の自分を思いっきり殴り飛ばしたい気持ちだ。
フレイヤはフレドのことを認めてくれていて本当に心の底から嬉しさでいっぱいだった。
しかしちゃんとスクルドからはきついお灸を据えられた。
正座での説教は1時間くらいだったか、もしかすると2時間かもしれない。
でも長いことには変わりない。
2人は顔を俯きながらずっと聞くことしか出来なかった。
「本当にすみません」
2人はその一言しか出なかった。
全部言われたことが正論故にだ。
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2人の決戦から夜が明けいつもなら学校へ行く時間となったがあの襲撃事件で学校がボロボロにされたらしくまだ学校が始まらない。
かなり酷くやられたようだが学校内での死者はゼロだったと後で聞いた。
日頃の避難訓練の成果の賜物だろう。
でも数週間はだったので学校はだいぶ元の形を取り戻してきている。
明日から学校が始まるのだろうと思っていたが予想通りちゃんと明日から学校だった。
「明日から学校か・・・」
携帯のメールにそう書いてあるのを見て憂鬱になる。
クリートは日曜日の学校行きたくない欲求と同じ状態に立っていた。
「そうなのですかクリートさん?」
隣に座りながらテレビを見ていたノルンは首を急に曲げて聞いてきた。
この話的に多分メールを読んでいなかったのだろう。
「そうなんだよ、メール見てたか」
「完全に見てませんでした、まぁみんなとまた会えると思えば・・・」
「ヴェルは?」
「・・・・・・」
床でゲームを寝転がりながらやっているため無視された。
多分明日苦しむなと予想は着く。
「まぁ何となく察しはついてたよ、スクルドは?」
「僕はフェークとソルーのことを聞きたいな、アフィーも連れて」
お菓子を食べていたスクルドはワクワクしながら答えてきてくれた。
目がとても明るい。
それだけ希望になるのかと聞きたいがまぁ良いかと思った。
「確かにそれは気になるが少なくともアフィーは黙らせろよ」
少し希望が湧いた。
確かにフェークとソルーの件はかなり気になる内容だ。
正直クリートより学校に行きにくそうなのはヴェルだ。
この休みの期間で自堕落な生活の喜びを知ってしまった。
今もカチャカチャとコントローラーを動かしている。
「ヴェル、学校行けるか?今日は早いところ寝ろよ」
「大丈夫だ貴様、さすがに早く寝る」
「ならいいのだがな」
なんとなくだがこれは明日学校行けなくなりそうなオーラが出ている感じがする。
クリートは連日の疲れや明日からの学校のために早く寝ることにした。
「もう寝るよ、母さん、父さんはどこに行ったの」
「父さんなら確かコテージで寝てるはず」
「そうか、あれ!仕事は!?」
「何か当分休みを貰ったらしくてね、たまには家族旅行とかしたいなぁ」
「母さんは楽観的だなぁ」
そう言うとクリートは部屋に入りふかふかのベッドに寝転がった。
まさかの告白に目が冴えてしまったが寝不足は嫌なので眠たくないが早めにベッドに行くことにした。
どのみち数分もしたら眠たくなるだろう。
予想通り直ぐに寝れた。
また騒がしい日常に戻るのを少し喜びに感じている自分がある。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




