夢が無くても
リボルバーの銃身が揺らぐ。
痛みのせいかは全く分からない。
フレド自身は緊張だと捉えている。
「おいおいおい、銃身が全く合わさなってないな」
「はぁはぁはぁ、こっちはあんたみたいにお遊びで戦ってる人間では無いからな、終わらせてもらう」
フレドはそう言うとリボルバーを放った。
しかしリボルバーの弾は銃身の震えのせいで弾は明後日の方へ飛んでいってしまった。
その様子にライアは笑いながら剣を肩に担ぎフレドの方へ歩いてくる。
首を凝っていないのにも関わらず回しながら歩いてきている。
「さぁ、そこまでしてやりたいのはそれだけか」
「ははは、さぁな」
そうフレドは半笑いな声で答える。
その様子にライアはフレドが策を見出しているのに気づいたらしく歩みを止めた。
さっきまでの余裕をこいていた様子から一変して急に冷静さを体に身に纏う。
「何か……あるのか」
「この瞬間を待ってたんだよ!」
そう言うとフレドはエンドスカパの力を使った。
エンドスカパの変身体に変わるとフレドはライアを剣で斬り飛ばす。
ジャキーン!
ライアの体がおもむろに吹き飛ぶとフレドは立ち上がる。
「さぁそろそろ形成逆転の時間なようだな」
「そうか、俺はこの近くの動きが全て見える。お前の動き等予測するなんて造作もない」
そうライアが答えると剣を使い立つ。
両者ともダメージのせいかフラフラだ。
それでもフレドはライアに剣を突き立て威嚇をする。
「……来い」
そう言うとライアは本能を剥き出した獣のように襲ってきた。
さっきまでの少し余裕そうな戦い方から余裕や予測など何も出来なくなるような戦い方に本性を変える。
ジャキ!
ジャキ!
ジャキ!
ライアの斬撃はかなり大雑把かつ雑になってしまった。
きっと今まで実力の高さを鼻にかけ天狗になっていたライアが初めて負けを知りそうになる。
焦るのは無理は無い。
しかしその雑さが逆にフレドに対して隙を作ることになる。
ライアの雑な斬撃を避けその時にできた大きな時間の合間にフレドは斬りこんだ。
フレドはそうして徐々にライアを痛めつけた。
そのせいかライアの攻撃速度もも徐々に落ちてきていく。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
徐々に声が小さくなりライアの衰弱っぷりを見せる。
ついに攻撃が止みライアはその場に生気を無くしたような倒れ方で地面に顔をつけた。
「はぁはぁはぁはぁ、これで、終わったのか、ラルーさん!」
フレドは独り言を呟きラルーの元へ歩いた。
体力等はほとんどなく足を引きづる様な形で歩く。
(生きててくれよ……というか生きててくれ)
そう心の中で思いながらフレドは歩く、しかしひとつ違和感がある。
後ろから何かを感じる。
しかし後ろを振り向いた時にはもう既に遅かった。
「がぁっ!」
「ははは!後ろからの攻撃を備えない時点でお前はその程度だ」
ライアはまだ生きていたらしい。
剣を振るいフレドを斬り飛ばした。
その斬撃の衝撃でフレドは変身が解除され体から血が流れてきた。
「はぁはぁはぁ、き、汚ぇな!No.2の名も落ちたものだな!」
「ふふふ、それよりお前はまずひとつ自分の違和感を感じろ」
「!?」
フレドはライアに言われた通り体を見ると血が流れている。
しかし何かが違う。
フレドはその血を見た時顔が固まった。
絶句の方が正しいだろう。
呼吸すら忘れるほどの衝撃だ。
「お、俺の体は……どうしたんだ」
目の焦点が合わない。
周りが見えなくなるぐらいの恐怖と驚きだ。
「ち、血が!血が!」
フレドの血は紫色になっていた。
人間では無いなにかに変わる、その底なしの恐怖がフレドの体を包むように纏う。
「ど、どうした、ははは、なぁこれは悪い夢なんかじゃ」
「そうか……俺はお前がもう人間では無い何かとしか見ない」
「ありゃりゃ、ははは」
もうフレドはもう自暴自棄に近い何かを感じていた。
しかしフレドはそれでも逆境となりこの状況の燃える火種となる。
「俺はもう人間では無いのだろ、正直今の俺には夢なんか無い」
「何を言ってるんだ、馬鹿かテメェは」
「でもやっぱり体から分かるんだよ、何やるべきかなんですぐ、それが今目の前で起きていることだっていうことぐらい」
そう言うとフレドは走り出しあるものを拾った。
「逃げるのか?あまちゃんだな」
「誰が逃げるって言ったんだ?これを拾っただけだ!」
そう言われるとフレドはあるものを腰に巻く。
拾ったのはモージのバックルだ。
「あぁ俺はまだやるべき事がある、変身」
フレドはバックルにリモコンを差し込むと銀色が眩しい変身体に姿を変えた。
その姿のままフレドは走り出す。
アパッチリボルバーを取りメリケンサック状態にするとライアにパンチを当てた。
ライアは以外だったのか防御を完全に忘れている。
そのためちゃんとダメージを受けて倒れた。
「ちゃんとダメージを受けたんだな……」
そうフレドはライアの前に立ち話した。
ライアにとっては凄い屈辱だろう。
「ははは、面白いなぁ、お前はな、ならこれはどうだ」
そう言うとライアは何かを飛ばした。
しかし何かと言うのは全て理解出来ている。
メリケンサック状態からナイフモードに変え飛ばしたものを切り落とす。
「全て見えてるんだよ」
「そうか、ならこれは読めたのか」
そう言うとライアはフレドの背中を思いっきり斬った。
しかしキメラになったせいかあまり痛みを感じない。
だがその時の反動で転けてしまったのが運のツキだった。
「これで終わりだー!」
きっと柄じゃないセリフをライアが喋ると剣を突き刺すように振り下ろした。
さすがのキメラ体とは言えども確実に死に繋がる。
(し、しまった!ゆ、油断したせいで!)
覚悟を本気で決めた。
もうダメだ、しかし事態は別のベクトルで最悪な展開に向かった。
ぐっちゅ!
肉を無理やり攻撃する時の気持ちの悪い音がフレドの耳にこべりつくように聞こえたがその後の光景の方がきっと忘れらないであろう。
目の前で仲間の……
「う、うん、ら、ラルーさん!ラルー……さん」
目の前にラルーが居る。
それに気づいた時は安心があったが体をよく見るとその安心が絶望に早変わりした。
「い、今の、うちよ……決めて!」
今にも消えそうな声で話す。
無理は無い。
本当なら死ぬぐらいのダメージだからだ。
ラルーの体に剣が突き刺さっていたのだ。
さっきの攻撃をラルーが庇う形で受けてしまった。
(俺のせいで……俺のせいで)
とにかく自分を卑下した。
しかしラルーの必死の行動を無下にできない。
そこで結ばれた結論はただただ前を向くことだけだ。
「うわぁぁぁぁ!」
全ての絶望を払うように叫んだ。
まずフレドはメリケンサックモードでライアを思いっきり殴る。
その衝撃でライアは地面に転がってしまった。
その転がりがライアの敗因になるであろう大きな隙に繋がった。
「ライア!終わりだー!」
フレドは全てを終わらせる覚悟でメリケンサックモードからナイフモードに変更させるとライアに向かい走り出した。
ライアは立ち上がるもさっきまでの攻撃のせいでフラフラなため動けない。
そのため変な抵抗ができずフレドのなされるままに攻撃された。
ライアの腰にあるメーターベルト目掛けて。
パリーン!
何か割れた音が聞こえる。
フレドは前を見るとアパッチリボルバーのナイフの先端がライアのメーターベルトに刺さっていた。
「がはっ!がっ、がぁ!」
ライアは声にならない不気味な声を上げるとまるで物のように地面にその体を倒す。
倒れた影響でライアの変身も解かれた、体からは血が大量に溢れ出ている。
(勝ったのか……俺が……)
勝った喜びもつかの間ラルーを見ると満足そうな顔で目を閉じていた。
その顔は今の土砂降りの天気と見事に対比している。
もしかするとその天気は今のフレドの心境を表しているのかもしれない。
フレドはラルーの死体を寝かせるように置きその場から去ることにした。
(ラルーさん、ありがとうございます……ラルーさんが残した夢はきっとクリートが叶えたでしょう……だからゆっくり眠ってください)
そう声には出さないが静かにただ静かにその言葉を天に飛ばすように言った。
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ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




