本当の姿
「……ごめん、ソルー」
目を覚まし出た言葉はこれだ。
姿は変身解除後となっている。
ソルーの膝枕の上に寝ていたのにはまだ理解するのが追いついていない。
この事件の最初からずっと持っていた罪をここで吐き出す。
「……別に私は怒ってなどいないです」
「でも俺は!……お前の心を弄んだ!それだけで人してクズに等しい」
フェークは急いで膝枕から起き上がり言った。
これは嘘では無い、フェーク自身の罪の意思だ。
「私は全て知っていたのです、あなたが私に撃ったのは赤いインクが落ちる麻酔弾というのも知ってました!」
そう全てバレていたのだ。
フェークが嘘をついて2人を守るためにとった苦肉の策だということが。
「バレていたのか……」
「そうだったの!」
「お前は1回黙れ!」
フェークのツッコミがフレドに響く。
キレッキレなのが少し面白くてずるい。
「後半くらいから正直起きてましたけどね……あなたがノルンさんあたりと戦い始めたぐらいから」
「……」
「わざわざ悪役になって何がしたかったのです」
「俺は……お前に幸せになって欲しかったんだ」
「……」
まさかの告白にソルーは絶句している。
あの告白はフェークにとっては嫌だったのか、そんな悪い疑念が頭に浮かび上がるが次のフェークのセリフがその心を晴らしてくれた。
「俺が居なくてもお前は友達が増えたじゃないか……俺の本当の目標はシスを救うことだったんだ」
「……違います」
「な、何がだ」
「あなたが居なくなれば私は幸せなんかありません!」
ソルーの迫真の訴えでフェークは全身がピクっと震えた。
その叫びにはソルーの全ての思いが詰まっているのだろう。
フェークに口を開ける間もなくソルーは話し出す。
「私の人生はフェーク君無しではもうどうにもなりません」
「……でも……」
「でももありません!私は世界でただあなたしか好きになれない……もうフェーク君以外とは好きになれません」
「……」
「これらに関してはただのわがままですが、それくらい私はあなたを愛しているのです!」
ソルーの言葉でかなり心が揺らいできている。
確かにソルーにやった事は償いはしないといけない、でもこの場から去るとまた大きな罪を背負うことになる。
その時ソルーがフェークに助け舟を出してくれた。
これを逃すともう本当の気持ちが伝えられない。
「フェーク君、本当のあなたは何がしたいです?」
「俺は……俺は……俺は……お前と一緒に過ごしたい、シスと一緒に」
「お兄……」
フェークはそう言うとソルーとシスを両手で抱きしめた。
その胸にきた温かさはきっと今まで探していた物より大きくそして落ち着くものだ。
「ごめん……これからも俺と一緒に過ごしてください!」
フェークの泣き声が地下駐車場を反響させる。
きっと今まで溜め込んでいた何かがプツンと音を立てて決壊したのだろう。
(俺は、幸せな人間だ)
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フェークは正気に戻ったのか
大きく怪我をした目をフレドから貰った包帯で治療した。
その様子にいてもたってもいられないソルーは講義するが
「ごめん……でもこれは決着つけないといけないんだ」
「でも……これ以上フェーク君を失いたくは……」
「ならこれを着させてあげる」
フェークはそう言うと自身の着ている指定ブレザーをソルーの肩に被せた。
その様子にまだ何があったか分からずキョドっているソルーにフェークは
「シス、ソルー……必ず生き残るよ……それだけは約束する」
「お兄……私を助けたのに死なないでね、聞きたいことたくさんあるし」
「もちろん生きてやるつもりよ!」
「フェーク君……必ず……ですよ」
「あぁ、死ぬもんか」
そう言うとフレドとフェークは地下駐車場を出て行った。
出て行くその後ろ姿は儚げさを感じる。
もう何故か見れないような気がしていてもたってもいられないが今は信じるしか出来ない。
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早めのオマケ
フェーク「なぁシギュンの死体ってどうなったんだ?」
フレド「それがさ死体がないんだよ……確かに死んだは 確認したけど」
フェーク「まさかだと思うけどキメラか?」
フレド「まぁ今はそう信じるしかないよな」
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「う、うわぁぁぁぁぁあ!」
クリートの体はどんどん変わりつつある。
人間では無い生命体。
キメラに。
自分の1番の敵であるはずのキメラになるのは皮肉なものだ。
「俺の体が!俺の……俺の体がぁぁぁ!」
「もうお前も俺と同じキメラなんだよ!」
夢なら覚めて欲しいそんな気分で胸がいっぱいだ。
その様子にご機嫌な声でロキは提案をしてきた。
「そこでひとつ提案をしよう……俺たちと同じキメラの仲間になるか?」
「……」
「ひとつ約束する君の友人達には手を出さない。これなら悪いことないじゃないか!」
「……」
だが考えている間にもクリートのキメラ化は進んできている。
もう後に更に退けなくなった。
覚悟を強く決めるしかない。
「断る!」
「……何故だ!」
「俺は……人間を愛する!守りたいんだ……俺が今まで戦えたのは人類を守る夢だったんだ」
そう言うとクリートはキメラの姿へ変貌した。
見た目も皮肉なものだ。
クリートが過去にトラウマになっているあの事件の犯人のキメラ体なのだ。
さすがにまんまとは言えないがほとんどの見た目があの時のキメラと一緒だ。
なぜこの姿なのかと言うと……この事は後々わかるだろう
「うぉぉぉぉ!」
そう言うとクリートはロキに走り出した。
ロキはクリートにパンチを当て同じくクリートもだ。
2人は同等の攻撃力らしくダメージもほとんど同等だ。
「がはっ!」
「ごふっ!」
2人の痛みで漏れた声が体育館内を包む。
クリートとロキはステゴロの戦いを始めた。
どん
どん
どん
鈍い殴った時の音が沢山聞える。
体育館内を永遠に反響させていく。
2人はもう何喋らない。
実力や性能がほとんど互角なため喋る余裕すらないためだから。
どちらも劣勢優勢などの概念は何処吹く風みたいなものだ。
お互いの殴り合いも終止符が打とうとされた時最悪な人と出会ってしまった。
「き、キメラが2体!?」
「まさかな……あれ!?」
2人からしたら謎のキメラの腕にクリートの腕時計型バックルが付いている。
その時フェークは全てが理解出来た。
「フレド……俺わかったよ」
「フェーク?」
「あのキメラはクリートだ!」
そう言われた時クリートは全身からビクッとした。
その隙が命取りとなり思いっきり攻撃を加えられた。
火力が高くそして正確なのでちゃんとダメージが受ける。
「ぐはぁ!ぐ、ぐぅ!」
クリートは床に落ちるとキメラ体が解除された。
その時視線を感じる。
視線の方をむくとフェークとフレドが居る。
(ここまで過ごせたのに……俺は……俺は……俺はぁぁぁぁぁ!)
自分の油断の気持ちに激しい嫌悪感に陥る。
もう挽回なんて出来ない。
今できることはロキを倒すことのみ。
「ロキ……俺本当に負けれない理由が生まれたよ……自分勝手だが」
「ははは!やってみな」
クリートは再度スピードモードに変身しようとする。
ロキもその行動のためにもキメラ体を解除し自身の変身体系に移動した。
(俺は負けられない!)
フレドもフェークもその緊張を肌で感じる。




