未来の始まり(中編)
「うわぁぁぁ!」
クリートはロキに向かい走った。
何もかもがおかしくなっていたためかクリートはとても隙だらけなものだ。
しかし現実は厳しいものだ。
「ふん!」
「ぐわぁ!」
パンチひとつでかなり吹き飛ばされてしまった。
その影響か変身も解除され学ランにドロドロになった地面が付く。
ロキはその様子を振り向きもせず校舎の方へ歩き出した。
「ま、待て!ま、待て・・・」
立ち上がろうとするが立ち上がる体力など無いに等しいのか声を出しそのまままた倒れてしまった。
クリートはロキの後ろ姿を見るしかできない敗北感、目の前で大切な人を失った悔しさ。
その全てをクリートの体が襲う。
「う、うわぁぁぁ!」
叫びドロドロになった地面を叩くが気持ち悪い感覚が手に襲うだけだった。
殴る度にぐちゃぐちゃとした音が聞こえ不快だ。
「く、クリート・・・少し来てくれないか」
今にも空に飛んでいきそうな小さないつものバルドルからは考えれない声がクリートに聞こえた。
その声を聞くと急いでバルドルの元に行く。
血の量、怪我の具合的にもう助からない。
それはきっとバルドル自身もわかっているだろう。
バルドルは自身の腕時計型バックルを取りクリートに託した。
「バルドルさん!こ、これは!?」
「ふ、これはお前の・・・バックルにリンクすることが出来る・・・使わないかもしれないが・・・持っておいてくれ・・・元々渡すつもりだったから・・・渡せてよかったよ」
「バルドルさん!目を、目を覚ましてください!」
「・・・最後にファンとして応援していた人の腕の中で死ねるのは・・・幸福だ」
その一言が終わるとバルドルの目は静かに閉じっていった。
静かにシャッターを下ろすように繊細かつゆっくりに。
バルドルの手を硬く握っていたクリートはどんどんバルドルの手から力が無くなっているのに気づき覚悟を決めた。
(グダグダしている訳には行けない・・・もう覚悟を決めるしかないのか)
覚悟を決めるとクリートは腕に抱いていたバルドルの死体をゆっくり繊細に床に置いた。
バルドルの死体を見てさらに覚悟は強まる一方だ。
「バルドルさん・・・」
バルドルから託された腕時計型バックルを何もしていない方の腕に付ける。
互換性云々は分からないことだが今はお守り程度に持っていくことに決めた。
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雨は止まない。
しかしクリートの心は変わりつつある。
雨は逆に強まる一方だ。
クリートの制服をどんどん濡らしていくがそんな事気にしている間はない。
クリートが向かうのはロキが行ったであろう場所。
体育館だ。
体育館なら仮に敵が来たとしても周りが見やすいので隠れた所から攻撃して倒すことが出来たりと割と良いところが多い。
裏口から入るとバレずに行けるがすぐに向かっているため今裏口から向かっても良いことは無いだろう。
そのため走って正面玄関から向かうことにしている。
近道等を使うとあっという間に体育館へ着いた。
少なくともショートカットをしたので今ロキは準備中だと言うのは目に見えてわかる。
そう心に染み込ませ体育館のドアを握る。
とても重たい。
「ふぅー」
少し心を落ち着かせるための呼吸をするともう一度ドアを押した。
ドアを押すといつも見かけるとても広大な建物だ。
目の前には準備中なのかステージの上にたっているロキが居た。
(もうここしかない、この間に詰めるしか)
そう考えるとロキも同じことを理解したのかクリートの方へ走り出してきた。
「変身!」
2人の変身タイミングは殆ど同時且つ攻撃前だ。
「おらァ!」
「ふん!」
2人のパンチが同時に2人の体にヒットした。
火力は圧倒的にロキの方が高い。
そのせいかクリートは壁に吹っ飛ばされてしまった。
ロキは普通な感じだ。
立ち上がる時ロキの方を見るとその立ち姿に勝者の余裕を既に感じさせてくる。
堂々な立ち方はクリートの自信を削ぐような感じだ。
だがすぐに立ち上がりまた向かう。
今度はバルドルから託されたバックルのボタンを押した。
ロキもクリートと同じく走って向かう。
「オラァ!」
「こいつ!」
殴る寸前に姿や感覚が変わるのがクリートに感じた。
殴ると前より感覚が若干というかかなり強くなったのを身で理解した。
だがロキの攻撃はかなり効くが飛ばされるほどでは無い。
「はぁはぁはぁ・・・こ、この姿は」
クリートは自分の見える範囲の自分の姿が変わっているのが理解した。
バルドルのアーマーが付いている感じだ。
装甲や色々なものが付けられている。
その様子にロキも激しく驚いているようだ。
「お前これで何度目だ!それでも俺には敵わない」
「バルドルの想いを持って・・・負ける訳には行かないんだ!街の人を身内を守りたい!」
「そんなものを守って何になる!自分の身は自分で守らせろ!」
そういうとロキは片手剣を取り出しまた走り出した。
クリートはそれに対応すべくソードフォームに変えた。
ソードフォームに変わるとそれに合わせるかのようにバルドルのアーマーも変化している。
鎧のようなアーマーも大きく変化し、ソードフォーム用の剣も原型がないくらい変わった。
ロキの斬撃を防ぎロキが防ぐ間もなくクリートは斬撃を当てた。
「ぐっ!こいつ!やる!?」
このアーマーのせいもあるがクリートの持つアーマーや性能面ではどうにもならない戦闘能力が格段に上昇している。
「俺もずっと負けてばっかではない!力無き物の盾になるためにも!俺は戦う!」
クリートは剣を両手で持ち怯んでいるロキに斬撃を加えた。
ロキも対応しようとしていたが中々対応できずに見当違いなところを斬ったりしている。
ロキはそれらの攻撃のせいで体育館の硬い床に転がって倒れた。
「ぐっ!クリート!?」
「これでテロも全てが終わる!」
そう思い剣を振ろうとしたが体から激しい痛みが襲ってきた。
「う、うぐ!ぐぅぅぅ!がぁぁぁぁぁ!」
剣を落としてしまい体を丸めるように痛みを耐えているがとても痛い。
変身が解除されるかと思いきやメーターベルトから「あの時の物」が浮かび上がってきている。
その「あの時の物」を見た時バルドルはトラウマが蘇ってきた。
そう「あの時の物」というものはロキとの初戦の時クリートが使った苦肉の策である「オーガフォーム」へなる切符であるAI兵のバックルだ。
AI兵のバックルは壊れても自己修復機能等がありある程度元に戻る性質がある。
そのため真っ二つに斬らても治っていたのだ。
そして人間がAI兵のバックルを使うと体にバックルが染み込む。
何故かと言うとAI兵が常に変身する度にバックルを装着する手間を無くすためだからだ。
そこからクリートは体にまだ残っていたのだ。
「う、うぐ、ぐぅぅぅ、うわぁぁぁ!」
クリートの姿がまた変化している。
オーガフォームに変身後ガントレットが装着された。
体から激しい痛みが襲う。
しかし今回は意識が飛んでいない。
遂にオーガフォームに対応できたのだ。
「ふぅーさぁここからが、戦いだ!」
ロキも覚悟を決めたのか剣を持ち立ち上がった。
決戦になる
これで本当に最後だ。
そう思うと力が自然と湧いて出てくる。
それはきっとロキも一緒なのだろう。
ブックマーク、ポイント等やって欲しいな|ω・)




