第85話 復活配信
体操服姿で、ダンジョンの中に入った。1〜10階層まではダンジョン攻略を目指す探索者が多く、僕に対する視線を感じて恥ずかしかった。
僕は美緒さんの後ろに隠れながら、30階層にいるドラゴンを目指した。
「柴犬さん、別に大丈夫ですよ。柴犬さんは配信者として有名ですし」
「そ、それとこれとは、その……この姿は、恥ずかしいので……」
「柴ちゃん、自信持っていいんだよ」
と励まされながら、なんとか30階層の手前までたどり着いた。
配信開始の時間までに到着できたので、それまでの2時間ほどを休憩にあてていた。
休憩中、別の探索者がドラゴンに挑んでいたが、30分ほど戦って撤退していった。
その探索者の肩越しにドローンカメラが飛んでいたので、同じく配信者なのだろうと思いながら、朝作ってきたご飯と、タッパーに入れてきた汁だくのお肉を使って牛丼にし、それを食べながらぼんやりしていた。
「柴犬さん、そろそろ行きますか?」
「よっし」
「柴ちゃん、頑張ろ〜!」
僕はそう言いながらハンマーを手に取り、配信を開始した。
「こんにち〜、久しぶりにダンジョンで配信をしたいと思いま〜す!」
『柴犬さん!久しぶり!』
『え、体操服……!?』
『かわゆす!』
『その格好、最高すぎるんだけど!?』
『もふもふの太もも見えた気がする……天国』
『体操服+獣人=最強。異論は認めない』
『お願いです、準備運動からお願いします!!』
『犬耳が体操服からぴょこってしてるの反則でしょ……』
『お尻のドアップが見たい!!』
『これは…伝説回の予感しかしない』
「じゃあ、今からドラゴンを討伐してみようと思います!」
『うぇ!?ドラゴン?』
『いきなり!?』
と、驚いたコメントが多くあった。視聴者を驚かせたかった僕は、満足だった。
「柴ちゃん!」
「うん!」
ドラゴンのいる階層に足を踏み入れるや否や、ドラゴンがブレスを吐く体勢に入った。美緒さんとアリスさんは僕の後ろに隠れた。僕はハンマーを回転させて、ドラゴンが吐く炎のブレスを拡散させ、無効化した。
「うりゃあ!」
アリスさんはリサイクルショップで買った鋭い爪をつけて、ドラゴンの鱗に突き刺したが、固く弾かれた。
「うにゃーーーかった! もう一撃!!」
アリスさんは同じところに攻撃し、鱗を割った。
「グガァア!」
ドラゴンはアリスさんに向かって叩き潰そうとしてきたが、軽々とアリスさんが避けた。
大きな攻撃だったので、その隙に美緒さんが、サメの大きな尻尾に装着した鉄の装備で攻撃した。
「はぁあああ!」
「グァア!」
頭に直撃し、ドラゴンはよろけた。
「うりゃああ!」
僕もみんなに続いて、ドラゴンのお腹の下に入り込み、ハンマーを思いっきり叩き上げた。
「グァアアアアアアア!」
「やった、効いてる!」
「柴犬さん、ナイスです!」
「あの、変異種より弱い感じがする」
僕たちはそのまま立て続けにドラゴンへ攻撃を仕掛け、ついに倒すことができた。
「勝った!」
「意外に余裕でしたね」
「だね〜。僕もかなり苦戦するかもって思ってたけど、装備も変えたし、強くなったから……ドラゴン、ザコザコだったよ〜」
ドラゴンとの戦いが終わり、スマホを取り出してコメントを読むことにした。
「え〜、ちょっと、復活配信ということで、みんなに驚いてもらうためにドラゴンを討伐してみました〜」
『ビックリしたよ!』
『ダンジョンで配信とか、目撃情報あったけど、いきなりドラゴン討伐は驚いた』
「えへへ〜、ビックリしたか〜?」
僕はニヤニヤしながらカメラに近づき、耳をぴこぴこと動かして見せた。
『お、お前……やりやがったな……』
『急に煽ってきやがる……好き』
『くっ、メスガキムーブきたぞ!!』
『こっちが主導権握ってたはずなのに……』
『舌ぺろしてきそうな顔してる〜〜〜!』
『その「えへへ〜」が効くんだよ……』
「え〜? そんなにドキドキしちゃったの? まさか、ドラゴンより僕にドキドキしてた〜?」
体操服の裾をちょっとだけつまんで、ぴらっと揺らして見せた。
『うわああああ!!』
『ちょっと!それ反則!!』
『そんな子にからかわれるの、キライじゃない……』
『もっと煽ってくださいお願いします』
『ついに煽り柴犬が完成してしまったか』
『誰か…この柴犬を止めてくれ…俺じゃ無理だ』
こんなに反応してくれるので、ちょっとだけ、視聴者さんを煽ってみた。
「へえ〜柴犬さん、悪い子ですね〜。ドラゴンに勝ったからって、ちょっと調子に乗っちゃダメですよ〜」
「そうだよ〜柴ちゃん〜」
なぜかアリスさんと美緒さんが、ぐっと距離を詰めてきた。
『耳いじり→しっぽ責め→この後はお察しください…』
『あ〜〜〜美緒さんの声が妙に色っぽいのずるい』
『柴犬さん、完全に弄ばれてる顔してて草』
『その体操服、どんどん汗で肌に張り付いてない!?』
『いやもうこれ、わからせプレイじゃん』
『メスガキ柴犬、調子に乗った報いを受けてるの尊い』
『視界に映ってる手がえっちすぎるって!!』
『いやもう言葉にできない』
『ちょっと待ってくれ、有料級では?』
『柴犬さんの耳、さっきよりピンって立ってない!?』
『この配信、全年齢じゃないでしょ?』
『誰かこの空気を止めてくれ(もっとやれ)』
「はぁ、はぁ、はぁ……じゃあ、配信終わるね。僕はこれからも、ダンジョン配信とか、雑談配信とかしていこうと思いま〜す。復活配信でした〜」
「バイバイ〜」
「またね〜」




