第58話 ミノタウロス
無事に表彰式も終わり、帰宅すると、玄関の前にハンマーが置かれていた。
田舎とはいえ、盗まれる心配があるかもしれないが、これを運び出すにはクレーン車でも使わなければならないほどの代物だ。
地下室から持ち出すのも一苦労だっただろう.....そんなハンマーを、僕は庭まで運び、思いきりブンブンと振ってみた。
動きは大ぶりになってしまうが、当たれば絶対に、あのミノタウロスにもダメージを与えられるはずだ。
「ふっふふ〜」
調子に乗って振り回していると、朝、洗濯物として干していた服が風に飛ばされ、地面に落ちてしまった。
「あっ」
僕は慌てて服の土を払い、乾いていたのでそのまま家の中に取り込んだ。そして、早速加工した魔石を身につけ、ミノタウロスに挑むことにした。
「ブッホォオオ!!」
ミノタウロスが叫び、辺りに響き渡る。
僕はハンマーを構え、一歩踏み込む。狙うは頭。当たれば、確実に一撃で倒せる。
「ブッホオオオオオオオ!!」
ミノタウロスが大きな足音を立てて突進し、斧を振り下ろした。
「うりゃあああ!!」
僕も全力でハンマーを振り上げる。ミノタウロスの振り下ろした斧と、僕のハンマーが激突する。
ガァンッ!!
衝撃が全身を駆け抜け、足元の地面がひび割れる。砂埃が舞い上がった。
「ふんにゃぁあああ!!」
「ブフォ!?」
ミノタウロスの巨体がぐらつく。ほんのわずかだが、僕のほうが力で押し勝っていた。ミノタウロスが油断していたせいだろう。弾かれた斧は回転しながら宙を舞い、天井へ突き刺さる。
武器を失ったミノタウロスが困惑した表情を浮かべる。その隙を逃さず、僕は一気に距離を詰めた。
「うりゃああ!!」
全力で踏み込み、人間で言う弁慶の泣き所めがけてハンマーを振り下ろす。
「グォオオオオ!!」
骨の軋む音とともに、ミノタウロスがのけぞる。巨大な体がぐらつき、痛みのあまり叫んでいる。
だが、すぐに背中にある武器を引き抜いた。
「え?」
さっき弾き飛ばした斧より小さいが、素早く振るうには十分なサイズ。
「グォオオオオ!!」
雄叫びとともに、ミノタウロスが襲いかってきた。避ける間もなく、二本の斧が僕に迫る。ラッシュだ。
「うりゃあああ!!」
僕も負けじと、全力でハンマーを振り回す。
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
斧とハンマーがぶつかり合い、火花が散る。
ミノタウロスは先ほどよりも倍以上の速さで斧を振るい、僕は必死に防ぐ。だが、僕の重たいハンマーを全力で振るいなんとか防ぎきった。
「ブフォ、ブフォ、ブフォ....」
「ハァ、ハァ、ハァ.....」
どちらも疲れ切っていた。しかし、ミノタウロスは魔物だ。人間とは違い、体力だけはすぐに回復する。
「ブフォォオオ!!」
「ハァ、ハァ、ハァ....」
このままでは、かわしきれない。
首にかけている勾玉を外し、一瞬で柴犬の姿へと変わる。
ミノタウロスの斧が、僕の小さな体をかすめる。だが、そのまま素早くラッシュをかわし、息を切らしながら距離を取った。
そして再び勾玉を身につけ、獣人の姿に戻るった。ハンマーを回収し、一気にダンジョンの出口へと走った。
「ハァ、ハァ、ハァ.....」
まさか、あんな小さな斧も使うなんて....あの大きな武器と素手だけじゃ無いんだ。それに、まだ手が痺れている.....




