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和やかな朝

 次の日の朝、昇降口を出ようとするといつものように桜が待っていた。

 眠そうにあくびをしていたが、俺の顔を見た瞬間笑顔になった。



「おはよう、桜」


「空先輩、おはようございます」


「一体いつから待ってたんだよ」


「あたしも今さっき来たばかりです」


「本当?」



 さっきあくびをしていたし、どう見たって俺のことを待ち伏せしているようにしか見えない。



「本当です」


「さっき眠そうだったけど」


「昨日ちょっと寝れなかったんです」


「寝れなかった?」



 桜にしては珍しい。いつもぐっすり寝ているのに、昨日は眠れていないなんて。



「何か悩みでもあるの?」


「特にないですけど」


「けど?」


「‥‥‥先輩とパーティー組めたのがうれしくて」


「すまん、俺が悪かった」



 これ以上この話を聞くのは恥ずかしい。

 聞いてはいけないことを聞いてしまったおかげで、変な雰囲気になる。



「あっ、そういえば先輩に伝言があります」


「伝言?」



 いきなりなんだ? 伝言って?



「今日由姫ちゃんから何か話があったら、ちゃんと聞いてあげてください」


「由姫から?」



 由姫から俺に話って何だ? 由姫からの話でいうと、果たし状としか思えない。



「待て、それは嫌な予感しかしないんだけど」


「大丈夫ですよ。悪い話じゃないはずです」



 そう言われると思わず身構えてしまう。

 果たし状じゃないとすると、一体何の話だ?



「それよりも早く朝ごはんを食べましょう」


「そうだな。もう結構列には人が並んでるから、早く行こう」



 細かいことは抜きにして、今は朝食を食べるのが先決だ。

 ダイナテントで今日の朝食を受け取り、椅子に座る。



「あれ? 桜もここでいいの?」


「はい、何か問題がありますか?」


「問題は別にないけど、クラスメイト達と一緒に食べなくていいの?」


「朝は別々に食べるって話してるので大丈夫です」


「そうか」



 桜がこういってるなら別にいいか。



「なんでそう思うんですか?」


「昨日の夜俺達のテーブルで食べてたから。今日の朝は代わりにあっちのテーブルに行くのかと思っただけだ」



 昨日は杉田達の約束を破って俺達のテーブルで一緒に食べていたからな。

 昨日の夜の代わりに、今日の朝は杉田達と食べると思っていた。



「それは大丈夫です。昨日の夜は一応クラスの人達と食べてましたから。約束は破ってません」


「一応ね」



 確かに由姫や梓は桜クラスメイトだが、理由が無理矢理過ぎじゃないか?

 後で杉田達が何も言わなければいいけど。



「それに‥‥‥」


「それに?」


「今日はあたしと先輩のパーティー結成翌日の朝ですよ。一緒にいない方がおかしいです」



 なるほど、これが本音か。つまり桜は同じパーティーなのに、一緒に行動しないなんてありえないっていいたいんだろう。

 だからこうして俺の隣で朝食を取っているんだ。



「おはようございます、空先輩、桜ちゃん」


「おはよう」


「おはよう、梓ちゃん」


「ふふふふふ、先輩と桜は相変わらず仲むつまじいですね」



 やめろ、梓。なんでそこで火にガソリンを注ぐようなことを言うんだ。

 桜が調子にのるだろ。



「えぇ~~そんなことないですよ」



 ほら、早速調子にのった。

 ただでさえ桜は勘違いしやすいのに、これで余計に絡まれる。



「空先輩、やっぱりあたし達ってそう見えるんですか?」


「さぁな」



 知らん。ただ梓がこの状況を面白がっていることはわかる。悠里と同じで悪い性格をしているな。

 桜の前に座り、俺達2人のことをニヤニヤとした表情で見ていた。



「珍しいな、先輩達の方が早いとは」


「由姫」


「おはよう、由姫ちゃん」



 寝ぼけ眼をこすりながら、由姫も俺達の前に現れた。由姫にしては珍しく眠そうにしている。



「どうしたんだ? 昨日は眠れなかったのか?」


「いや、その逆でよく眠れ過ぎて‥‥‥いや、なんでもない」



 なんだたんなる寝坊か。それなら別にいい。眠れないよりは。



「昨日も思ったけど、朝食の量多くないか?」


「何を言う? これは普通サイズだ」



 いや、どう見ても普通サイズじゃないだろ? 由姫の皿にのった朝食だけ、明らかに他の人よりも量が多い。

 俺のが普通サイズだとしたらその倍はあるんじゃないか?



「先輩、由姫ちゃんは育ち盛りですから」


「育ち盛り? 確かに桜よりも育っている所が‥‥‥ってててててて!? 悪かった!! 俺が全面的に悪かったから!! 脇をつねらないで!!」



 脇の筋肉をちぎれんばかりの力でつねってくるんだから性質が悪い。

 こうして反省している今でも脇をつねる力は増していく一方だ。



「失礼ですね。あたしはまだ発展途上です」


「さらっとセクハラをしてくるなんて、先輩は油断も隙もない人だな」



 別にセクハラをしたくてしたわけじゃない。これは売り言葉に買い言葉って奴だ。



「さすが先輩ですね。よっ、セクハラ大魔神」


「そんな称号はいらない」



 それにしても、由姫も梓も変わったな。

 由姫なんて最初は一緒に朝ごはんを食べるのも渋っていたのに、人は変わるものなのだな。



「あら? この場所は本当ににぎやかね」


「悠里?」


「いつの間に空は人気者になったの?」


「日向」



 今度は日向と悠里まで、俺の側にやってきた。

 二人はまるで微笑ましいものを見るような表情で、テーブルに座った。



「人気者? 嫌われ者の間違いじゃないか?」


「貴方がそう思うならいいわよ」



 どういうこと? さっきから俺は後輩達のおもちゃにされているんだけど?



「空も変わったね」


「俺は変わってない」



 俺は変わっていない。全て日向の勘違いだ。



「そう思ってるのは空だけだよ」


「そうか‥‥‥って!? 痛い痛い!! 脇がちぎれる!!」


「空先輩、さっきから他の人と話してますけど、あたしの話は終わってませんよ」


「聞いてる!! 聞いてるから!! だからその手を離してくれ!!」



 全く手を緩める気がない桜。その姿を見ながら、何故か俺の周りの人達は明るく笑っているのだった。


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