桜の追求
学校へ戻り由姫を悠里達の所へと送った後、昇降口へと向かう。
理由はいったって単純。夕食の時間なので、桜と一緒に列に並ぶ為だ。
「お疲れ様です」
「お疲れ、桜」
どうしたのだろう。やけに桜のテンションが低い。
俺を見ると、心配そうな表情を向けていた。
「空先輩達の班は大変だったようですね」
「まぁな」
あのウォールベアーに出会った時は正直死ぬかと思った。
思ったというより、実際は死にかけたのだが。
「桜はどこまでその話を聞いたんだ?」
「山でウォールベアーっていう凶暴なモンスターに襲われたって聞いています」
「そうか」
「さっきお父さん達リーダーの間で、そのことについての会議をしていたみたいです」
「会議ね」
おおかたあの山への出入りのことについての話だろう。
もしかするとあの山で狩りをすることが、今後出来なくなるかもしれない。
「由姫ちゃんも怪我をしていたみたいですから。そういえば先輩は大丈夫だったんですか?」
「俺? 悠里がいう分にはどこも以上はないらしい」
ウォールベアーの攻撃をしっかりと受けたにも関わらず、怪我は一切ないらしい。
悠里からどこも異常なしというお墨付きまでもらってしまった。
「ゴブリンキングの時といい、先輩って意外と頑丈なんですね」
「俺が頑丈ってよりは、悠里が作った薬の効果が凄いだけなんだけどな」
由姫も俺も悠里の回復薬のおかげで、大きな怪我が治ったと見たほうがいい。
あの回復薬は本当に万能だな。後は味さえ良ければ、申し分は無いのだけど。
「そういえば学校に戻って来た先輩達を見て思ったんですけど」
「何だ?」
「由姫ちゃんの様子がちょっと変でした」
「変? どこが??」
「雰囲気というか様子というか‥‥‥‥‥とにかく何か変でした」
「そんなに変だった?」
「変でした」
帰りの車の中でも一言も言葉を発しなかったし、学校についてからに至ってはまともに俺の顔すら見てくれなかった。
話しかけても無視されるし、戦い終わった後仲良くなったと思ったけど、一転して嫌われてるんじゃないかとさえ思った。
「桜がそういうなら、そうなんだろうな」
「ですから先輩、由姫ちゃんと何があったか話してください!!」
「何があったかって食い気味に来られても‥‥‥何もないけど?」
しいていえば、ウォールベアに襲われている所を助けられたって所か。
「本当に何もないんですか? 例えば、うっかり由姫ちゃんの胸を触っちゃったとか」
「そんなことあるわけないだろう!?」
桜は俺をラブコメ主人公か何かと勘違いしているんじゃないか?
そんな偶然は日向だけで充分だ。
「う~~ん、でもそうじゃなければ他に理由が見当たりませんね」
「当たり前だ。俺はむしろ恥ずかしい姿を見られたんだからな」
「恥ずかしい姿?」
「そうだ」
「どんな姿なんですか?」
「それは‥‥‥」
ボロボロの所を助けられた上、格好悪い姿を由姫には見られてしまった。
あの情けない姿を見られた話なんて出来るわけがない。特に桜には。
「それは‥‥‥‥‥何ですか?」
怖い。桜は笑顔で俺のことを見てるだけなんだが、こんなに怖いことがあっていいのか?
まるで悠里が日向に詰め寄っている時の様な、そんな威圧感が桜から感じられる。
「それは俺がボロボロになっている所で由姫が助けに来てくれて‥‥‥」
「由姫? 先輩、いつの間に由姫ちゃんのことを下の名前で呼び出したんですか?」
「それは‥‥‥」
「それは?」
どういいわけをしていいか悩む。素直に由姫がそう呼べって言われたからそうしてることを打ち明けた方がいいのか悩む。
「先輩? 何かやましいことでもあるんですか?」
「やましいことは1つもない」
くそ!! こうなったら素直に全部打ち明けた方が身の為か。
「ウォールベアーと戦い終わった後、由姫が‥‥‥」
「由姫ちゃんが?」
「由姫が‥‥‥そう呼べって」
全てを桜に離して、息を飲む俺。そして静かに判決を待つ。
いつまで経っても何も起きない。ゆっくりと目を開けると、桜はため息をついていた。
「桜?」
「なんだ。しっかり由姫ちゃんと仲良くなってるじゃないですか」
「なってる?」
「梓ちゃんといい由姫ちゃんといい、先輩のいい所に気づいてくれるのはうれしいんですが‥‥‥」
なにやら桜はぶつぶつと独り言を言っている。
突っ込んだ話を聞くのが怖すぎて、俺は何も言うことができない。
「桜さん?」
「まぁ、このことは後回しにしましょう。それよりもお腹がすきました。早くご飯に行きましょう」
桜に言われて、俺も隣を歩いていく。
夕食をもらおうとする間、桜がずっとぶつくさ言っているのが妙に気にかかるのだった。
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