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VSウォールベアー 由姫の笑顔

「先輩、無事か!?」


「何してるんだよ!!」



 さっきまで春斗さんに手当てされていただろう。

 現に今もボロボロの状態なのに、何でここにいる?



「私は先輩を助けに来たんだ」



 つばぜり合いを制し、ウォールベアーを突き飛ばす前野さん。



「強い」



 ウォールベアーが弱っているということを加味しても、自分の倍以上の大きさの敵を吹き飛ばすことは難しい。



「大丈夫か!?」



 ウォールベアーから離れ俺の側に来る前野さん。その手には緑の液体が入った小瓶があった。



「これは‥‥‥悠里特製の回復薬」



 何でこれを前野さんが持ってるんだ?

 さっき俺が渡した分は全部使っていただろう?



「これは以前桜からもらったものだ」


「桜から?」


「いざという時に使ってくれと言われて受け取ったものだ。正直どんなものかわからなかったが、さっき先輩が私に使ってくれたおかげで、どういう効果があるものか理解できた」



 なるほど、そういうことか。どうやら俺はまた桜に助けてもらったみたいだ。



「あいつには本当に頭が上がらないな」


「とりあえずこれを飲んでくれ」



 小瓶を口の中に入れられる。

 緑の液体を飲むたびに、甘苦いなんともいえないまずさが口いっぱいに広がる。



「相変わらずまずいな」


「さっきそれを先輩は飲ませたんだぞ」



 どうやらさっきのことを根に持っているみたいだな。

 今度から人に使う時は、ちゃんと説明してから使おう。



「先輩、体の調子はどうだ?」


「ギリギリ体が動くな」



 これぐらい動けば、今のウォールベアー相手に充分だ。

 ゆっくりと俺はその場に立ち上がる。ちょうどウォールベアーもその場に立ち上がった。



「それならここはタッグであいつを倒そう」


「それしかないだろうな」



 前野さんとの即興コンビか。まさかこんな予定外の形でタッグを組むとは思わなかったな。



「行くぞ!!」



 前野さんが勢いよく飛び出していく。

 それに続いて俺も銃をスナイパーライフルを構えた。



「あいつは慢心創痍だ」



 右腕がなくなり、左腕1本。立ち上がっているが痛みで体がこわばり、動きが通常より鈍い。



「はぁぁ!!」



 前野さんはウォールベアーの隙を見逃さず、体を切り刻んでいく。

 だが致命傷までは至らず、カウンターを狙っているように見えた。



「俺がやることは‥‥‥」



 あいつを弱らせて、隙を作ること。そうなるとやることは決まってる。



「あいつの動きを止めよう」



 止めるにはダムダム弾を使うしかない。あれはスナイパーライフルの弾で作ったものだから、これを使用してあいつの動きを止める。



「当たってくれよ」



 狙いをウォールベアーに定める。目標は右足。そこさえ打ち抜けば、あいつは立てなくなるはずだ。



「くっ!?」



 前野さんと戦っているせいで、忙しなく動くウォールベアー。

 非常に狙いにくい。こうなったら、予測して撃つしか方法がないのか。



「前野さん!!」


「何だ!?」


「ウォールベアーをもう少し右に誘導してほしい」


「大丈夫だ。任せてくれ」



 前野さんは横に動いてウォールベアーを右の方に誘導してくれた。

 ここからなら右足がしっかり見える。先程よりも、断然狙いやすい。



「頼む、当たってくれ」



 以前として動き続けるウォールベアー。だが、狙うべき所はわかっている。



「ここだ!!」



 迷わず俺はスナイパーライフルのトリガーを引く。

 それが真っ直ぐウォールベアーの右足めがけて飛んでいく。



「グォォォォォォ!!」



 ウォールベアーの断末魔。痛みに耐えかねたのか、その場でしゃがみこむウォールベアー。



「もう1発」



 右足めがけてトリガーを引くと2発目も命中し、そのまま右足がちぎれてしまう。



「いまだ!! 前野さん!!」


「はぁぁぁぁ!!」



 刀を持った前野さんが倒れたウォールベアーの首をはねる。

 そしてウォールベアーが地面に沈み、動かなくなったのだった。



「終わったな」


『山村空はスキル、予測撃ちを手に入れた』


「予測撃ち?」


『山村空は特別スキル、クリエイトバレットを手に入れた』


「何だ、これ?」



 新しいスキル、クリエイトバレットと予測撃ち?

 しかもクリエイトバレットは特別スキル。レアスキルと見ていい。



「後で日向に確認した方がいいな」



 わからないことは日向に聞くのが1番である。

 ヘルプっていう便利なスキルを持ってるんだ。少しぐらい頼っても問題ないだろう。



「先輩!!」



 倒したことに安堵したのか、俺に駆け寄ってくる前野さん。尚早を浮かべる彼女を眺めながら、勝利の実感に浸るのだった。



「先輩、怪我の具合は大丈夫なのか!?」


「大丈夫だ」



 体はボロボロだが動くことはできる。これも悠里の回復薬のおかげだろう。

 悠里には頭が上がらないな。



「それよりよくこの場所がわかったな?」


「私のスキルの恩恵だ」


「スキル?」



 人のことを探すスキル? そんなの便利なスキル、本当にあるのかよ?



「そうだ。私は地形把握のスキルを持っていて、1度行った場所を記憶することができるんだ」



 何て便利なスキルだ。1度行った場所を記憶できるってことは、迷わずどこへでも行けるってことだろう。



「後はそのスキルに索的スキルを使って探したんだ」


「その2つのスキルを使って、本当に俺の場所がわかるの?」


「もちろんだ。索的スキルでウォールベアーの場所を確認しながら進んだら、先輩がいた」



 なるほどな。俺じゃなくて、ウォールベアーを追ってきたってことか。

 味方の場所はわからないが、敵の場所はわかる。

 俺が逃げられなかったことも、前野さんは折込ずみだったわけだ。



「それよりも先輩には聞きたい事がある」


「何?」


「何で私を助けたんだ?」


「えっ? さっき話したと思うけど‥‥」



 ちゃんとした理由を言ったつもりだけど? 何この子? もしかしてあの回答で納得してないの?



「あれが理由なはずがない。先輩も私目当てなんだろう?」


「私目当てって?」


「だから私自身に恩を売って‥‥‥その‥‥‥」



 恥ずかしそうに体をクネクネとさせる前野さん。

 俺はその様子を唖然とした表情で見ている。何を考えているんだ? この子は?



「何の話?」


「もしかして、先輩のさっき言っていたことは本当なのか?」


「だからそうだって」



 それ以外の理由で前野さんを助けないわけないだろう。

 むしろそれ以外の理由があったら聞かせてほしい。



「悪かった。今の発言を忘れてくれ」


「忘れる?」


「だから、今言ったことはなかったことにしてくれ!!」


「わかった」



 きっと聞かれたくない事なんだろうな。聞かなかったことにしよう。



「先輩には‥‥‥」


「俺?」


「先輩には‥‥‥その内話す。ちゃんと心の準備が整ったら、その時話す」


「わかった」



 なんとなく想像は出来たが、それを前野さんに言わないでおこう。

 きっと自分の中で整理がついたら、教えてくれるはずだ。



「桜の言う通りだったな」


「何がだ?」


「先輩のことだ」


「俺のこと?」



 またあいつ、余計なことを言ったのか。これ以上、俺の悪評を広めてどうするつもりだ?



「どうせまた、天下無双の喧嘩番長とか組の鉄砲玉って言っていたんだろう」


「違う」


「じゃあどういうことを言っていたんだ?」


「面倒見がよくて優しい、頼れる先輩と言っていた」



 あいつ、裏でそんなこと言っていたのかよ。

 これならまだ鉄砲玉って言われていた方がよかった。



「私も桜の言っていることが、ようやくわかった」


「それはどうも」



 こんな正直な感想、桜以外の女の子には言われたことが無いぞ。

 思わず照れてしまい、目を背けてしまう。



「先輩は皆が言っているような人ではないのだな」


「皆が言っているような人?」


「なんでもない。それより行こう。先生が待ってる」


「ったく。なんだよ」



 急に怒ったり、驚いたり、笑ったり、一体何だってんだ?

 桜にしてもそうだ。俺が一言一言言うたびに、表情をコロコロ変えていく

 女子は皆そうなのか? 俺にはそれがわからない。



「先輩1つお願いがある」


「何だよ?」


「今から私のことは由姫と呼んでくれ」


「何で?」



 別に前野さんでいいじゃん。他に重複する名前の人なんていないんだし。



「何でもいいだろう。私も空先輩と呼ばせてもらうからな」


「はぁ!?」



 何で俺は後輩に下の名前で呼ばれないといけない!?

 桜にしても梓にしてもそうだし、何で桜の同級生は俺のことを下の名前で呼びたがるんだよ。



「前野さん、それはちょっと‥‥‥」


「‥‥‥‥」


「前野さん‥‥‥」


「‥‥‥‥」


「‥‥‥‥由姫」


「なんだ? 空先輩?」



 どうやら前野さんは由姫と呼ばれない限り、俺とは口を聞いてくれないようだ。



「わかった。そうか、わかったよ」



 そっちがそういう風にするなら、こっちだって考えがある。



「由姫、お前の考えはよくわかった」


「やっと私の名前を呼んでくれたな」



 名前で呼ばれたのに、何でそんな笑顔なんだ?

 今までのふくれっつらと違い、笑顔な由姫は俺に名前を呼ばれたのがうれしいように見えた



「全く、普段からそういう顔をしてればいいものを」


「何か言ったか? 空先輩?」


「なんでもない。それよりもこの道をどう行けば駐車場につくんだ?」


「あぁ、その道は右に曲がると近道になる」



 その後も俺は由姫と一緒に春斗さん達が待つ車の方へと歩いていく。

 俺の横で由姫は楽しそうに笑う。その顔はどこか吹っ切れているように見えた。

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