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山の生態系

「春斗さん、モンスターがそっちに行きました」


「任せてくれ」



 銃でダイアウルフを威嚇し、春斗さんの方に誘導した。

 もちろんダイアウルフのことは事前に弱らせてある。

 左の後ろ足を引きずりながら、ダイアウルフが春斗さんの方へと向かっていく。



「はっ!!」



 春斗さんが持っていた大斧が振り下ろし、ダイアウルフが一瞬で絶命した。



「やったよ! 空君!」


「さすがですね、春斗さん」



 倒したダイアウルフが光となって消滅していく。

 いなくなったダイアウルフに代わり、そこには食肉がドロップしていた。



「空君! また肉がドロップしてるよ!」



 生活に必要な食肉が出てきたんだ。

 春斗さんが喜んでいる理由もわかる。



「空君はうれしくないのかい?」


「うれしくないわけではないです」



 食肉が出てくるのはいい。それは非常に喜ばしいことだ。だけど‥‥‥。



「何か懸念事項があるんだね」


「はい」


「それはどんなことだい?」


「ダイアウルフですが、今日にかぎって数が多すぎませんか?」



 いつもは見かけても1体2体しかでてこないダイナウルフの数があまりにも多すぎる。

 まだ山に来て2時間しか経っていないが、既に10体以上と遭遇している。



「正直、こんなに遭遇するとは思いませんでした」


「確かにそうだね」


「原因はたぶん、あの霧ですね」


「僕もそう思う」



 俺達は山頂の方を見た。現状、山頂の方は霧が深くて何も見えない。



「もしかしてダイアウルフが麓にいる理由って‥‥‥」


「恐らくはあの霧だろう」


「春斗さんもそう思いますか?」


「あぁ。そうでなければ昨日迄いなかったダイアウルフが、ここにいる理由が説明つかない」



 確かにそう言った理由もあるだろう。だけど、俺はそれだけが理由だと思わない。



「本当にそれだけだと思いますか?」



 確かに山頂の霧も、ダイアウルフ達が麓に下りてきた原因だろう。ただそれなら中腹付近にいればいい。



「それだけって、どういうことだい?」


「おかしくないですか? 今まで俺達から逃げ回っていたダイアウルフが、危険をおかしてまで麓に下りてきているんですよ」



 俺達の姿を見かけるだけで逃げていたダイアウルフが危険を冒してまで麓まで降りてきた理由。

 それが気になってしょうがなかった。



「もしかするとこの山の中で、何かが起こっているのかもしれません」


「何が起こっていると思う?」


「わかりません。でも、そもそもこの霧って本当に自然現象で起こっているものなんですか?」


「そうに決まってるだろう。あれ程の濃霧を自然現象以外で起こそうなんて、そう簡単に出来るわけがないよ」



 春斗さんの言っていることに間違いは無い。あれほどの霧を起こすことは普通に考えて出来るはずが無い。

 だけど本当にそうなのか? あの霧を人工的に起こすことができないのか?



「‥‥‥スキル」


「えっ!?」


「あの霧そのものが、誰かがスキルを使用して出来たものだったとしたら?」



 その可能性は十二分にある。三葉校長みたいな敷地内を守り、周りからカモフラージュするスキルだっているんだ。

 あの霧を発生させ、辺りから身を隠すようなスキルがあってもおかしくはない。



「もしかしたら、あの霧の中に俺達が知らない未知のモンスターがいるのかもしれません」


「未知のモンスターか」



 昨日までは現れなかった奇妙な濃霧。あれを作り出したのがモンスターの仕業だとしたら?

 ダイアウルフ達も危険を感じて、山頂のモンスターから逃げて来たのかもしれない。



「やはり個人個人で動くのは危険だと思います」


「空君はダイアウルフ以上の敵が出てくる可能性を危惧してるんだね?」


「はい」



 山頂付近に出現した霧。その霧のせいで、モンスターの生態系が変わってしまったとしたら。



「1人で動くのは危険だと思います。何が起こるか見当がつかない」



 もしかすると、ダイアウルフよりも強いモンスターが出てくる可能性もある。

 もし1人でいる時にそのモンスターと出会ってしまったら、対処するのは難しいだろう。



「確かに空君の言っている可能性も否定できないね」


「否定できない以上、今日はこの辺で学校に戻った方がいいと思います」



 幸い今日はモンスターの肉を大量に獲得してある。

 欲をかかず、はここで引き返したほうがいいだろう。



「空君のいうことはわかる。だけど、もう少し様子を見てからにしよう」


「戻らないんですか!?」


「あぁ。空君の言っている事が正しいとしても、根拠が無い」



 確かにそう言われると、返す言葉がない。

 もしかすると、あの霧自体たまたま発生した可能性もある。

 人工的に作ったものだと立証できない以上、俺に反論はできない。



「空君の懸念もわかる。だからこの辺りが危険かどうか偵察の意味を込めて、この辺りを散策しよう」


「わかりました」


「もちろん少しでも危険なモンスターを見つけたら、前野さんと八橋君を連れて帰ろう」


「はい」



 どうやら春斗さんも俺の考えを前向きに考えてくれているみたいだ。

 確かに俺の考えは、あくまで推測の域をでない。

 推測の域を出ない以上、この辺りを散策してからでも遅くないだろう。



「‥‥‥‥‥‥ぁぁ!!」


「っつ!?」


「どうしたんだい? 空君」


「今女性の声が聞こえませんでしたか!?」


「女性の声?」



 林の奥の方で、甲高い女性の声が聞こえた気がした。

 いや、気じゃない。確実に俺の耳に届いた。



「僕は聞こえなかったけど、空君の気のせいじゃないかな?」


「そんなはずは‥‥‥」


「あぁぁぁぁぁ!!」


「今の声!?」



 今度ははっきりと聞こえた。

 何かと必死に戦っている女性の声。この声に俺は聞き覚えがある。



「この声はもしかして‥‥‥前野さん!?」


「空君! 行こう!!」



 春斗さんと共に、声のする方へと走って行く。何故かはわからないが、嫌な予感がする。



「こんなに早く空君の言っていることが現実になるとはね」


「まだわかりません。もしかしたら、たいしたことないモンスターの可能性もあります」



 口ではそういいつつも、俺の危険探知のスキルが告げている。

 『そっちに行くな。逃げろ』と。頭の中で注意喚起を促している。



「あそこだ!!」



 春斗さんの指差す所。そこに前野さんはいた。



「前野さん!! 伏せて!!」



 目の前のモンスターに対してハンドガンを構え、乱雑にトリガーを引く。

 何発かの弾がモンスターの方へ向かい、危険を察知したのか横に飛びのいて、俺達から距離を取った。



「前野さん!! 大丈夫かい!!」


「先生‥‥‥それに、先輩まで」


 前野さんを保護する春斗さん。

 俺は雑木林の中に隠れたモンスターに狙いを定め、ハンドガンを構えた。



「酷い傷じゃないか!!」



 本当だ。近くで見る前野さんの体はボロボロで、体中の至る所に傷が見え隠れしていた。



「どうしたらこんな傷だらけになるんだよ!!」


「先生‥‥‥‥‥先輩」


「今はしゃべらない方がいい!!」



 気が抜けたのか、前野さんはその場でしゃがみこむ。

 そんな前野さんを春斗さんが抱えていた。



「早く‥‥‥逃げて‥‥‥」


「逃げてって‥‥‥!?」



 そこで初めて前野さんが襲われたモンスターを見つけた。

 茶色の毛に覆われた二足歩行型のモンスター。そいつが俺達のことを睨んでいた。



「あれは‥‥‥熊か?」


「熊にしては大きくないですか?」



 体長はおおよそ5m前後。通常の熊の倍は大きい。

 そして大きいだけでなく、ナイフのような鋭い爪を持ち今にもこちらに襲いかかろうとしていた。



「まるで壁のようだ」



 春斗さんがそのような感想をいうのも仕方がないだろう。

 今俺達は鋭い爪を持つ壁と戦おうとしているんだ。



「ウォールベアー」



 壁の様な体を持つ野性のモンスター。こうして俺達はこの山に入って、ダイアウルフ以外のモンスターと初めて対峙するのだった。

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