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心配事

「今日こそ大物を取れるといいね」


「そうですね」



 食料調達に行く車の中、俺は春斗さんの話に生返事で答えていた。



「空君、今日は元気が無いけど、どうしたんだい?」


「別に何でもありません」



 何でもないわけではない。頭の中では朝の桜と杉田のやり取りを思い浮かべていた。



「桜の奴、楽しそうだったな」



 リラックスした状態で杉田と話す桜。俺と一緒にいる時よりも楽しそうだった。



「俺は本当に桜の側にいてもいいのかな」


「空君、今何か行ったかい?」


「すいません、独り言です」



 危ない危ない。余計なことを春斗さんに聞かれる所だった。

 もしかしたら聞いていた可能性もあるが、何も触れてこないのはありがたい。



「それならいいんだ。でも何かあればいつでも聞いてくれ。僕でよければ相談にのるよ」


「‥‥‥わかりました」


「よし、ついたぞ。それじゃあ皆、車から降りてくれ」



 車が駐車場に止まり、俺達は車を降りた。



「どうやら山頂付近はに霧が出ているみたいだね」


「そうですね」



 春斗さんの指を指す方向を見ると、確かに山頂付近には霧がかかっている。



「霧が深いですね」


「まるで山頂を隠しているみたいだ」



 周りが見えなくなる程の濃霧。

 あんな所にいったら、自分がどこにいるかわからなくなるだろう。



「今日は山頂の方には行かない方がよさそうだね」


「付け加えるなら中腹付近もですね」



 春斗さんの言う通りだ。付け加えるなら、あの濃霧が山の中腹付近まで降りてくる可能性もある。

 だからここは無理に動かない方がいい。行くとしてもふもと迄でやめた方がいいと思う。



「あの霧が下の方まで来る可能性もあります。安全を考慮してふもとで狩りをするのがいいでしょう」


「空君の言う通りだね。2人はそれで構わないかい?」


「私は別に大丈夫」


「俺も大丈夫だ。ただ単独行動はするぞ」


「危険なところに行かなければ別にかまわないよ」



 あの様子だと1人で行動できればなんでもいい感じだな。

 八橋らしいといえば八橋らしい。



「悪いが、俺は先に行くぞ」



 そういい残し、八橋は山道へと入った。



「前野さんは行かないの?」


「行きたいのは山々だが、先輩に聞きたいことがある」


「何?」



 前野さんが俺に聞きたいこと? 昨日に引き続き珍しいこともあるものだ。



「先輩、顔が死んでいるけど何かあったのか?」


「別になんでもない」


「ちょっと、こっちに来てくれ。先生、ちょっと空先輩を借りていく」


「あぁ、ゆっくりしてきてくれ」



 『ゆっくりしてきてくれ』って。ゆっくり出来るほど、時間はないぞ。

 前野さんに引っ張られる形でしばらく駐車場を歩き、誰もいない所へと2人でやってくるのだった。



「先輩、もしかして先輩が悩んでいることとは桜のことについてか?」


「別に、何でもない」


「何でもないということは、桜のことで合っているのだな?」


「もし合っているといったら、前野さんはどうするの?」



 これは前野さんには関係ない問題だ。全部俺1人にゆだねられた問題である。



「らしくないな。いつもの先輩なら、うざいぐらい私に絡んでくるのに」


「俺が前野さんに飽きたってことは考えられないか?」


「私に飽きたなら丁度いい。その分桜のことを構ってやってくれ」



 当然のことのように桜のことを押してくる前野さん。

 まるで俺の考えていることを見透かされているようだった。



「桜のことは関係ないだろう?」


「正直にいって今の先輩は見るに絶えない」


「何?」


「くよくよと悩んでいる先輩は、先輩じゃないってことだ」


「‥‥‥前野さんに俺の何がわかるんだよ」


「先輩のことはわからない。だけど、桜のことはわかる」


「桜のこと?」


「そうだ」



 俺よりも桜のことがわかってるって? そんなことはないはずだ。



「桜は先輩を裏切ってない」


「そんなのはわかっている」


「もっというと、桜は先輩といる時が1番楽しそうに見える」


「本当にそう思うのか?」


「あぁ」



 その自信はどこから来る? 朝の様子を見るだけでも、俺よりも杉田といた方が楽しそうだっただろう。



「俺には杉田と一緒の方が楽しそうに見えたがな」


「あいにく私にはそうは見えないが」


「何だって?」


「いいたいことはそれだけだ。悪かったな。時間をとらせて」



 それだけ言い残し前野さんも山道の方へ歩いていく。

 人の気も知らないで。俺の何がわかるって言うんだよ。



「前野さんは一体何が言いたかったんだよ?」


「だいぶあの子も君に心を開いたじゃないか」


「春斗さん!?」



 どこからか春斗さんが現れた。



「一体いつからそこにいたんですか?」


「今さっきだ」



 それじゃあ前野さんとの会話は聞かれてないな。



「あんなに楽しそうな話す前野さん、久々に見たよ」


「そうなんですか?」


「うん。何を話していたかは知らないけど、きっと楽しい話をしていたのだろうな」



 そうなの? 俺は前野さんに喧嘩を売られただけなんだけどな。



「そろそろ行きましょう。時間もそんなにありません」


「そうだな」



 春斗さんに言われ、俺も山の中へと入っていくのだった。

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