パーティー機能
夕ご飯を食べ終えた俺は桜と共に屋上へ来ていた。
「誰もいないようですね」
「いや、あそこにいるぞ」
「えっ!?」
屋上にあるペントハウスの上のテントには明かりがこもっている。
明かりがこもっているってことは、あそこに八橋がいるってことだ。
「桜、八橋がいるみたいたけど、ここで話をして大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。だってあの子、友達いないですから。あたし達の話を聞いても誰にも話さないと思います」
友達がいないって、寂しいこというな。所謂ボッチということか。
たしか中学2年まで登校拒否してたんだよな、
「あれ? あの子って黒川さんと幼馴染じゃなかったっけ?」
たしかそんなことを良子さん達が言っていた気がする。
黒川さんが幼なじみな以上、友達が1人もいないってことはないんじゃないか?
「よく知っていますね」
「良子さんが言ってだんだよ。この学校に登校するようになったのも3年の時からって話って聞いた」
桜が肯定している以上、良子さんの話は本当みたいだ。やはり俺達が彼の事を知らなかった理由は、彼が登校していないことが理由だろう。
「先輩達が八橋君の事を知らないのも無理は無いと思います」
「でも2年も登校していない奴が急に登校してきたら、驚かないか?」
「もちろん驚きましたよ。梓ちゃんのイメチェンもびっくりしましたけど、それ以上に八橋君が登校して来たことに皆驚いてました」
黒川さんのイメチェンに八橋の登校。
そしてタイミングよく、世界が変わる現象が起きた。
「黒川さんのイメチェンに八橋の復帰‥‥‥偶然? それとも‥‥‥」
「先輩、そんなに難しい顔をしてどうしたんですか?」
「あぁ、悪い。なんでもない」
なんか引っかかるけど、こんなしょうもないことを考えてもしょうがないか。
今は桜のお得情報を聞くのが先だ。
「それで桜、さっき話していたお得情報って何だよ?」
「ふっふ~~ん、実はですね‥‥‥」
「もったいぶってないで教えてくれ」
俺がお願いするのはいいとしても、そんな不遜な態度は取らないで欲しい。
後胸を張るな、胸を。悠里や前野さんと違って、胸を張った所で全然主張できてないからな。
「空先輩。今失礼なこと考えてませんでしたか?」
「考えてないって。それよりももったいぶってないで早く教えてくれ。そのお得情報って奴を」
何がお得なのかわからないが、俺と桜に関係があるものだろう。
でなければこうして桜が話を持ってくるわけがない。
「実はですね、今日杉田君達と一緒食料調達していた時に、パーティー機能の話を聞いたんです」
「パーティー機能?」
なんだ、それ? 聞いたことが無いぞ。
RPGのお約束通りといえば、お約束通りだけど、いよいよRPGの世界観になってきたな。
「そうなんです。どうやらjobを持っている人達同士でグループを作ることが出来るらしいです」
「本格的にRPGみたいになってきたな」
だが、パーティーを作って何になるんだ?
特にいいことがないなら、今のままでも問題ないように思うけど。
「パーティー機能があるってことはわかったけど、それにどんな得があるんだよ?」
「それがですね、パーティーになった人のステータスがわかるらしいです」
「へぇ~~」
それはまたいらない機能だな。パーティーメンバーのスキルがわかった所で、全く得がない。
「その返事、絶対意味がないと思ってますね」
「まぁな」
だって予めお互いスキルを確認すればいいだけの話だろう。お互い嘘をつけないってこともあると思うが。
「でも、これにはちゃんと意味があるんです」
「あるの?」
「先輩は、何でスキルの確認が出来ると思いますか?」
「何でかって言われても‥‥‥」
そんなのわかるわけが無い。ただお互いのスキルを確認したいだけだろう。
「そこでもう1つ、スキルの共有機能というものがあります」
「スキルの共有機能?」
「はい。話によれば、お互いの好きなスキルをパーティーメンバーで1つ共有できるみたいです」
「なるほどな。それならステータスやスキルを確認できる意味がある」
確かにそれはお得だ。例えば、俺が持っているアイテムボックスのスキルを共有したとしよう。
そうすると桜も俺が持っているアイテムボックスのスキルが使えるわけだ。
今まで俺1人が使えていたものをパーティーメンバー全員で共有できる。確かに戦いの幅が広がるな。
「凄いでしょ?」
「確かに凄いが、よく杉田達がそんなこと教えてくれたな?」
普通は自分達だけで情報を独占していてもおかしくはない。
こうして桜に教えたということは、何か意図があると考えた方がいいだろう。
「実は理由がありまして‥‥‥」
「理由?」
「はい。実はあたし、杉田君達のパーティーに誘われたんですよ」
「えっ!? 桜が!?」
それは初耳だ。だけど今の説明を聞いて、桜の班が効率よく食料調達できるのも納得だ。
もしかするとその機能を使って有用なスキルを仲間達全員に付与して、モンスターと戦っているのだろう。
「はい、同じ班になったのでパーティーになった方が効率的に動けるようになるからどうかって話です」
確かに桜も同じ班なので、パーティーに誘ったとしてもおかしくはない。
でも何故だろう。理にかなってはいるが、妙に釈然としないこの感じは。
「桜はその話、了承したのか?」
「するわけ無いじゃないですか。あたしはパーティーを組むなら、先輩だけって決めてますから」
まぁ、そうか。そうじゃなければ、こんな話を持ってこないか。
あれ? 俺は何でこんなほっとしてるんだろう?
「どうしたんですか? 先輩?」
「なんでもない。それよりそう考えると日向達って凄いんだな」
「何でですか?」
「だってパーティー機能なしで、食料調達率が群を抜いて高いんだろう」
明らかに異常だ。さすがは主人公、小手先だけでなんとかしようとする俺とは全然違うな。
「あの班は‥‥‥日向先輩がいますからね」
「だよな」
あいつは人より特別な能力を持ってるんだ。
あまり参考にしないようにしよう。
「話はわかった。それでパーティーを作るにはどうすればいいんだ?」
「ステータスって念じた後にパーティーって念じると、パーティーの項目が出るはずなんですが‥‥‥あれ?」
「どうした?」
「パーティーの申請をしようとしたんですが、先輩の名前が出てきません」
「本当?」
ためしに俺も確認してみるが、確かに桜の名前が出てこない。
出てこないだけじゃない。なんだこりゃ?
「俺の申請の欄に、誰も名前出てこないんだけど?」
「嘘!? だってあたしの所には杉田君だけじゃなくて、日向先輩や悠里先輩の名前も載ってますよ」
何? それ? 俺のパーティー欄だけ、バグでも起きているの!?
「こういうことって普通にあるものなのか?」
「う~~ん、もしかしてまだ親密度が‥‥‥」
「新密度?」
「あっ、それは先輩が知らなくてもいいことです。それよりも、先輩」
「おい、ちょっと待て。桜!?」
いきなり桜が俺の胸に飛び込んできた。咄嗟のことでなんでこんなことをしたのかよくわからないが、桜を抱きとめた。
そうなると必然的に俺が桜を抱きしめる体勢になり、柔らかい部分を体全体で感じてしまう。
「どうしたんだよ!? いきなり抱きついてきて」
「ふっふっふ。先輩、今ドキドキしていますか?」
ドキドキっていうか、ハラハラしてるよ。こんな所桜の両親に見せてみろ。絶対に誤解されるぞ。
「あれ? おかしいですね?」
「桜?」
「まっ、いっか。先輩成分も足りてなかったし」
どうやら、桜の中で何かがまとまったらしい。全くしょうがない奴だ。
この体勢は不服だが、今日は特別だ。少しだけ、少しの間だけこうしていよう。
「先輩」
俺の胸の中で精一杯甘える桜。その桜のことを抱きしめながら、屋上から見える夜景を静かに眺めるのだった。
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