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生粋の苦労人

「はぁ~~疲れた」


「お疲れ様、空」



 夕食の時間、カレーを食べながら今日あったことを日向と悠里と一緒にカレーを食べている。

 結果的に徒労に終わった今回の食料調達。成果は無かったとしても労働をした後に食べるカレーは凄く美味しかった。



「日向達のグループはどうだった?」


「僕達の班は田宮さんって人がまとめてくれたおかげで、過ごしやすかったよ」


「そうか」



 確か日向達のグループは全てのグループの中で1番多くの物資を持って帰ってきたらしい。

 それこそ飲料水やお菓子等の嗜好品の他に、日常品も数多く持ち帰ってきたと聞く。



「空達の方はどうだったの?」


「俺? 俺達の班は成果なしだな」


「成果なしって‥‥‥‥‥貴方達の班は何をしていたの?」



 悠里の言うとおり、弁解する余地がない。

 他の班は多かれ少なかれ、食料を持ち帰ってきたらしい。手ぶらで帰ってきたのは俺達だけだ。



「まぁ、なんだ? ‥‥‥‥山に入って仲間割れして、何ももって来れなかったって所?」


「本当に貴方達は何をしに言ったの?」



 悠里はあきれてるけど、しょうがなかったんだよ。

 あんな個々で行動するなんて思わなかったし、モンスターは出てこないし全くいいことがなかった。



「そんなに空達の所は酷かったの?」


「酷かったなんてもんじゃないよ」



 全員でまとまって行動しないで個々に行動するから、中々モンスターを仕留められない。

 今までのモンスターは俺達を見つけると攻撃してきたけど、山のモンスター達は逃げてしまう。

 だから連携して、仕留めないといけないんだけど、肝心の連携を取れる人が春斗さんしかいないから苦戦につぐ苦戦だ。



「また一からやり方を考えていかないといけないな」


「うん、その意気だよ」


「まぁ、私もしょうがないから応援してあげる」



 2人からエールをもらったけど、正直明日からどうするかな。

 まずはあの2人をどうするか。いや、それよりも春斗さんとの連携の取り方を考えた方がいいか



「3人共お疲れ様」


「お疲れ様です、春斗さんに良子さん」


「私達もここ座っていい?」


「はい、大丈夫です」



 そう言って春斗さんと良子さんは俺達の隣に座る。

 開口1番、春斗さんはため息をついていた。



「悪いね、空君。僕のせいで君にまで苦労を背負わせて」


「そんなことないですよ。俺は全然大丈夫です」



 正直全然大丈夫ではないが、俺よりも思いつめた顔をしている人に対して追い討ちはかけられない。

 その表情からは疲労がにじみ出ており、疲れきっているように見えた。



「もっといってやっていいのよ。全部うちの旦那が計画したことなんだから」


「そうなんですか?」


「計画したことというか、押し付けられたって方が正しいけど」



 やっぱりそうだったのか。経緯から見て、人がいい春斗さんにあの2人を託したに違いない。



「そんな大変だったんですか?」


「元々僕のグループも6人になる予定だったんだけどね。食料調達に志願したあの2人を誰のグループにするかで、会議が長引いてしまったんだ」



 まぁ、そうだろうな。今日の様子から見て、あの2人を自分のグループに引き入れたいと思う人はいないだろう。



「由姫ちゃんに関しては引き取ってもいいって所はあったけど、八橋君がいなくてね」


「だったら2人一緒にしようって話になったみたい。で、最後に2人を引き入れる代わりに旦那の好きな人を選んでいいって話になって」


「俺が入ったわけですか」



 状況が段々わかってきた。そういった理由で俺がこのグループに入ったのか。



「でも何で俺が選ばれたんですか? 日向の方が上手くやると思いますけど?」



 コミュニケーション能力に長けた日向ならば、もしかするともっと上手くやれたはずだ。

 それなのになんで俺が選ばれた? もっと適任の奴はいっぱいいるだろ?



「空君は鈍いねぇ~~」


「鈍い?」


「旦那はそれだけ空君を買ってるわけだよ」


「こら、それは本人に言わない話だろ?」


「別にいいじゃん。こういうのは直接伝えるのが大事なんだから」



 春斗さんが俺を買ってくれていることはうれしいが、さすがに今回の問題は俺には荷が重すぎる。

 協調性のない2人の仲介役なんて、俺に務まるのだろうか。



「空、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ」


「日向」


「そうよ。空は生粋の苦労人だから、これぐらいの問題余裕なはずよ」


「おい、ちょっと待て」



 生粋の苦労人ってどういうことだよ? 俺はそんなに苦労してないぞ。



「あぁ~~~」


「春斗さん?」


「それ、超わかる」


「良子さんまで」



 どうやら俺はここにいる全員に苦労人だと思われているらしい。

 確かに面倒なことに巻き込まれる率は高いが、そんなに苦労しているつもりは無いのに。



「どうしてこうなった‥‥‥」


「頼むよ、空君」


「あの子達、ちょっと難しい所があるから。特に八橋君」


「八橋が?」



 今日話した感じだと、八橋よりも前野さんの方が気難しいように感じた。

 受け答えもしてくれないし、自分の言い分をいって一方的に俺達を突き放したような前野さんの方が俺の中の評価は低い。



「そう。八橋君は去年まで不登校気味で、3年生になってから登校し始めたの」


「そうだったのか」


「でも、よく3年生になって登校してきましたね」


「実はそれには秘密があって、日向君と空君は黒川さんって知ってる?」


「黒川ってあの‥‥‥」



 確かこの学校の現生徒会長だった奴だよな。



「あいつがどうしてそこに絡んでいるんですか?」


「あの2人は昔からの幼馴染だったの。それで黒川さんが八橋君を引っ張りだしてきたんだ」



 なるほどな。それで八橋のやつも学校にくるようになったのか。



「それから黒川さんが彼を連れて学校に来るようになって、無事不登校から抜け出せたわけ」


「僕も八橋君のことは知らなかったのはそう言うことだったんですね」


「そうかもしれないね。君達が卒業してから登校するようになったから。あの子は」



 大体八橋の事情はわかった。もしかしたらあのぶっきらぼうの態度もそのせいかもしれない。

 今度黒川さんと話す時にさりげなく聞いて見た方がいいかもな。何か八橋に対しての突破口になるかもしれない。



「前野さんの方はどうなんですか?」


「彼女はこの現象が起きてからああなってしまって。まさか由姫ちゃんが塞ぎこむなんて思わなかったけど」


「塞ぎこむ?」


「昔はもっと明るくて真っ直ぐな子だったんだけど、ほら今もクラスの輪から外れて1人でご飯を食べてる」



 良子さんの指差す方向を見ると、確かに前野さんは1人でご飯を食べている。

 ちなみに八橋の姿はどこにもない。もしかすると既に食べ終わってどこかに行ってしまったのかもしれない。



「前野さんもも昔はこんな子じゃなかったんだけどね」


「そうなんですか?」


「あぁ、そうだ。桜と一緒にいる時は、もっと明るい印象だったな」


「うちにもよく五月ちゃんと一緒に遊びに来ていたんだけどね」



 だから前野さんのことも、2人はよく知ってるのか。



「明るくて真っ直ぐだったのか」



 そんな彼女が考えを変えたってことはきっと何かあったってことだろう。

 それが何かはわからない。もしかしたら、この現象のせいで彼女も壊れてしまった可能性だってある。



「う~~ん、難しいな」


「空、前野さん達のこと何とかすることできないかな?」


「俺が?」


 そう言われても、現状俺にできることはないだろう。

 可能性があるとすれば桜にお願いすることだが、肝心の桜は杉田達の所にいる。

 出来れば桜に負担はかけたくない。



「僕からも空君にお願いしたいんだ。何とかして、あの2人の心を開かせてほしい」


「そう言われても‥‥‥」



 突破口がない以上、難しい相談だ。俺に年下2人を何とかしろって言われた所でなんとか出来る気がしない。



「大丈夫です。空ならそういうことはしっかりやってくれるはずです」


「悠里?」


「大丈夫よね? 空?」



 あの、悠里さん。何で俺が承諾する前に勝手に承諾しているんですか?

 俺はまだ許可を出した覚えが無いんですが?



「大丈夫だよ。空は年下キラーだからね」


「日向も勝手なことをいうな」


「別名 ロリコン」


「待て、悠里。俺は決してロリコンじゃないぞ」



 どうして俺がロリコン認定されないといけないんだ?

 日向と悠里は俺のことをしらけた目で見ている。



「桜ちゃんを見て、そういうこと言えるの?」


「俺と桜は1歳差だ」



 桜は確かに少し華奢だけど、俺達とは1歳違いだぞ。

 見た目も決してロリって感じじゃないし、歳だけで決めてないか?



「空君、君は桜をそんな目で見ていたのか」


「いや、それは誤解ですって」



 どうやらここには敵はいても俺の味方はいないみたいだ。

 一刻も早くここから逃げ出したい。いや、逃げ出さなければ。



「そういえば空君は桜とどうなってるの?」


「僕も是非聞きたいな。桜の父親として」


「ははははは‥‥‥‥日向と悠里は無視しないで俺のことを助けてくれ」



 その後俺は食事中木内夫妻から桜のことについて尋問される。

 日向と悠里はそんな俺を見てニヤニヤと笑いながら黙って静観していたのだった。

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