バラバラのチーム
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「春斗さん、本当にこんな所にモンスターなんて出てくるんですか?」
山に入って1時間が経つ。先程から山道を歩いているが、全くモンスターと出会っていない。
「そろそろ出てきてもいい頃なんだけど」
春斗さんは辺りを見回して探しているが、こんなのどかなハイキングコースにモンスターが出てくるのか微妙な所だ。
「空君、あそこにいたぞ」
春斗さんが指を指した所で何かが動いた。
確かにあれはモンスターだ。
「狼か」
あんなモンスターもいたのか。
4つ足の姿に茶色の毛色。見た目は狼のように見えるが、通常の狼より大きい。
名づけるならダイアウルフ。狼が進化したようなモンスターがそこにはいた。
「ここからモンスターまで、少し距離があるな」
距離がだいたい300mぐらい。あちらはこっちに気づいていないようだ。
油断している今ならあいつを倒すことができる。
「まずは俺の銃弾でけん制して追い込むのが‥‥‥っておい」
俺がスナイパーライフルを取り出して構える前に、八橋と前野さんが走り出した。
「ちょっ、待てよ。そんな音をたてたら、ダイアウルフに気づかれるって」
いや、既に気づかれているか。こちらを見たダイアウルフは全力で俺達から逃げる。
2人はダイアウルフを必死に追う。
「逃がすか」
「絶対に逃がさない」
懸命に追うが、スピードは俺達よりダイアウルフの方が圧倒的に速い。
スキルを取得していたって、そんなモンスターに追いつけるはずがない。
「逃がしたか」
「おい、ちょっと待てよ」
「なんだ、先輩?」
「何だじゃない」
2人はダイアウルフを逃がしたというのに、全く悪びれる様子はない。
何だよ、こいつ等。作戦とか何も考えてないんじゃないか?
「いきなり走り出して、敵に気づかれるようなやり方をして何してるんだよ。あんなやり方でダイアウルフを倒せるわけないだろ?」
気づかれなければいいが、あんなやり方をしていても、敵に気づいて下さいって言ってるようなものだ。
「悪いが先輩、私達のやり方に口を挟まないでもらおう」
「何?」
「そうだ。俺達は俺達のやり方がある。先輩に指図されたくない」
なんだ、こいつ等。あんな逃がし方をして、自分のやり方があるって?
どの口でそんなこと言ってるんだよ。1匹でもモンスターを倒してから言えよ。
「そんな生意気な口を聞くのは1匹でも‥‥‥」
「空君、そこまでだ」
「でも‥‥‥」
「空君がすまなかった。君達は君達の好きなようにやってくれればいい」
「わかった」
「最初からそういえばいいんだよ」
そういうと、2人はバラバラに行動を始めた。
「ちょっと待てよ。どこに行くんだ?」
「私達は狩りに行くんだ」
「狩りに行くって1人で大丈夫なのかよ?」
「大丈夫だ。俺達は強い。先輩よりもな」
「心配しなくてもちゃんとモンスターを倒せばいいんだろ? ちゃんと肉を持ち帰るから、期待して待っていて欲しい」
そういうと2人は別々の方向に歩き出す。
どうやら各自バラバラに狩りを行うらしい。
「ちょっと、春斗さん。あんな自由許してもいいんですか?」
「本当は一緒に狩りをした方が効率的だ」
「わかってるなら、あいつ等をバラバラに行動させちゃまずいでしょ」
モンスターを見つけられないのはいいとしよう。
だがもし1人でモンスターと戦って怪我をしたら目を当てられない。
「それはわかっている。だけど彼等は少し気難しい性格をしていてね。申し訳ないけど、今は我慢してほしい」
「春斗さんがそこまでいうなら‥‥‥」
しょうがないから、ここは飲み込もう。
でもあの雰囲気は妙に懐かしい気がする。
「あの2人を見ていると、昔の君を見ているように思えないか?」
「俺はもっと可愛げがあったと思いますけど?」
「それは日向君や桜と行動するようになってからだろう? 中学に入学した君に八橋君達はよく似てると思う」
「そうですか?」
「そうだよ。1人よがりな所とか、自分で何とかできると思い込んでいる所とかそっくりだ」
何もいえなくて、俺は押し黙ってしまう。
そのように言われれば、俺も否定することが出来ないからだ。
「前野さんは昔はあんな感じではなかったけどね」
「そうなんですか?」
「あぁ。桜に聞いてみれば、色々と教えてくれると思う。あの子とは仲がよかったからね」
「そうなんですか」
もしかすると世界が変わってしまった時、考えも全て変わってしまった可能性もある。
そうなると、元に戻すのはかなり難しい。
「本当に厄介な人達が多いな」
「それを教師の僕にいうのかい?」
「いつもご苦労様です」
俺も春斗さんからそのように見られていたのだろう。
今だからわかる春斗さんの苦労が忍ばれた。
「大丈夫だよ。あの子達もたくましいから自分達でしっかりモンスターを倒せるはずだ」
「そうだといいんですけど‥‥」
正直あの2人の実力がわからないので不安しかない。
前野さんは剣道部にいた気がしたが、八橋の方は部活をやっていた印象が無い。
「大丈夫。僕達は僕達の狩りをすればいいから、がんばろう」
「わかりました」
この後俺は春斗さんと一緒にモンスターを探す。
結局俺達はこの日モンスターを2体しか倒せず、ドロップ品を持ち帰れないまま帰路につくのだった。
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