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親子の再会

「そうか、君達も大変だったんだね」



 俺達の話を聞き終えた三葉校長はこめかみを指で押さえる。

 高校の帰り道にこの現象に巻き込まれ、全員の両親を探す為に行動していること。その途中で桜を救出し、デパートで避難していた人と合流したこと。そこでゴブリンキングを倒したこと全て話したのだった。



「でもこれで1つ納得がいった」


「何がですか?」


「ゴブリンのことだ。この辺のゴブリンの数がめっきり減ったのはそのせいか」


「そうだと思います」



 やっぱり三葉校長も同じ事を思っていたのか。

 バイクでこの近辺に来た時、俺と桜もゴブリンソードの群れに取り囲まれた経験がある。

 当の本人達がゴブリンの動向を気にしていないはずが無い。



「君達の言っていることが本当なら、食料調達に行くのも以前よりは楽になりそうだな」


「もしかしたら他の人達も気づいているかもしれません。町へ食糧調達に行くなら、早めに行った方がいいと思います」


「そうするようにしよう」


「このリュックですが、僕達でこの近くのコンビニにいって、つめれるだけつめてきました。もらってください」


「おぉ、これはこれは」



 日向が校長渡したのは、先程背負っていたリュック。その中にはお菓子やジュース等、ここでは中々手に入らないものが詰められていた。



「本当にいいのかい? こんなにたくさんもらって」


「よければ、俺達のももらってください」


「おぉ、ありがとう。これは後で夕食の時の配給に使わさせてもらうよ」



 校長は背中にリュックを置く。そして1度咳払いをした。



「それじゃあ、桜さんのお母さんの所に案内しよう」


「ありがとうございます」


「その場所まで案内しよう。こっちに来てくれ」



 校長は立ち上がり、俺達もその後についていく。



「桜、よかったな。両親と会えて」


「はい」



 終始桜は表情をほころばせている。よっぽど両親と会えるのがうれしいのだろう。



「そういえば、桜の両親と会うのも久しぶりか」


「前に空先輩の話をした時、すごく会いたがってましたよ」


「会いたがってたか」



 あの人が俺に会いたがっているのか。俺はあんまりあいたくないんだけどな。

 前に会ったのは卒業してすぐ、桜の家に遊びに行った時以来か。

 そう考えると結構経つな。



「そういえば桜ちゃんの両親ってどんな人なの? 私はまだ会ったことないんだけど?」


「それなら空が説明してくれるよ」


「何で俺?」


「だって空は桜ちゃんに1番詳しいじゃない」


「そうだよ。本人が説明するより、身近な人が説明する方が印象としてはいいでしょ?」


「いやいや、桜が説明する方がいいだろう?」


「空先輩、あたしのお母さんの説明お願いします」


「桜?」


「ほら、桜ちゃんもこういってるんだから」



 何で俺が駄々っ子みたいなことになってるんだよ。



「しょうがないな」



 どうやら俺に拒否権はないらしい。



「桜の両親の印象か‥‥‥俺にとって2人は両極端な印象なんだよな」


「両極端?」


「父親は度がつくほどの桜を溺愛していて、母親は軽い。軽いというかちゃらいといった方がいいのか」



 母親は男勝りな姉御肌で、面倒見がいい。ただ、すごく怠惰で面倒くさがりだ。

 逆に父親は娘を溺愛していて、俺と日向の3年の時の担任でもある。

 俺との2者面談の時は、進路そっちのけで桜についての話を俺としていたな。

 俺の進路なんて『君なら大丈夫だから』の一言で済まされてた気がする。

 当時はどっちが面談をしているのか全くわからなかった。



「その例えよくわかる。僕進路相談のとき、木内先生に桜ちゃんのこと散々聞かれたから」


「日向も聞かれたのか?」


「もしかして空も?」


「あぁ、基本進路よりも桜の最近の様子について相談されたな」


「僕も僕も。最近の桜ちゃんの様子とか、何か問題行動していないとか色々聞かれたよ」



 どうやら日向も同じことをされていたらしい。

 全く嫌な共通点だな。



「何をやってるんですか、お父さんは?」



 桜は俺と日向の話を聞いて、あきれているように見えた。

 まぁ、普通はあきれるだろうな。大事な進路相談の時に娘の相談をしているんだから。



「でも、お二人共生徒に人気があっていい先生ですよ」


「いや、それはわかりますよ」



 確かに人気はありますけど、マイナス面の方が大きい気がしないでもない。



「着きました。皆さん、心の準備はいいですね?」


「はい」



 俺達が連れてこられたのは保健室。そこの扉を三葉校長が2回ノックした。

 ノックをすると中から『は~~い』という気だるげな声が聞こえてきた。



「良子先生、入りますよ」


「どうぞ~~」



 気だるい声が中から聞こえてくる。中には椅子に座り、にがにがしい顔をした桜の母、木内良子さんがいた。

 身長は桜と同じくらいで、長い髪を後ろに結びお団子上にしていた。

 機から見れば20代後半ぐらいに見えるきれいな顔、何よりその両目に光るサファイヤみたいなきれいな赤い目。

 桜のお姉さんと言われても、おかしくはない。



「三葉校長。また面倒な案件持ってきたんで‥‥‥って、えっ、空君‥‥‥桜‥‥‥」


「お久しぶりです。良子さん」


「本当に空君なのかい?」


「お母さん!!」



 母親の元に走っていく桜。そんな桜を良子は優しく抱きとめるのだった。



「お母さん、生きててよかったです」


「私が死ぬわけないだろ? でも、あんたが無事でよかったよ」


「あたしもお母さん達が無事でよかったです」



 桜を抱きしめながら、良子さんは桜の話を聞いている。

 そんな2人を見ながら、俺は安堵していた。



「よかったわね、桜ちゃん」


「そうだな」



 桜のこの旅の目的、両親の生存が確認できたんだから。それだけで安心だ。

 ある意味俺の旅の目的も達成できたといっていい。



「それじゃあここを頼んでいいかい?」


「どうしたんですか?」


「そろそろお父さんの方が戻ってくるから呼んでくるよ。君達はここで待っていてくれ」


「それなら俺も一緒に行きますよ」



 真面目なあの人のことだ。うだうだと話している内に、気づいたら1時間かかっていたってことも考えられる。

 さっさとつれてくるならあの人をよく知る俺が話した方が手っ取り早い。

 それにせっかくの家族水入らずだ。居間は桜達のことはそっとしておこう。



「それじゃあ僕も‥‥‥」


「日向と悠里は良子さんにここまでの説明をしてくれ」


「そういうことなら、なおさら空の方が適任じゃ‥‥‥」


「俺は説明が下手だから、お前が話してくれ」


「山村君、その申し出はありがたいけど僕は君もここにいてほしい」


「何で?」



 俺がいても邪魔になるだけだろう。今は家族2人水入らずでゆっくりしていてほしい。



「良子君は、空君のことも心配していたんだよ」


「俺のことも?」


「せっかくだから、君達4人はここでゆっくり話していてほしい。良子君もそう思うだろう?」


「もちろんですよ。私も空君の話はぜひ聞きたいです」



 桜を抱き抱えながら良子さんは話す。

 まずい、ここから離れるタイミングを逸した。

 先程まで母親との話にご執心だった桜も俺の方に振り返り、目を細めて俺のことを見ていた。



「空先輩、まさか逃げようとしてたんじゃないですよね?」


「そんなことあるわけないだろ?」


「あっ、空今嘘ついた」


「俺は嘘なんてついてない」


「じゃあ決定だね」


「‥‥‥なら、空先輩はここに座ってください」



 桜が指定したのは自分の隣の椅子。その席をバンバン叩きながら、俺のことを呼ぶ。

 どんなことがあっても俺のことは逃がしてくれないみたいだ。



「山村君、あきらめなさい」


「空、素直になったほうがいいよ」



 どうやら最初から俺の味方はいないようだ。

 おとなしく降伏するしかないな。



「先輩、どうしたんですか? 早くこっちに来てください」


「わかった」



 俺が促されるまま、桜の隣に座る。

 こうして、桜の母親を含めた報告会が始まったのだった。


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