固有結界
あれから俺達は三葉校長に連れられて校内へと向かう。
校庭を抜ける際、周りの人達から奇異な視線を受けていた
「空、何か周りの様子がおかしくない?」
「おかしい? 何がだよ?」
「どうやら私達は、歓迎されていないようね」
「そりゃそうだろう。ここの人達にとって、俺達はよそ者だからな」
見る限り、この周りにいるのは学生達や学校の先生達だけである。
避難してきた人達もごく少数。よそ者を殆どといっていいほど入れてないのだから、歓迎されてなくても仕方がない。
「ここにきている避難民は想像以上に少ないせいもあるだろう」
ゴブリン達のせいでここに来れなかったのだろう。
避難民らしき人も確かにいるが、指定避難所に入っていた割には少なすぎる。
「思ったより、人が少ないみたいだね」
「それはゴブリン達と三葉校長のスキルのせいだろう」
もしかするとここに来る前にやられてしまったのだろう。
例えたどり着いたとしてもあのスキルのせいで校舎内に入ることは不可能に近い。
「つまり、それで避難した人達が少なかったってこと?」
「そうだ」
ゴブリン達の存在と三葉校長が中に入る人を選んでいたということなら話が早い。
ここが指定避難所になっていても、避難民の数が少ないのも納得がいく。
「加えていいますと、ここに自衛隊や警察等は現れませんでした」
「現れなかった?」
「はい。たぶんこの辺に大量のモンスターがいたからでしょう。それで、この場所も放棄されたと考えてもいいかもしれない」
つまり自衛隊や警察は他の避難所を重点的に守ってるってことか。
そのせいで三葉校長が学校の運営をしているんだな。
「あの‥‥‥」
「悠里ちゃん、どうしたの?」
「私達はどこに向かってるんですか?」
「校長室ですよ」
「校長室?」
「はい、ゆっくりお話をするならそこが最適だと思います」
昇降口に入ると靴を脱ぎ、ゆっくりと校舎内に入る
三葉校長の後をついて行くと、2階の校長室へと案内された。
「では、こちらへどうぞ」
三葉校長が扉を開けた。
一瞬罠が仕掛けられていないか疑ったが、そんなことはなかった」
「そちらのソファーにおかけ下さい」
「失礼します」
進められたソファーに俺達4人は座る。
その対面に三葉校長は座るのだった。
「さて、いくつか君達に聞きたいことがある。まず単刀直入に聞くが、君達はjobというものを知っているかい?」
いきなり俺達が聞かれたくないことを聞いてきやがった。
jobを知ってるってことは、この人もきっとjob持ちに違いない。
「じゃあ質問を変えよう。君達は全員jobを持っているね?」
jobを知ってるってことじゃなくて持ってるといった。
この言葉が意味する所は、俺達は全員戦える人間か確認してるってことだ。
「はい」
三葉校長の質問に日向が答えた。校長室に重苦しい空気が流れている。
当の校長本人は笑顔だが、俺達が嘘をついていないか、確認しているように見えた。
「それなら、君達には基本的な説明はいらないね?」
「はい」
「俺も三葉校長に聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「空?」
「かまわんよ。何でも聞いてくれ」
先程から三葉校長は余裕の姿勢を崩さない。
まるで俺達には何も隠すことがないというようにリラックスしているように思えた。
「この学校を包んでいる結界。あれは三葉校長のスキルですよね?」
「そうだ」
やっぱりそうなのか。校舎を包む結界が解けた時、真っ先に俺達の所に来たのはこの人だ。
だからこの結界は、この人が作ったものだとずっと考えていたがその通りだった。
「これは私のスキルの1つで、固有結界という」
「すごい。それが本当なら、この場所にいる限り無敵じゃないですか」
日向のいう通り、確かにそう思う。だけどこのスキルには、特別な条件があるに違いない。
「使用するための条件は何ですか?」
「条件か。今の所、特にそういったものはないな。しいて言えば、私はこのスキル以外のスキルは覚えられないし使えない」
つまり、この結界以外のスキルをこの人は使えないことになる。
他のスキルが使えない事じたいがハンデなような気がする。
「私のjobは少々特殊なスキルみたいでな。私が承認した人間以外は、中に入れないようになってるんだ」
「そんな反則級のスキルがあるのか。まるでチートみたいな能力だな」
「ある一定の強さの攻撃を受けると、この結界が解けてしまうというデメリットはある。だが、それ以上に私が承認した人間以外はここから出入りすることができないというメリットの方が大きい」
話を聞く限り、この校長の能力はチート能力としか思えない。
本当に万能なスキルだな。固有結界。
「俺達にそんなこと教えていいんですか? スキルやjobを知られるのは、自分の弱点もさらすことになるので、かなりリスキーだと思うんですけど?」
「そうだな。もちろんその危険もある」
「だったら‥‥」
「だがこのコミュニティーを守りたいものにとって、私はなくてはならない存在だ。私を殺すのはありえない」
「外部から来た人間はどうするんですか?」
「それは私が見極めているから大丈夫だ」
「見極めてるっていっても限度があるだろ?」
そんな調子で本当に大丈夫なのかよ。
もし、校長の意図と合わない奴が出てきたら、このコミュニティーは一瞬で崩壊するぞ。
「もちろんスキルに関しては、私の周りのものにしか言っていない」
「それなのになんで僕達に話してくれたんですか?」
「それは君達を信用してるからだよ。桜さんのことはもちろん、日向君と空君のことも色々と聞いている。木内君からね」
「お父さん、生きてるんですか?」
「もちろんだ」
「やったぁ」
「三葉校長。桜の両親はどこにいるんですか?」
「今は良子君は保健室にいる。春斗君は、食料探索に出ていていないから、戻ってきたら呼んでこよう」
「助かります」
桜の両親が生きていてよかった。正直あのゴブリンの大軍を見て、ダメだとさえ思った。
「おじいちゃん先生、ありがとうございます」
膝に着きそうなぐらい、桜は頭を下げていた。
両親が生きていることを知った桜は本当にうれしそうだった。
「よかったわね、桜ちゃん」
「はい。皆さんのおかげです。ありがとうございます」
悠里とうれしそうに抱き合う桜。その姿は本当の姉妹のようにも見えた。
「空、よかったね」
「そうだな」
これで少し肩の力も抜けた。
後は桜の両親と対面するだけだな。
「木内さんの両親を呼ぶ前に、まずは情報を交換しよう」
「わかりました」
「モンスターの数が多すぎて、あまり外に出れていないものでな。この近辺以外の情報には疎いんだ」
「僕達でよければ、何でもお話します」
その後、俺達は三葉校長にここにつくまでの経緯を話したのだった。
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