表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/316

ゴブリンの兄妹

「予想以上に敵が出てきませんね」


「そうだな」



 デパートを出てから歩き続けること15分、殆ど敵がでてこない。

 以前来た時はゴブリンの遭遇率は尋常じゃなかった。まるで棒を投げたらゴブリンに当たるんじゃないかと言うほど、ゴブリンがいた。

 それが今は全くといっていい程出てこない。あの遭遇率はなんだったんだってぐらいモンスターと遭遇しなかったのだ。



「本当にこの辺はゴブリンの縄張りだったみたいですね」



 桜のいう通り、その可能性は高い。そのゴブリン達はこの前親玉を俺達が倒した。

 だからこんなに敵が少ないんだろう。残ったゴブリンは今頃ちりぢりになっているに違いない。



「もしかすると、別の敵がこの辺りを縄張りにしようとしてくる可能性もあるな」


「えっ?」


「本気にするなよ。あくまで可能性の話だ」



 ない話ではない。この辺に有力モンスターがいなくなったんだ。他のモンスター軍団が侵攻してくる可能性もある。

 だから気を抜けない。いつどこでどんなモンスターに遭遇しても対応できるように、準備を怠ってはいけない。



「空、ちょっとこっちに来て」


「どうしたんだよ?」


「これ見て?」


「何だよ?」



 一体なんだよ。急に走っていったかと思えば、公園なんかに入って。

 日向に連れて行かれた先は、デパート近くにあるある公園。そこの茂みの中。

 その茂みの中から出てきたのは小さい緑のモンスター。ゴブリンの子供だった。



「ゴブリンの子供、それも2体か」



 雄と思われるモンスターが後ろの震えているゴブリンをかばうように前に立っている。

 後ろの雌と思われるモンスターはうずくまり、震えて動けないでいる。



「こいつ等は兄妹なんだろうな」



 きっとこの兄妹は逃げ遅れたのだろう。だからこんな茂みの中に隠れていたんだ。

 それを俺達に発見されて、せめて妹だけは守ろうと兄が立っているように見えた。



「威嚇してるようだけど、俺達を恐れてることが丸見えだ」



 前にいる兄の足が震えていて、虚勢を張っているように見える。

 武器もなく、とても戦える状態には見えない。



「どうしよう?」


「どうしようもこうしようも‥‥‥倒すしかないだろ?」



 ここで変な情をかけると、いずれ俺達人間に対してこの兄妹は復讐しようとするだろう。

 せっかく親玉を倒したんだ。ここでゴブリン族を根絶やしにした方がいい。



「でも、可哀想じゃない」


「変な情をかけてると、命取りになる。日向がやらないなら‥‥‥」


 俺がやる。ハンドガンを取り出し、銃口をゴブリンの方に向ける。

 一瞬肩がびくっと震えたが、兄の方も逃げようとはしなかった。



「悪いな。でもこれは、生きるか死ぬかの戦いなんだ」



 例え子供でも容赦は出来ない。これは人間とモンスターの生存競争でもあるんだから。

 ゆっくりとハンドガンのトリガーに力をこめた。



「先輩達、そんなに急いで一体どうした‥‥‥って、何やってるんですか」


「痛っ」



 頭に強い衝撃が襲い、そのまま前かがみになってしまう。

 おかげでハンドガンは地面に落ち、俺は前のめりにつんのめってしまう。



「誰だ。俺の頭をはたいたのは?」



 どうやら棒状のもので後頭部を殴られたみたいだ。

 いまだに後頭部が痛くてヒリヒリする。



「あたしです」


「やっぱり桜か」



 棒状のもので俺の頭をはたく奴なんて、1人しかいない。

 紫の槍を持った桜が俺の後ろで仁王立ちをしていた。



「空先輩、今その子達に何をしようとしてたんですか?」


「何って、こいつ等はモンスターだぞ。倒さないと、後でどんな仕返しがくるかわからない」


「それでもダメです。だってこの子達は戦う意思がないじゃないですか」


「私も桜ちゃんのいう通りだと思う。相手には戦おうという意思もないし、別に逃がしてもいいんじゃない?」


「悠里まで」



 難色を示していた日向だけならいいが、桜と悠里まで反対までされたらさすがにまずい。

 日向だけなら上手く言いくるめられる自信はあるが、桜と悠里を相手にするとなると歯が立たない

 不本意だが、ここは桜達の言う通りにするしかないな。



「わかった、わかったよ。このゴブリンの兄妹達は見逃す。それでいいな?」


「はい。ありがとうございます」



 桜はそのまま震えるゴブリン兄妹の前に行く。

 そのままかがみこんで、ゴブリン達と同じ目線になった。



「そういうことなので、お前達は早く逃げなさい。この怖いお兄ちゃんの機嫌が変わらないうちに」



 ゴブリン兄妹は顔を見合わせた。

 そして先程迄うなっていたゴブリン兄妹は静かになり、桜に一礼した後、2匹揃ってどこかにいってしまう。

 ゴブリン兄妹の姿が見えなくなるまで、桜は手を振り続けるのだった。



「桜、これでいいんだろ?」


「はい、ありがとうございます」



 立ち上がった桜は俺達の所へと戻ってくる。

 何か1つ文句でも言ってやろうと思ったが、桜の顔を見たら言う気がなくなった。

 だってそうだろ? うれしそうに笑っている姿を見せられたら、俺だって何も言えない。



「相変わらず、空は桜ちゃんには頭が上がらないね」


「言い換えれば、尻に敷かれてるってことね」


「お前等言いたい放題いいやがって」



 日向と悠里は俺の方を見てクスクス笑ってる。

 あの2人今に覚えておけよ。絶対次は俺が2人のことをいじってやる。



「あっ、先輩が照れてます」


「照れてるんじゃない。怒ってるんだよ」



 敵は殲滅できないし、桜には頭を叩かれるし俺としては踏んだり蹴ったりだ。

 だが、何故か悪い気がしない。

 俺の事を見て笑う3人を見ながら、そんな事を思うのだった。


ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします!


評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を押して頂ければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ