みんなと一緒に
エピローグになります
目を開けると、まぶしい光が俺の目に入ってきた。
光が登ってきた方を見ると、空から太陽が昇ってきたようだった。
「ここは?」
真っ白な壁に囲まれた白い部屋。どうやら俺はデパートの一室で寝かされているみたいだ。
それにしても体が重い。体が重いということは誰かが俺のことを枕にしているということである。
「グーー、グーー」
うるさいいびきが俺の耳に届く。疲れているときのいびきといい、俺のことを枕にして寝るのはあいつしかいない。
お腹の方を見ると見知った顔がいびきをかいて寝ていたのだった。
「やっぱり桜か」
頭を俺のお腹にのせ顔をこすりつけながら、気持ちよさそうに寝ているのだった。
「桜。起きろ、桜」
「へへっ、もうおなかいっぱいで食べられません」
「桜、朝だぞ。起きろ」
「えっ」
ゆっくりと目を開ける桜。
そして俺の方顔をみると、目に涙をためて俺の胸に飛び込んできた。
「おい、何だよ」
「空先輩‥‥‥本当に空先輩なんですね」
「俺だよ」
胸の中で泣きじゃくる桜。そんな桜を俺は頭を撫でながらあやす。
胸の中で泣く桜は目からは涙が流れ、鼻水までたれている。これじゃあ可愛い顔が台無しだ。
「大げさなんだよ。ちょっと寝てただけだろ?」
「何を言ってるんですか!? 空先輩は3日も寝たきりだったんですよ!!」
「3日!?」
俺ってそんなに寝てたの?
一瞬桜が嘘を言っていたのかと思ったが、目を見ると本気だったので信じることにした。
「でも、よかったです。先輩が起きて」
「悪かったな」
「本当ですよ。悠里先輩達も心配してたんですから」
「悠里が?」
いつも俺のことをからかってばかりの悠里が? とてもそんなことをするようには見えない。
そして部屋のドアが開く。そこから出てきたのは、今丁度噂をしていた悠里の姿だった。
「あら、やっと起きたのね」
「悠里」
「全く、空は本当に寝ぼすけなんだから」
俺達の所に来た悠里を含めて2人の話を聞くと、どうやら俺は本当に3日間も寝ていたらしい。
そしてその間、桜が俺のことを看病してくれたみたいだ。
「すごかったのよ、桜ちゃん。須田さんが海原さん達がいる部屋に運ぼうとしたら『そんなところに大事な先輩を寝かせたくありません!!』って言ってこの部屋につれてきて、看病も頑固として譲らなかったんだから」
「ちょっと、悠里先輩」
「おまけに3日間付きっきりで貴方のことを見てたんだから、感謝しなさい」
「そうだったのか。ありがとな、桜」
だから俺だけこんなに待遇がいいのか。桜が頑張ってくれたからなのか。
優しく桜の頭を撫でると、くすぐったそうに目を瞑っていた。
「別に。今回は日向先輩と空先輩が頑張ったんですから、これぐらいしてもらうのは当たり前ですよ」
「だってさ、空」
俺は何も言えなくなって、2人から目をそらした。
だって恥ずかしいだろ。自分がいないところでそんなことが起きてるなんて知らなかったんだから。
「そういえば、あれからどうなったんだよ?」
「そうね。その説明も必要だったわね」
そう言うと、三村はあの後の話をしてくれた。
まずゴブリンに関してだが、あれからデパートを襲ってこないらしい。
それだけではなく、この辺りにゴブリンの姿が見当たらなくなったみたいだ。
「それだけじゃないの」
それからこのデパートでもあれから変化が起きたらしい。
job持ちが増えたことにより、食料調達にいける人数が増えた為食料事情が改善された。
それとこの前の戦いでjobを取得できていない人は、job持ちの人がサポートして取得させる為の講習も開いているらしい。
その陣頭指揮を執っているのが日向みたいだ。悠里曰く、『その内須田さんに引き継ぐよ』と言っていたみたいだ。
「なんか大変そうだな」
「そうね、だからこそこのデパートの復興に力が入るんじゃない」
「復興か」
そうだな。確かにここは復興させないといけない。
その意味をするところは、やはり悠里もここから出て行く気はないように思える。
それもそのはずだ。あいつには母親がいる。自分の身内もいるんだから出て行く必要がない。
悠里はもちろんとして、ここの復興に力を入れている日向も場合によってはここにおいていくしかないか。
「悠里、ちょっと相談なんだけど‥‥‥」
「悠里ちゃん、ちょっと‥‥‥って、空!! 無事だったんだね」
抱きつこうとする日向の顔を思いっきり押しのけた。
「何で押しのけるの!?」
「男同士が抱きついてたら気持ち悪いだろ」
普通そうだよな。男同士で抱きついていても、いいことはない。
それなのに桜、何でお前はちょっと残念そうな顔をしてるんだよ。
「でも、ちょうどよかった。日向にも相談がある」
「相談?」
「あぁ」
悠里と日向には桜の両親を探しに行くことを伝えないといけない。
たぶん2人のことだから、この場所のことを考えて残ると思う。
「この後のことなんだけど‥‥‥」
「そうね。山村君の怪我が治り次第、ここを出るわよ」
「えっ?」
「何で貴方が驚いてるのよ? 桜ちゃんの両親を探すんでしょ?」
悠里の口からそのことが出てくるのかとは思わなかった。
というか、悠里はもここを出て行く気なの? 祥子さんがいるのに。
「悠里はいいの?」
「何がよ?」
「だって、お前の母親は見つかっただろ?」
「そうね、無事でよかったわ」
「だからここを出て行く必要はないんじゃないか? 母親も無事だったんだから」
悠里がここを出て行く理由がないのに、何故出てこうとする。
せっかく掴んだ幸せを手放す気なのか?
「貴方、何か勘違いしてない?」
「勘違い?」
「そうよ。だってあの時私達は約束したじゃない? 皆の両親を見つけるって」
「そうだな」
「それにまだ桜ちゃんと日向君の両親が見つかってないでしょ。それなのにここに残る必要なんてないわ」
悠里がそこまで俺達のことを思ってくれているとは思わなかった。
確かにそういった約束はしたが、この環境に馴れたことで忘れているとばかり思っていた。
「空が寝ている間に僕と桜ちゃんと悠里ちゃんの3人で話し合ったんだ」
「そうですよ。日向先輩も悠里先輩も私のお母さんを探したいって言ってくれました」
「なんだよ、決まってるならもっと早く言ってくれ」
思わず頭を抱えてしまう。想像では俺と桜の2人だけで出て行くのかと思った。
2人が来てくれるのなら、こんな心強い仲間は他にいない。
「だから早く怪我を治しなさい。須田さん達にここを離れることはもう伝えてあるから」
「それなら俺はもう大丈夫‥‥‥って痛っ!?」
「だめですよ。まだ怪我が治ってないんですから」
確かにお腹の辺りが、まだ痛い。これもゴブリンキングと戦った影響のせいか。
それとも桜がさっき俺のお腹で寝ていたことが原因なのかはわからない。
もしかする後者の可能性が強い気がする。
「だから安心して、今は休んでて」
「わかった」
「じゃあ、私達は行くわね」
「もう行くのかよ?」
「うん、僕もjob取得したい人達の為に講習会しないといけないから」
悠里が話していた講習会って日向がやってるのかよ。
そりゃあこんなイケメン王子様の日向が講師をするなら参加者も多いだろうな。
「桜ちゃんはこのままここにいていいからね」
「空のことお願いね」
「おい、ちょっと」
「わかりました」
「桜?」
「じゃあ後は頼むわね。楽しいひと時をお過ごし下さい」
そう言って2人は出て行ってしまう。
あの2人、絶対この状況を楽しんでやがるな。
結局部屋に残されたのは俺と桜の2人だけだった。
「それじゃあ、始めましょう」
「桜?」
始めるって何? なんか嫌な予感がする。
「まずは体を拭きましょう」
「桜、それは俺1人でできるから大丈夫」
「いいえ、ダメです。ちゃんとあたしが先輩のことをきれいにしますから」
いつのまにか両手にお絞りを桜は持っていた。
もしかしてさっき悠里達がいた時ろくに会話を参加しなかったのはこれを準備していたんじゃないだろうな?
「この後悠里先輩特性の塗り薬も塗りますからね。さぁ先輩、覚悟してください」
「もしかして桜、最初からこのつもりだったんじゃ」
「覚悟です」
ゴブリンキングがいなくなり、デパートを襲う脅威は無くなった。
だが、まだこの先様々なモンスターが俺達を襲ってくるんじゃないか?
自衛隊を壊滅させたオーク、夜に出てくるアンデッド。
俺達はその敵達とも戦わないといけない。
「ほら、先輩。早く脱いでください」
「やめろ! だから、自分で出来るって!!」
だがせんじて、まずは目の前の脅威からなんとしよう。
俺の服を脱がそうと目を爛々と輝かせる桜を見ながらそう思うのだった。
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。以上で1章完結になります。
2章は週明けの月曜日投稿予定です。少し時間が空きますがご了承下さい。
最後になりますがこの物語に興味を持たれた方は、ブックマーク登録&評価の方もよろしくお願いします。
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を押して頂ければ幸いです




