VS ゴブリンキング ヒーローの登場
「先輩!! 空先輩!! 起きて下さい!! 先輩!!」
うるさいな。誰だよ。耳元でこんな大声出す奴は。
「ダメ。悠里先輩の回復薬も効いてない。嫌‥‥‥‥死んじゃだめ‥‥‥」
「あぁ?」
うっすらと目を開けると、俺の目に飛び込んできたのは女の子の顔だった。
切れ長いまつげと整った可愛らしい容姿。それなのに目には涙が溜まっていて必死に俺に俺のことを呼びかける声
なんだよ。いつも見ている顔じゃないか。
「桜‥‥‥か」
「空先輩!! 気がつきましたか? 体は‥‥‥大丈夫じゃないですよね? とりあえず、これを飲んでください」
桜に謎の瓶に入った緑色の液体を飲まされた。
一口飲むごとに口の中身に苦味がまして、思わず噴き出しそうになる。
「何、これ。まずっ」
苦甘くてなんともいえない味をした液体。
もしかしてこれって‥‥‥‥。
「回復薬です。悠里先輩お手製の」
「だろうな」
もう2度と飲むことがないと思っていたあの回復薬か。
そういえば悠里に味の改善を要求していなかったな。悠里に会ったら、今度こそ味の改善要求を出そう。
「桜、ゴブリン達はどうなった?」
「ゴブリンはさっきの爆発で殆どがやられたか、逃げていきました」
「そうか」
それならよかった。本当はゴブリンキングを倒す為にやったことなんだけど、うれしいことに副次効果まであったようだ。
「前線にいた人達は?」
「全員無事ですよ。先輩の指示で、全員バリケード前に退避させたのがよかったようです」
「そうか」
ならよかった。あの爆発の被害にあったのは、ゴブリン達だけってことか。
「そうだ桜、ゴブリンキングは‥‥‥」
『倒したか?』という前に俺達を包んでいた土煙が晴れた。
そこにはボロボロの姿のゴブリンキングが、俺のことを睨みつけていたのだった。
「生きてるのかよ」
あの爆発に耐えやがった。こっちはボロボロなのに、なんて耐久力だ。
だが、奴自身も慢心創痍のようだ。体中から血が噴き出し、腰をおり立膝で俺達のことを睨んでいる。
おまけに自慢の銀の剣も折れ、銀の鎧も砕け緑の肌が見え隠れしていた。
「ワ‥‥‥マ‥‥‥‥ナイ」
「んっ?」
今ゴブリンキングが何か言ったような気がした。
はっきりとゴブリンキングは俺の方を見て、口を開く。
「ワレハ‥‥‥マケル‥‥‥ワケニハ‥‥‥イカナイ‥‥‥」
「こいつ話せるのか」
モンスターが話せることに初めて知った。
もしかするとある一定の知能を持った個体は話せるのかもしれない。
「ミナ‥‥‥ワレヲ‥‥‥シタウ‥‥‥コンナ‥‥‥トコロデ‥‥‥」
なるほどな、ゴブリンキングにも負けられない理由があるわけか。
このゴブリンキングはきっとゴブリン達全体をまとめているのだろう。
自分が負ければゴブリン全員が破滅する。それだけ大きなものをこいつは背負っている。
だからこいつは立つ。自分が負けるとゴブリン達全員が破滅するのがわかっているからこそ、ボロボロの状態でも俺達に立ち向かってくるんだ。
「お前の覚悟はわかった。だけど悪いな。こっちだって背負ってるものがあるんだよ」
俺や日向が負ければ、デパートにいる人達全員に危険が及んでしまう。
決してデパートから出ようとしなかった人達が、やっと重い腰を上げて立ち上がってくれたんだ。
そんな彼等の覚悟を無にすることは出来ない。
「空先輩!」
「あぁ」
こいつを倒す。倒して、俺達人間の方がお前達より強いことを証明するんだ。
「アァァァァァァァァァァ」
ゴブリンキングの唸るような咆哮。負けたくないという気迫が伝わってくる。
決死の覚悟で俺達に戦いを挑んでいるように見えた。
「わかった。最後まで相手をしてやるよ」
「先輩、動いてはダメです!!」
「ゴブリンキングが全てを捨てて戦おうとしてるんだ。それに答えなくてどうする?」
だが、体を動かそうと思ってもピクリとも動かない。
片腕どころか、指1本動かせない。
「何でだ?」
「至近距離からあの爆発に巻き込まれたんです。今はおとなしくしましょう」
「くそ!!」
必死に動こうともがくが、体がピクリとも動かない
どうやら慢心創痍なのはゴブリンキングだけでなく俺も同じようだ。
「動け! 動けよ!! 俺の体!!」
悠里お手製の回復薬を飲んだからといって、体がすぐ動くわけじゃない。
あの爆発に至近距離で巻き込まれて無事ではすまないことがわかってはいたが、ここまでダメージを負うとは思わなかった。
「まずいです、先輩。ゴブリンキングが立ち上がります」
「そうだな」
「何を落ち着いてるんですか? 早く移動しないと」
俺が落ち着いている理由は1つ。ゴブリンキングの後ろに迫る黒い影。
遠く離れている為、普通の人にはよく見えないが、鷹の目のスキルを持つ俺にはその人物がはっきり見えた。
「私が先輩を背負いますから、今は逃げましょう!!」
「大丈夫だ」
今俺がここを動いてしまうのはよくない。せっかくゴブリンキングが俺にご執心なんだ。それを逆手に取ろう。
やがてゴブリンキングは折れた剣を杖のようにして立ち上がり、ゆっくりとだがこっちに向かって歩こうとしていた。
1歩、また1歩。ドシン、ドシンと大きな音を立てて歩みを進めるゴブリンキング。徐々にその姿は大きくなっていった。
「先輩、このままここにいたら本当に死んでしまいます!!」
「大丈夫」
確かにゴブリンキングは脅威だ。丸太のような太い腕に大きい体。それにあの大爆発にも耐えられる強靭な体。
その全てが脅威だ。俺達の攻撃とは違い、1発でも攻撃が当たれば紙切れのように飛ばされるだろう。
「空先輩!!」
だけど俺は心配していなかった。だって俺達にはあいつがいるんだから。
やがてゴブリンキングの後ろに迫る影が、スキルを使わなくてもはっきりと肉眼で捉えられるのだった。
「なぁ、桜」
「何ですか?」
「主人公ってのは遅れて登場するんだよ」
「えっ!?」
何かを感じたのか、ゴブリンキングは後ろを振り返る。
ゴブリンキングの体が一瞬よろけたかと思うと、折れた剣で何かを受け止めている。
「何が起こってるんですか?」
ゴブリンキングが別の何かと戦っている。やがてはじき返されると、その人物が俺を守るように立つ。
見た目爽やかなイケメンフェイス。俺達の学園の王子様がお姫様を守るように、俺の前に立っていた。
「大丈夫!? 空」
「遅いぞ、日向。一体何分遅刻したと思ってるんだよ」
俺が軽口を叩くのは柴山日向。この物語の主人公が手負いのゴブリンキングと対峙していたのだった。
続きは夜更新予定になります。よろしくお願いします。
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