避難民の戦い
「やっぱり数が多いな」
ゴブリンの大軍がデパートに迫りくる中、俺はスナイパーライフルのトリガーを必死に引く。
ゴブリン達はすぐそこまで迫ってきている。スナイパーライフルでの狙撃も、正直ここが限界だな。
「よし! 行くぞ!!」
「行くってどこに行くんですか?」
「この下に行くんだよ。バリケード前でゴブリン達を迎え撃つぞ」
援軍が期待できない以上、俺達であの大軍を何とかするしかない。
スナイパーライフルを使い、目の前のガラス窓に大きな穴を空けた。
「先輩、まさかとは思いますけどここから飛び降りるつもりですか?」
「そうだ」
俺達には身体強化のスキルもあるんだ。高層ビルの屋上みたいなとてつもなく高い所から飛び降りるじゃないから、特に怪我もなく降りることが出来るだろう。
「無茶ですよ!? そんなこと」
「大丈夫だ」
「僕は空のことを信じてるから、先に下りるね」
そう言い残すと日向は飛び降りた。
「先に行くぞ」
「待ってください。あたしも行きますので、置いていかないで下さい」
日向の後に続き、俺も下に飛び降りる。
バリケードの前に無事着地すると、桜も俺の隣にいたのだった。
「なっ、問題なかっただろ?」
何か言いたそうな顔を桜はしているが、そんなことは後だ。
これから俺達はゴブリンの大軍達を相手にしないといけないからな。
「来るぞ」
「うん。僕が皆を守るからついてきて」
勢いよく走って行き、日向はゴブリンの大軍に突撃する。
その後ろで日向には続くように俺と桜もゴブリンの大群に突撃していった。
「やっぱりゴブリンの数が多いな」
ハンドガンとゴブリンジェネラルから奪った鋼の剣を使い戦う。
最初は問題なかった。ゴブリン自体元々強いモンスターではないので、簡単に倒せる。
だが数が数だ。5匹6匹ならまだ相手に出来る。だけど、それが10匹20匹で襲い掛かってくるんだ。
正直手がまわらなくなり、徐々にゴブリン達の軍勢に押されていく。
「空先輩!!」
「こっちは大丈夫だ」
10分20分と時間が経つにつれ、俺達は劣勢になって行く。
1体1体は簡単に倒せるが、数が数だけに倒しても倒してもきりがない。
次々とゴブリンが湧き出るように飛び出してきて、俺達に襲い掛かってくる。
「空先輩、一旦下がりましょう!! ゴブリンの数が多すぎます」
「多すぎるっていっても、どこへ逃げるんだよ?」
背中合わせに戦っている俺と桜の周りには大勢のゴブリン達が取り囲んでいる。
その数は1体2体といった数ではない。10匹以上のゴブリンが一斉に襲い掛かっているんだ。
逃げられるわけが無い。
「日向の奴はどうなってる?」
「わかりません。ゴブリンの数が多くてよく見えないです」
日向がいると思われる所に目を向けると、ゴブリンの大軍が日向のことを囲んでいる。
正直ゴブリンが多すぎて、あっちの様子がわからない。。
だがゴブリンの断末魔がこちらにまで聞こえてくるって事は、きっと順調に倒しているのだろう。
時折日向の声も聞こえるので、無事だということだけはわかった。
「空先輩、このままじゃジリ貧ですよ。何か対策を立てないと」
「わかってる!!」
このゴブリン達の大軍を倒す方法。そんな方法、見つかるわけが無い。
俺達にできることは時間稼ぎ。今は悠里達のことを信じて待つしかない。
「こんな所で死んでたまるか」
その時チラッとゴブリンの大軍の最奥にいる、冠を被ったゴブリンキングと目があった。
目があった瞬間、にやりとほくそ笑むゴブリンキング。
まるで俺達を家畜とみなしているその表情。見ているだけでもむかついてくる。
「あの野郎、こうなるのがわかっていてゴブリン達を連れてきやがったな」
たぶんこのゴブリン達は、ゴブリンキング達の集落で戦える全ての人数を総動員したのだろう。
俺達の戦力が殆どいないことを見越して、多少の犠牲が出ても確実に潰す為に来たんだ。
「空先輩!!」
「わかった。ここは俺が引き受けるから、桜は日向をつれて一旦下がれ」
「ダメです!! 空先輩1人だけじゃ、この大軍を抑えられません!!」
「じゃあどうするんだよ!! 日向と桜がやられたら、誰もゴブリンキングを倒せなくなるんだぞ!!」
火力の無い俺1人だけじゃ、絶対にゴブリンキングには勝てない。どうしても日向と桜の力がいる。
もし2人を失ってしまったら、それこそこの戦いは終わりだ。デパートは陥落する。
「ゴブリンぐらいなら俺だって余裕で倒せる。だから頼む。日向を連れて下がってくれ」
「‥‥‥‥わかりました」
「そういってくれると助かる」
「でも‥‥‥‥絶対死んだらダメですよ」
「当たり前だ。こんなゴブリンごときに遅れを取るわけないだろ?」
こんな雑魚相手に俺が絶対負けることは無い。それにまだ終わったわけじゃないんだ。
きっとこの間にも悠里達が避難民を連れてこようとしてくれている。
それまでの間こいつ等の攻撃を凌げばいいだけなんだ。ゴブリンなんて雑魚ごときに遅れは取らない。
「日向君!! 空!!」
「悠里ちゃん!」
「悠里」
ゴブリンを蹴散らしていると俺達が先程大穴を開けたガラス窓の前に悠里は立っていた。
何も持たず無防備に仁王立ち。防具を持たずにそんな所で突っ立ってたらたら危ないだろう。
「ごめん、待たせて」
「悠里ちゃん、危ないから下がってて!!」
「私は大丈夫。それよりもゴブリンを何体か、バリケードの前まで誘導できる?」
「バリケードの前?」
そんなことしたら、ゴブリン達にバリケードを破られるだろ?
そうなれば中の人達に危険が及ぶ。そんなこと出来るわけが無い。
「そんなことをしたらバリケードが破られるだろ?」
「大丈夫だから、私を信じて」
信じてって言われても、そう安々と『はい』って答えられるわけ無いだろ。
何百人の命がかかってるんだ。俺達が今やっていることが全て徒労で終わる可能性もあるんだぞ。
「わかった。悠里ちゃん、今そっちにゴブリンを送るね」
「ありがとう、日向君」
そういうと、日向はわざと何匹かのゴブリンをバリケード前に送る。
ゴブリン達は隙を見つけたと思ったのか、一目散にバリケードへと向かう。
「日向、何やってるんだよ」
「今は悠里ちゃん達を信じるかないよ。空もやろう」
俺の近くで剣を振るう目には一瞬の迷いも無い。
バリケードは絶対に破られない。悠里が絶対に何とかしてくれる。そんな目をしていた。
「あぁ、もう!! どうなっても俺は知らないぞ!!」
こうなった日向はいくら反論しても言うことを聞くことはない。
悠里にだって何か策があるはずだ。あいつは腹黒だが馬鹿じゃない。今は悠里のことを信じよう。
「桜、俺達もやるぞ」
「はい」
桜と一緒に、数匹のゴブリンをバリケードの方へと逃がした。
するとゴブリン達はバリケードを壊そうとバリケードの前に立つ。
先程日向が逃がしたゴブリン達と合流して、バリケードに体当たりを始めた。
「空先輩。心配なのはわかりますけど、今は悠里先輩を信じましょう」
「本当に大丈夫なのかよ」
ゴブリン達が嬉々としてバリケードに体当たりしている。まるでもうバリケードを壊したも同然だといわんばかりだ。
「空先輩、今は襲ってくるゴブリン達に集中しましょう」
「わかった」
バリケードがきしむ音が聞こえ、デパートが陥落するのも時間の問題のように思えた。
「終わった」
俺達の努力も全て水の泡となるのか
そう思った直度、ゴブリン達の頭上に大きな鉄の塊が落ちてきた。
「何が落ちてきたんですか!?」
「それより見ろよ。ゴブリン達を」
鉄の塊に潰され、グシャと音が鳴り潰れてしまうゴブリン達。
その姿は潰されたりんごを髣髴とさせたのだった。
いつもより長くなりましたので分割しました。
続きは本日の夜投稿します
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