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悠里達の戦い

6/29 前話『空達の戦い』ですが、加筆修正を行いました。内容は修正前と変わりませんが、空の心理描写等を追加しました。

興味がある方はそちらの話を読んだ後、こちらの話をご覧下さい。

「これからゴブリン達の大軍がやってきます。お願いです。私達と戦ってくれませんか?」


「無理だよ。あんな化け物にかなうはずがない」



 日向君達と別れてから、私と須田さんは避難民している人達に対して一緒に戦うように呼びかけていた。

 いくら私達が呼びかけても、誰も賛同してくれない。皆『怖い』『勝てるはずが無い』といって動くことすらしてくれない。



「そんな事ないです。普通のモンスターなら、ここにあるものを使えば充分倒せます」


「そんなこと言うなら、お前が戦えばいいだろ!!」


「‥‥‥っつ!!」


「悪いが俺は自分の命を危険にさらしてまで戦わないからな!!」



 そういうと、避難民の男性はどこかに行ってしまう。

 私の言葉は日向君達が言うよりも説得力が無い。だって、私は彼等に守られているだけだから。



「悔しい」



 無力な自分に。空の隣で一緒に戦う桜ちゃんと違って、ただ皆に守られている自分に。

 ただ守られているだけ。こんな時日向君達と違い、無力な自分に対して悔しいと思ってしまう。



「三村さん、そっちはどうだ?」


「ダメです」



 さっきから手当たり次第声をかけているが、全く効果がない。

 ゴブリンを倒せる武器が無いからと言い訳して、皆しり込みしていた。



「須田さんの方はどうですか?」


「俺の方もさっぱりだ」


「そうですか」


「やっぱり日向君達みたいな武器が無いと戦えないって言っている人が多いな」



 そうだ。私達が説得している人達の中には、『あの子達が持っている武器を貸してくれれば戦おう』という人達が多い。

 どれだけ物事を安易に考えているのだろう。あの武器は日向君達専用のものだ。jobを持っていない人が、使いこなせるはずが無い。



「八方塞がりですね」


「そうだな」



 須田さんがため息をついた瞬間、パンパンという乾いた音が鳴り響く。

 それは1発だけでない。何発もの銃声がデパート内に響き渡った。



「この音はもしかして‥‥‥‥」


「きっと山村君が発砲しているんだ」



 空の考えることだ。今はできるだけ敵の進軍を遅らせようと銃を乱射しているのだろう。

 そのための武器、スナイパーライフルだって持っている。今も私達のことを信じて戦っているんだ。



「さすがに銃だけじゃあの軍勢を倒しきることは不可能だ」


「そうですね。できても、時間稼ぎぐらいしかできないと思います」



 たぶん空も同じ事を思っているだろう。これだけでゴブリンの軍勢を撃退することはできないと。

 だけど戦わないといけない。どんな絶望的な結果になるかわかっていても、今はそうするしか方法がないから。



「一体どうすればいいの?」



 戦わない避難民達を戦わせる方法。どうやったらあの人達は戦ってくれるのだろう。

 バッドやナイフを持たせて無理矢理戦わせる? いや、そんなことは出来ない。

 そもそもモンスターと戦うのが怖くて、デパートの中から出ようとしないんだ。そんな人達に武器を持たせても、なんの役にもたたない。



「せめて、jobさえ手に入れば考えをかえてくれる人もいるとは思うんだけど」


「job‥‥‥」


「くそっ!! 何かいい方法はないのか? モンスターと戦わないで、jobを手に入れる方法が!!」



 そんなものあるはず無い。jobを手に入れるためにはモンスターを必ず倒さないといけない。

 だけどここの避難民の人達は、モンスターと戦いたくないと言っている。

 jobを手に入れれば戦うといっていたが、戦わないでjobを手に入れることなんて出来るはずがない。



「何か、何かいい方法は無いの?」



 こうしている間にも時間は過ぎていく。少しずつではあるが、ゴブリン達が近づいてくる。

 日向君達が頑張って戦ってくれているのに、私だけお荷物。そんな自分が嫌になる。



「外が騒がしくなってきたな」



 外の喧騒と共に、デパート全体に大きな地鳴りが起きる。

 それと同時に窓ガラスの割れる音。きっと日向君達がゴブリン達と戦いにいったに違いない。



「そうか。始まったかのか」


「日向君」



 2階の窓ガラスを見るとガラス張りの一部が割られており、そこから日向君達が外に飛び降りていく姿が見えた。

 遠距離戦ならまだしも、近距離戦闘になった際先頭に立って戦うのは日向君だ。

 桜ちゃんと空も前に出るだろうが、日向君の性格上2人を守りながら戦うと思う。

 別れる前に3人にはたくさんの回復薬を持たせたが、あのゴブリン達相手では焼け石に水でしかない。

 このまま3人が死ぬんじゃないか。そんな不安が私を襲う。



「三村さん、時間切れだ。説得は諦めよう」


「諦めるんですか!? もしかして、ここを放棄してどこかに‥‥‥」


「説得を諦めるとは言ったが、勝利を諦めるとはいってない」



 須田さんも弓矢を持ち戦闘の準備を始めた。



「須田さん、戦いに行くんですか?」


「そうだ!! 俺1人じゃ役者不足だろうが、いないよりはましだろ?」


「無理ですよ。今出て行ってもこの数じゃ相手になりません」



 ただでさえゴブリンとの数の差は圧倒的だ。たとえモンスターの中で最弱なゴブリン相手だとしても、数の差で簡単にやられてしまう。



「だったらどうしろって言うんだ? 戦う為の武器なんてどこにも無いぞ!! それこそ、jobを手に入れるしか‥‥‥」


「戦わないでjobを手に入れることが出来る手段」



 もしくは身の危険一切無く、jobを手に入れられればいいのか。

 あたりを見回すがそんなものはない。だって私達のいるところには家電や家具のコーナーしかないんだから。

 日向君達が持っているような立派な武器なんて、どこにもない。



「戦わないでjobを手に入れる方法」



 それでいて、自分達の身の危険も全く無い状態。



「つまり、自分達で戦わなくてもモンスターを倒せればいい‥‥‥‥‥あっ!?」


「どうした?」


「1つだけ思いつきました。自分達が戦わなくても、jobを手に入れる手段が」


「本当か!?」


「はい、ただそれには皆さんの力が必要です」



 私がその作戦を須田さんに話すと、須田さんが一瞬考え込むのが見えた。

 それもそうだ。この作戦は上手く行く保障なんて一切ない。下手をすれば、余計なことをして終わるだけだ。



「三村さん、本当にこの作戦は上手く行くのかい? 話を聞いただけでは、jobを取得できるようには思えないんだけど?」


「でも、これしか方法がないと思います」



 モンスターに怯えているあの人達を無理矢理戦わせるにはこれぐらいしないといけないと思う。

 自分達が安全な所にいて敵を倒せればいいんだから。この方法ならきっと協力してくれるはずだ。



「須田さんはさっきいったものをバックヤードから取ってきてもらってもいいですか?」


「‥‥‥‥わかった」



 渋々だが須田さんも作戦に載ってくれたみたいである。

 そうなると後は準備だけ。私が欲しいものはきっとバックヤードにあるはずだ。



「ありがとうございます。そしたら私は避難している人達の説得してきます」


「そしたら俺は作戦の準備をする」


「準備が出来たらここで落ち合いましょう」


「わかった」



 それだけ言葉を交わし、私達はそれぞれの作業分担の為別れる。

 このやり方は絶対に成功する。そう信じて。



「待ってて、日向君。今貴方達の援護をするから」



 絶対私が貴方達を助けるから。こうして私は急いで避難している人達の所へと向かう。

 そして思いついた案を避難民の人達1人1人に丁寧に説明していくのだった。

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