決戦前 作戦会議
「ゴブリンの大群が来ているって!?」
「はい」
屋上から急いで戻ってきた会議室。そこに俺達はいた。
行く道でであった眠そうな須田のおっさんもつれて、俺は日向達と話しあいを行う。
もちろん目的はゴブリンの大軍が来ていることを伝えるため。その為にこの部屋に人を集めたのだった。
「北東6km。早くて1時間後にはゴブリン達がここに到着します」
ゴブリンがどれぐらいのスピードがあるかわからないが、人の歩くスピードからして大体それぐらいだろう。
こっちも急いで準備しないと、行き当たりばったりだと、ゴブリン達の餌食になってしまう。
「それは本当なのか? 距離まで正確にわかるって言われても、俺はにわかに信じられない」
「空は遠くのものが双眼鏡のように見えるスキルを持ってるから、間違いないと思います」
「う~~ん、日向がそう言うなら信じるしかないようだな」
須田のおっさんは頭を掻きむしっている。俺の言っていることも半信半疑のようだ。
それもわからなくはない。須田のおっさんもスキルを持っているとはいえ、本当に俺がそんな遠くまで見渡せるスキルを持ってるのか疑っている。
だがそんな須田のおっさんも日向のいうことは信用しているみたいだ。
これも日向が身を呈してこのデパートを守っていたおかげなのかもな。
「ちなみに、デパートに向かっているゴブリンの数はどのくらいいる?」
「詳しくはわからないですけど、目算で100以上。下手をすると300体を超える可能性もあります」
「300体!? そんな数の相手と戦うのか」
「その中にはゴブリンの上位種もいます。とても今までのようにいくとは思いません」
話しながら考えるがらどう考えてもこっちが不利だ。
だが、これだけの数で来るってことは向こうも本気でこのデパートを狙いに来てるってことだろう。
俺と桜以外の全員が青ざめている。
「でも、今回の戦いを凌ぎ切ればモンスターの襲撃は当分なさそうですね」
「だな」
そうだ、ゴブリンキングまでもが俺達の所に向かってるんだ。これはチャンスに違いない。
ゴブリン達を統率するリーダーまで出てきたんだ。ゴブリン達を殲滅すればこのデパートにも平穏は訪れる筈だ。
「そんな膨大な数の敵、本当に倒せるのかよ」
「1つだけ策がある」
「策? それってどんな作戦なの?」
「簡単な話だ。ここにいる全員で、ゴブリンを撃退すればいい」
ここにいる全員とは、避難民も含めた数である。
人間の数だけ見れば、ゴブリンと互角、いやもしかすると数でも上回ってるかもしれない。
その戦力を合わせれば、充分ゴブリンと渡り合えるはずだ。
「でも、ここの人達はjobを持ってないんだよ」
「jobがなくても何とかなるはずだ。現に俺達は武器がなくてもゴブリンを倒した」
正確にはゴブリンの武器を奪い取ってとどめをさせたんだけどな。
でも俺達の時とは違って、ここには武器となるものもあるし、俺達が初めてゴブリンと遭遇した時よりも環境がいい。
何の武器もスキルも持っていない俺達だってゴブリンを倒せたんだ。
ここにいる人達でも、武器さえあれば充分通用するはずだ。
「日向はjobもスキルも武器もない状態でゴブリンを倒した。ただの高校生にできたんだ。大の大人ができないわけがない」
ゴブリン1体1体は力は強いが普通のモンスター達よりも弱い。だから充分渡り合えるはずだ。
もし1体だけでも倒せればjobも取得できるので、もっとゴブリンを倒しやすくなる。
「でも、ゴブリンの中には上位種もいるんだろ? それはどうやって倒すんだよ?」
「それは‥‥‥」
「僕の出番って事だよね?」
「日向」
「大丈夫だよ。みんながノーマルゴブリンを倒してくれれば、僕が親玉を倒してくるから」
相変わらず自信満々に宣言してくれる。だけど、ゴブリンキングと戦うのはお前だけじゃない。
「悪いけど日向、その戦いは俺も行くぞ」
「空も?」
「当たり前だろ。あんなデカ物、お前1人で何とかなるわけないだろ?」
正直囮にしかならないだろうが、いないよりはいい。少しでも日向が楽になるのなら、最前線でやるのもありだ。
それに桜にゴブリンキングを倒すって誓ったんだ。どんな手段を使っても絶対倒す。
「あたしも行きます!」
「桜?」
「空先輩が心配ですからね。あたしの槍なら、少しは支援できると思います」
「危険な戦いになるぞ」
「それも全部承知してます」
この様子だと桜はてこでも動かないだろう。今更付いてくるなともいえないし、桜を守りながら精一杯戦おう。
「わかった」
「山村君、私は何かすることある?」
「三村はここにいる人達を説得してくれ。それまでは俺達が持ちこたえる」
「ちょっと待て、もしそれでここにいる奴等が協力してくれない場合はどうするんだよ?」
「その時はこのデパートが陥落するだけですよ」
簡単なことだ。そうしたらここのコミュニティーがゴブリンに侵食されるだけ。
男は無残に殺され、女子供はゴブリンの慰み者になるだろう。
俺はその場合、最悪桜だけは逃がせるように動くつもりだ。外で戦ってるんだし、いくらでも逃げる手段はある。
「山村には悪いが、ちょっと千葉さん達に相談してきてもいいか?」
「別に俺はかまわないけど」
「悪い、一旦席を外す」
そう言って須田は部屋を後にした。
あんな奴らに相談して何になるのかわからないが、そうしたいならそうすればいい。
今は自分達のことを考えよう。ゴブリンキングめ、この前やられた分きっちり倍返ししてやる。
「日向、こんなこというのは悪いとは思ってるけど今回の戦闘のかなめはお前だからな。頼むぞ」
「うん、大丈夫だよ」
「悠里は怪我人の手当と中の人の説得を頼む」
「任せて」
よし、これでいいだろう。後は須田のおっさんを待って出ていくだけだ。
「空先輩、あたしには何かないんですか?」
「桜? とりあえず俺の側で元気に槍を振ってくれてばいい」
「あたしだけ指示が雑ですね」
だって桜はどうせ俺にくっついてくる気だろ?
直接指示が出せるのに、ここで何か言う必要はないように思える。
「ちょっと、みんなこれを見てくれ」
「須田さん、どうしたんですか?」
会議室のドアが開いたかと思うと、須田が勢いよく中に入ってきた。
その手には1枚の紙を持って。
「その紙はなんだよ?」
「千葉と藤山のやつ、逃げやがった」
須田さんから受け取った紙を見ると、こんな危険な場所にはもういたくないということと、政府指定の避難所に行く旨が書かれていた。
あの人達がどこでその情報を手に入れたかわからないが、どうやらもうここにはいたくないことと須田にもここいいる人達を見捨てて早く逃げるようにということが書いてあった。
「まぁ、そんなことになるだろうと思った」
きっと昨日の襲撃事件で、きっともうここにはいられないと思ったのだろう。
全く逃げ足だけは早い奴らだ。あまり期待もしてなかったけどな。
「悪いけど、俺は作戦は変える気はないぞ。逃げたい奴は勝手に逃げてくれ」
「空ばかりにいい恰好はさせられないよ」
「そうです。絶対にあいつ等に一泡吹かせます」
「説得は任せて。また皆で無事にここに戻ってきて、祝勝会を上げましょう」
「よっしゃあ! 行くぞ!!」
こうして、俺達は絶望的な戦いに向けて準備を始める。
待ってろよ、ゴブリンキング。お前のその余裕な表情、俺が絶対にゆがませてやるからな。
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