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決戦の夜明け

 太陽の光で目が覚めると、俺の隣で桜が寝ていた。あれから俺達は取り留めのない話をした後、どうやらそのまま寝てしまったらしい。

 ちょうど太陽が登り始めた所らしく、眩しくて思わず目を細めてしまう。



「グーー、スピーー」


「なんだ、この音?」



 音源を辿ると、どうやら桜のいびきらしい。

 桜はというと俺の隣で毛布を独占しながら、気持ちよさそうに眠っていた。



「全く気持ちよさそうに眠りやがって」



 まるで、普段と変わらない様子だ。とても決戦が行われる前とは思えない。

 しばらくこのまま寝かしておこう。



「それよりどうするかな」



 結局何一つ決まらないまま、朝を迎えてしまった。

 昨日の夜桜と2人でゴブリン対策について散々話し合ったが、具体案が出ないまま終わった。

 物量で圧倒してくるゴブリンを相手取るとなると、こちらも物量で押すしかない。

 だが、このデパートで戦えるのは怪我人を抜けば俺と桜と日向だけ。(須田のおっさんは未知数だから数には入れないでおく)

 この状況で正面からぶつかっても、数が数だ。

 勝ち目なんてあるわけがない。



「そうなると敵の親玉を叩くしかないか」



 だが、親玉を叩くとしても無数のゴブリン達を倒し、その上でゴブリンキングと戦わないといけない。

 運よくゴブリンキングまでたどり着けたとしよう。

 満身創痍の俺達では万全なゴブリンキング相手に手も足も出ない。



「ボロボロの状態でゴブリンキングとの戦闘か」



 そんなの、勝敗は火をみるより明らかだ。

 問題は大軍で襲ってくるゴブリンをいかに退け、消耗せずにゴブリンキングと戦うことができるかにかかっている。



「物量か」



 ここのデパートの人達が戦ってくれるなら、五分の戦いに持っていける自信はある。

 だけど、皆ゴブリン達を怖がってこの中から出ようとしない。

 モンスターに怯え続ける避難民達。それが俺達が今抱える1番の問題だ。



「なんかいい方法はないものかな」


「うーーん、もう、朝?」


「そうだよ。桜、おはよう」


「おはようございます、先輩」



 うっすらとまぶたをあけた桜が、俺のことを見上げている。

 頭は俺の肩に預けたまま、ゆっくりと顔を上げた。



「もう朝‥‥‥ですか?」


「そうだ」


「ゴブリン達は?」


「幸いなことにまだ来ていない」


「なら、よかったです」



 まだ眠いのか、舌ったたらずな返事をする桜。

 へにゃっとした笑顔を見ると、恐らくまだ頭が回っていないのだろう。

 俺の腕にしがみつく桜は、純粋に甘えているようにも見えた。



「桜、やっぱり俺達だけでここから出て行かないか?」


「それはダメです」


「何故だ?」


「昨日も言いましたけど、日向先輩のこともありますし、ここには悠里先輩のお母さんもいます」



 祥子さんのことだよな。確かにここから出て行くって話をした時に、悠里が1番反対しそうだ。

 連れて行くといってもあの人もjobを持っていない。それ以前にモンスターに怯えている。

 それを払拭させるには並外れた努力が必要になると思うけど、俺達と一緒ならその点は何とかなるだろう。



「だったら三村の母親も連れて行けばいい」


「でも、ここから出て行ってどうするんですか?」


「別の場所に拠点を作る。そこで新しい生活を始めればいい」



 そうすればここの人達の面倒を引き受けないで済むし、俺達は自由に動けるようになるんだ。

 今よりもずっといい生活ができる。



「そしたらゴブリン達はどうするんですか?」


「‥‥‥っつ!!」


「たとえここを放棄しても、またいつゴブリン達が襲ってくるかわかりません。あたし達はずっとゴブリンに怯え続けて生活しないといけないんですか?」


「それは‥‥‥」


「あたしはゴブリンに怯えて生活なんてしたくありません。出ていくにしても、あのゴブリン達を殲滅してから出ていきます」



 正論だ。この場所から出て行ったとしても、あのゴブリン達がいなくなるわけではない。

 そうなると、どこへ行ってもこのゴブリン達に襲われるという脅威がつきまとう。そんな怯えた生活なんて俺もごめんだ。

 それに俺はゴブリンキングを倒すと決めた。だから何があっても、その約束は破れない。



「この場所を出て行くって案は賛成です。だけどそれはあのゴブリン達を倒してからにしましょう」


「そうだな。桜の言う通りだ」



 何を弱気になってるんだ、俺は。桜と指切りしたじゃないか。ゴブリンキングを倒すって。

 方法は見つからないけど、今どうにかしてあのゴブリンの大群を倒すしかない。

 策なんて全く浮かばないが、今はそれが最善の様な気がした。



「それじゃあ朝ごはんを食べに行きましょう」


「悪いな、桜。どうやら朝食どころじゃないみたいだ」



 鷹の目のスキルを持つ俺だからわかる。今この場所にゴブリン達が向かってきていることに気付いた。

 昨日の倍の数、いやそれ以上の大群を率いてゴブリン達は来ている。



「北東6km付近にゴブリンの大群だ」


「えぇっ!?」



 驚いている桜を尻目に、俺はゴブリン達を観測する。

 普通のゴブリンの他に剣や防具を装備したゴブリン達の集団もいる。どうやらあっちも今回は本気で俺達を潰しにかかるらしい。



「それに、どうやら俺達の標的も来てるらしいぞ」


「標的ってもしかして‥‥‥‥」


「あぁ、そうだ」



 ゴブリンキング。大群の最後尾にいる王冠を頭に載せた、生意気そうな巨体は間違いなくそうだ。

 ゴブリンの集団もいままでより多い。どうやらあちらも今回は総力戦で来たみたいだ。



「どうやら向こうはこの戦いを最終決戦にしたいようだな」


「えぇ~~!? どうするんですか?」


「どうするもこうするも、戦うしかないだろ?」



 俺達に逃げ場はないんだ。やるかやられるか、生死をかけた一戦だ。



「よし、桜。下に行って日向達にこのことを伝えよう」


「ちょっと、待ってください! 寝起きでそんなに走れませんよ!!」



 慌てる桜をよそに、俺達は屋上を後にする。

 このことを報告する為、屋上から続く階段を降りて、皆がいる会議室の方へと急いで向かうのだった。

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