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満天の星空

「どうすれば、全員が満足する結果になるのかな」



 今のままじゃ全員が納得する結果にたどり着かない。

 日向や悠里に桜、全員が納得する結果。そんな結果なんて、本当にあるのかよ

 


「いっそうのこと悠里の親も連れて出ていくか。これなら悠里も納得するはずだ」



 それだとここにいる人達が助からない。もしかすると日向は最後まで反対するだろう。



「いい方法なんて、そう簡単に見つかるわけないか」



 そんな都合のいい方法等、簡単に見つかるわけがない。

 何とかならないのかと思いながら、俺は屋上の扉を開く。



「景色だけはすごくきれいだ」



 空一面に広がる満天の星空。暗くて空気が澄んでいる所では星がきれいに見えるという。

 モンスター達のおかげなのか人が少なくなったせいもあるだろう。皮肉にも町で光る電気は消え、空が明るく見えるのだった。



「まぁ、星空でも見ながらゆっくり考えるか」



 そのままゴロンと横になり、満天の星空を眺める。

 不思議だな。この満天の星空を眺めてると、俺の悩みなんてちっぽけなもののように思えてくる。

 実際はちっぽけなものなんだろう。いち高校生に考えられることなんて、たかが知れてる。



「お疲れ様です、空先輩」


「どうしたんだよ、桜? こんなところまで来て」


「先輩がサボってないか確認しに来ました」


「悪いな。俺は今絶賛サボってるところだ」



 あんな奴らの言うことなんてバカらしくて聞いてられない。

 もしゴブリン達が来るとしても日が明けた頃合だろう。

 バカ正直にここで真剣に見張りなんてしてられない。



「大丈夫ですよ。空先輩がサボるのは最初からわかってましたから」


「そうだろうな」


「それと空先輩が寒いと思ったので、毛布を持ってきました」


「ありがとう。借りるな」



 そう言うと桜は俺の隣に座り、自分が持ってきた毛布を俺と自分にかけた。

 あれ? なんかおかしいぞ。何で桜まで一緒に毛布に入ってるんだよ。



「桜、その毛布は俺専用じゃないのか?」


「いやですね。毛布を2つも借りられるわけないですよ。だから大きいものを借りて2人で入りましょう」


「入りましょうじゃなくて‥‥‥‥俺と一緒にいる気なの!?」


「はい、そうですけど。何か問題ありますか?」



 問題ありますか? じゃなくて問題がありすぎだろ?

 お互い毛布をくるんだ状態。この態勢だと俺と桜が密着する形になってしまう。

 年頃の付き合ってもいない男女がこんなことするなんてまずいだろ。桜の親御さんが見たら、悲しむぞ。



「桜、この体勢はちょっと‥‥‥]


「大丈夫ですよ。私も気にしません」


「でも親御さんが‥‥‥」


「お母さんも気にしないと思いますよ。むしろもっとくっつけっていうと思います」



 あぁ、そうだな。あの人はそういう人だ。むしろもっと手を出してやれと俺に桜をけしかけるだろう。

 俺が小言を言うのをあきらめたと悟ったのだろう。ニコニコと笑う桜は、そのまま俺の肩に頭を預けてきた。



「桜?」


「先輩はどう思ってるんですか?」


「何が?」


「千葉さん達のことです。日向先輩たちはあんな風に言ってますけど?」


「正直な話‥‥‥俺はあいつらと関わりたくない」



 自分達だけ安全なところに隠れていて人に命令することしかしない。

 あげく俺達に見張りの任務までさせた。そんなあいつらの所になんて、俺はいたくはない。

 もし日向が出ていく決断をするなら、今すぐにでも出ていきたいと思う。



「そうですよね」


「桜はどう思ってるんだよ? あの人達のこと?」


「あたしも嫌です。あんな人達と一緒にいたくなし、悠里先輩のことがなければ、今すぐにでも出ていきたいです」


「そうだよな」



 あの人達がいる所で活動していても、意味がない。

 結局今だって日向と悠里のことをいいように使っているだけだ。

 櫛引さんも海原さんもよくあいつ等の指示に従って動いているよな。

 俺だったら速攻で出ていってる。



「なぁ、桜」


「何ですか?」


「桜さえよければ、2人で出ていかないか?」



 それが最善の選択のように思える。日向と意見が対立している以上、俺達だけで出て行くのが1番いいのかもしれない。

 それに桜の両親を探さないといけないしな。何としてでも、あの中学校に行かなければいけないとさえ思う。



「確かにいいお誘いですね」


「だろ?」


「ぜひお願いします。だけど‥‥‥それはゴブリン達を倒してからです」



 意外だ。桜がそんなことを言うなんて。

 いつもなら『じゃあ今夜にでも行きましょう』って言いそうなのに。



「理由を聞いてもいいか?」


「私のお母さん達がいる中学、あそこの近くにゴブリンの住処があるからです」


「確かにそうだな」



 学校に向かっている途中で大量のゴブリンとであった。しかも上位種の個体とは戦闘にまで発展した。

 桜の言う通り、ゴブリンの住処があの近くにいることはわかった。



「きっと今はあの近くには行けません。ゴブリン達がいるから」


「そうだな」



 だから、そのゴブリンを倒さないとあの中学には近づくことさえできない。



「でも、あのゴブリンキングさえ倒せば、ゴブリン達が元の烏合の衆に戻ると思うんです」


「俺もそう思う」



 今ゴブリン達を統率しているのはゴブリンキングだ。

 今日はそのNO2と思われるゴブリンジェネラルは倒した。

 もし次襲ってくるとすれば、必ずゴブリンキングが出てくると思う。

 そいつさえ倒せば、きっとモンスター達も今のように集団で行動してくることはなくなるだろう。



「だから絶対倒しましょう。ゴブリンキングを」


「あぁ。あいつだけは絶対倒す」



 デパートでの二の舞には絶対ならない。次あった時は俺があいつを倒してやる。



「じゃあ指切りしますか?」


「指切り?」


「そうです。こう、お互いの小指をつないで」



 桜は俺の右手の小指と自分の右手の小指をからめあう。

 それは誓いの儀式のようにも見えた。



「行きますよ。指切りげんまん嘘ついたら先輩にとっておきの女装をしてもらいましょう」


「そこは針千本じゃないのかよ!?」


「いえ、先輩に1番ダメージが与えられるのが女装だと思いました!」



 この後輩はなんてことを考えやがる。目つきの悪いうヤンキーかぶれの女装姿なんて、需要ないぞ。



「せっかくだから日向先輩と絡んでもらうのもありですね」


「気持ち悪い妄想をするな」



 ふと、お互いの話が止まりそのまま笑いあう。

 その時今この場だけは平和でいいなって思った。



「絶対に倒すぞ」


「はい」


 そう言い、俺達は満天の星空を眺める。

 この壊れた世界になって、平和な時が来ないんじゃないかと思った。

 でも、それは違う。今この時、桜が俺の隣で寄り添っているこの時間は平和だなと感じたのだった。

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