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隠されていた部屋

「なるほどな。それで昨日デパートは無事だったけど、今日になってゴブリンの大群が襲ってきたってわけか」


「うん」



 俺達の寝室となる会議室。そこで俺は俺達がいない間のデパートの様子を桜と共に聞いていた。

 あれからゴブリン達が落とすドロップ品を回収したが回復薬や薬草等、薬の材料になるものしかなく、めぼしいものがなかった。

 他はといえばいつものように鉄くずや石が大量にドロップしたので、それは俺のアイテムボックスに全て収納した。

 その後俺達は日向についていき、裏口から入り会議室の中で一息つくのだった。



「今日のゴブリン達の中に、ゴブリンキングはいなかったか?」


「いなかったよ。だけど、普通のゴブリンだけじゃなくて空も戦った鎧や剣を持ったゴブリン達はいた」


「あいつ等か」



 俺の頭の中にゴブリンジェネラルの姿が浮かぶ。確かにあいつ等はゴブリンの中でも上位種に位置するもの。日向が苦戦するのもよくわかる。



「最初は順調に数を減らしていったんだ。だけど、時間が経つにつれてゴブリン達が連携して僕達を攻撃してきて、それから押されぎみになって‥‥‥‥」


「そこにいる人達だけでは対応できず、崩壊寸前だったってわけか」



 あんな指揮系統が取れる奴が2体もいたと考えると確かに骨が折れるな。

 今まで個々に攻撃をしてきた奴等が、急にまとまって攻撃してきたんだ。日向達はさぞ驚いたに違いない。

 特にゴブリンジェネラル。あれは俺達もゴブリンソードと出会ってなければ驚いていたと思う。



「何体ぐらいゴブリンがいたんだよ?」


「数えてないからわからないよ。でも、最低100体以上はいたと思う」



 最低100体、よく日向はその数のゴブリンを相手にしたよな? 普通なら逃げ出していてもおかしくないのに。

 しかもそのゴブリン軍団の中にゴブリンジェネラルのような上位種もいた。そうなると余計に戦いにくいだろう。



「でも、そんな数のゴブリンをよく1人で相手にしてたよな」


「僕1人だけじゃないよ。櫛引さんや海原さん、それに須田さんも最初は一緒に戦ってくれてたんだ」



 あれ? そうなると何故俺達が到着した時、その2人はデパートの前にいなかったんだ?

 日向が1人で剣を振っていたように見えたけど。援軍といえども、須田のおっさんが最後に来たぐらいか。



「そういえばあの2人はどこにいるんだよ? 全然姿が見えないけど?」


「たぶんこっちだと思う。悠里ちゃんにもドロップ品を渡さないといけないから、一緒に行こう」


「悠里もいる? ちょっと待て、日向。行くって、どこに?」


「ついてきて」



 部屋を出る日向について行くと、とある大きな部屋の前に立つ。

 大きく真っ白なドア。そこをノックすると『どうぞ』という声が聞こえてきた。



「僕だよ、入っていい」


「日向君? 大丈夫だよ」



 中から悠里の声が聞こえ、日向が部屋の中に入る。それに続いて俺も中に入った。



「どうなってるんですか!? この部屋は!?」


 

 部屋の光景を見て驚いている桜は、俺が言いたかったことを全て代弁してくれた。

 桜がその様に言うのも無理はない。日向が案内してくれた部屋に足踏み入れると、そこには凄惨な光景が広がっていた。

 


「うっ‥‥‥」


「痛いよ!! 痛いよ!! お母さん、お母さん!!」



 中には大勢の怪我人が至る所に寝かされていた。

 あるものは頭から包帯を巻き、あるものは目を瞑ったまま動かない。

 痛みのせいで騒いでいる男の子や目の焦点が合っていないものまでいて、中には既に死んでるのではないかと思われる人達までこの部屋にいたのだった。



「何だよ!? この部屋は!?」


「怪我をしている人達を寝かしている所だよ。この世界に変化して、デパートに避難して来た人達の中で怪我をした人達は全員ここに寝かせていたみたい」


「みたいって、俺達はそんな話を一切聞いてないぞ!!」


「うん、千葉さん達が隠してたみたいなんだ。櫛引さん達がデパートに帰ってきた時に教えてもらって、それから悠里ちゃんが薬を飲ませたり包帯を巻いたりして皆の治療をしてるんだよ」



「悠里が!?」



 なるほどな。それで先程から悠里の姿が見えなかったわけか。

 部屋の端の方を見ると、悠里と祥子さんが怪我をしている人達に回復薬を飲ませていた。



「悠里ちゃんが作ってくれた薬のおかげで、ここにいる人達の怪我の症状がどんどんよくなっていってるんだよ」


「そうなのか?」


「うん。悠里ちゃんの作った薬は回復効果がすごく高いみたい」



 そうなのか。俺は悠里の回復薬を飲んだことがないからわからないが、効果は他の人よりもあるってことだよな。

 それは例えある程度重症の怪我を負ったとしても、悠里の薬を使えば直せるってことだ。

 


「悠里はすごいな」


「うん。怪我人がいる人達の場所を教えてもらった時、悠里ちゃんが『私が全員治すわ』って張り切ってたよ」


「そうか」



 今の人を助ける悠里の姿は白衣の天使を想像させた。それぐらい必死になって、怪我人達を助けようとしている。



「でもここを教えてくれたおかげで、1つ腑に落ちたことがある」


「何ですか?」


「ここに来た時、このデパートも襲われたって祥子さんが言ってたよな?」


「言ってましたけど? それがどうしたんですか?」


「あの話を聞いた時、本当に怪我人はいなかったのかと思ったんだよ。オークやゴブリンに襲われたって言うなら、怪我人がいたとしてもおかしくないだろ?」



 普通に考えて、ゴブリン達がデパートを襲ったとなれば、捕獲された人や殺された人の他に怪我人がいてもおかしくないはずだ。

 それがまさかこんな形で発見するとは思わなかった。

 


「それにしても、何でこの場所のことをあいつ等は黙ってたんだよ」


「酷い光景ですね」


「だな」



 悠里がいなかったらどうするつもりだったんだよ。ここにいる人達全員死んでたんじゃないか。



「でも、ここにいる人達はまだ恵まれている方だよ」


「何でだよ?」


「実は昨日聞いた話だけど、怪我をした後亡くなった人も結構いたみたいなんだ」



 酷い話だ。ろくな治療もしないまま、放置されていたら普通は亡くなるよ。

 たぶんあいつ等のことだから『怪我をしたのは自分達の責任だから自分達で治療しろ』とか、そんな感じで放っておいたんだろうな。

 そうでなければ、こんな風に放置なんかしない。



「日向君、こっちの手当ては終わったよ‥‥‥って、桜ちゃん!? よかった! 生きてたのね!」


「わっ!? 悠里先輩!!」



 桜を見るなりその体を抱き寄せる三村。桜も驚いてるようだが、嫌そうな顔をしてない所を見るとまんざらでもない様子。



「ママ!! 桜ちゃん達が戻ってきたよ!」


「だから言ったでしょ。あの子達は絶対無事だって」



 次に祥子さんが悠里の後ろから出てきた。悠里と桜を包み込むように抱きしめるのだった。



「悠里先輩のお母さん?」


「本当に心配したのよ。私もそうだけど、悠里と日向君はもっと心配してたんだから」


「すいません」


「謝らなくていいの。無事に帰ってきてくれればね」


「はい」



 桜も2人に抱きしめられたまま、ゆっくりと目を閉じていた。

 まるでこみ上げるものを抑え、悠里と祥子さんのぬくもりを全身でかみしめているようだった。 



「桜ばかりじゃなくて、俺の心配はないのかよ?」


「あら? 貴方はいつの間にそんな所にいたの?」


「俺の扱い雑すぎない!?」


「ふふっ、冗談よ、冗談。空も生きていてよかったわ!」


「冗談に聞こえないからな」



 悠里はクスクスと笑っているが、悠里の冗談だけは冗談に聞こえないんだよな。

 でもどこか懐かしく思う。たった1日しか経ってないのに、よく懐かしいとか思うよな。

 悠里の笑っている姿を見て、俺はそんなことを思うのだった。

いつもより長くなりましたので2つに分割しました

本日の夜続きを更新させていただきますのでよろしくお願いします


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