VS ゴブリンジェネラル
ゴブリンジェネラルは大きな巨体を揺らしながら、俺に攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃を間一髪かわしながら、剣で相手のことを威嚇しハンドガンの引き金を引き続けた。
「これぐらいの敵になると、ハンドガンはあまり効果がないか」
効果がない事はない。弾は確実にゴブリンジェネラルに当たっているし、痛そうなうめき声も聞こえる。
だが、どの攻撃も致命傷になるダメージには至らない。ゴブリンを一撃で絶命させるような、一撃必殺のような効果は期待できないみたいだ。
「もし致命傷を与えるなら、近距離からの狙撃か」
ゴブリンソードと戦った時のような、頭部に銃口を突きつけての攻撃。
だけど、この相手はそう言った攻撃を許さない。ひたすら剣を振り続けているため、ゴブリンソードのように、俺に近づく隙を与えようとはしなかった。
「向こうも俺の銃を危険視してるってことだな」
ゴブリンソードのように、俺に対する油断は一切ない。やるかやられるか。目の前にいる俺のことを日向同様の強敵だと認めたってことだ。
「面白い!!」
ゴブリン軍団のNo2。そいつが本気で俺と戦おうとしてくれている。
正直俺にとってはありがたい。ゴブリンキングとの前哨戦。絶対に負けるわけには行かない。
「となると、今俺にできることは‥‥‥‥」
ハンドガンや剣を使用して出来るだけ敵を弱らすこと。もし少しでも隙があるならば、近距離からハンドガンで致命傷を与える。もしくはスナイパーライフルを使い、相手を倒す。その2通りだ。
1番いい方法は弱ったゴブリンジェネラルを剣かハンドガンの一撃で倒すこと。
倒す為には相手の隙つかないといけない。
「中々難解なミッションだな。おっと」
剣だけではなく盾も振り回してきたゴブリンジェネラル。その攻撃を間一髪かわし、1歩後ろに下がり距離をとった。
「危ない危ない」
もう少しで盾の攻撃が俺に当たる所だった。それをみて隙を見せたのだと思ったのだろう、ゴブリンジェネラルは俺に向かって突進してきた。
「クェェェェェェェェェ!!」
勢いと力に任せた剣の攻撃。剣では受けきれないと感じ、咄嗟に剣をしまいハンドガンで攻撃を受ける。
ガキンという金属がぶつかる音が聞こえ、そのまま俺は後ろに弾き飛ばされアスファルトで舗装された地面をゴロゴロと転がっていく。
「いってぇな」
かなり遠くまで吹き飛ばされたが、打ち身以外の怪我はなさそうだ。
ハンドガンを見てみると、傷一つなく新品そのもの。どうやらゴブリンソード戦で剣を折ったのはたまたまではなさそうだ。
「助かった」
巨大なゴブリンジェネラルが突進してくるのは迫力があるな。
もしあの攻撃がハンドガンではなく自分を捕らえたらと考えると、背筋がぞっとする。
「1撃1撃が勝負ってことか」
俺はその場に立ち上がりのそのそと歩くゴブリンジェネラルのことを見る。
1歩1歩ゆっくり歩き、慎重そのもの。たぶん俺が何か別のことをたくらんでいると考えているのだろう。
盾で自分の身を隠しながら、1歩1歩慎重に俺の方へと向かって来た。
「ゴブリンソード達とは全然違うな」
あいつ等は俺のことを自分より下だと見積もり、油断しきっていた。だからこそチャンスがあった。
逆にこのゴブリンジェネラルは俺のことを過大評価しているからなのか、慎重に行動しているように見える。
「ゴブリンによって性格が違うのかよ。足して2で割ると丁度いいんだけどな」
ゴブリン達は全員が全員俺達人間のことを下に見ているのだと思ってた。どうやらゴブリンによっては、慎重に戦う個体もいるらしい。
「だからこそ厄介だな」
このゴブリンのように慎重すぎる相手には俺のはったりや奇襲攻撃は通用しない。
ある意味、俺にとって天敵とも言える存在だ。
「どう戦う」
俺の攻撃とは違い、ゴブリンジェネラルの攻撃は1発1発の攻撃が致命傷だ。
こっちがちまちまとハンドガンで攻撃していても、その努力が一瞬で無に帰してしまう。
上手く攻撃をいなさないと、一瞬で殺される。そんな緊張感があった。
「グォォォォォ!!」
「おっと」
剣を取り出し、ゴブリンジェネラルの攻撃を受ける。何とか攻撃を捌くが、俺の持っている剣がミシミシと音が鳴る。
「もう限界なのか!?」
さすがに限界が早くないか?と思ったけどもう遅い。
ゴブリンジェネラルの一撃で剣が粉々に砕け散ってしまう。
「空先輩!!」
ゴブリンの鋭い剣筋が俺を襲う。剣が体に触れる寸前に再びハンドガンを前に出しなんとか防いだ。
だが防いだだけでは終わらなかった。その衝撃で俺は地面に押し倒されてしまう。
「今加勢に行きます!!」
「大丈夫だ」
「でも‥‥‥」
「こっちは大丈夫だから!! 桜は自分のことに集中しろ!!」
桜達も大量のゴブリン相手に苦戦している。今もし桜がこっちに来たら、バリケード前で戦っている奴がいなくなる。
そうなると須田のおっさん1人でゴブリン達を抑えないといけないが、弓使いのおっさんに全てを任せるには荷が重い。
だからここは何が何でも俺1人の力で片付けないといけない。
「わかりました。絶対に死なないで下さいね」
「当たり前だ」
「約束破ったら顔に落書きしますから。覚悟してください」
とんだ子供じみた約束である。顔に落書きするなんて、お正月の羽根突き並みの罰ゲームだ。
「さてと、どうするかな」
最強の防具であるハンドガンがあるから、いくら剣で攻撃されてもある程度は防ぐことが出来る。
現に今もパワーで押されているが、俺の体にダメージは無い。むしろゴブリンジェネラルの剣の方がハンドガンの耐久性に負けているように見えた。
「でもこれじゃあ、堂々巡りだ」
ゴブリンジェネラルに決定的な攻撃を当てられなきゃ俺が死ぬ。
だからといって頼みのスナイパーライフルは今使えない。
せめてゴブリンジェネラルが動きを止めないと何も出来ない。
「ゴブリンジェネラルの動きを止める方法」
例えば、少しの間動けなくなるとか。そういう方法があればいいと思う。
「例えば相手の視界を奪うとか‥‥‥それだ!!」
1つだけ視界が奪えそうな方法がある。ただ、この方法はあくまでうまくいけばの話だ。
正直上手く行く保障はないが、試してみる価値はある。
「これにかけるしかないか」
目の前のゴブリンジェネラルは、俺を殺そうと必死に剣を押し込んでいる。目を大きく開け、血走った目からは全く余裕がなさそうに見えた。
「見てろよゴブリンジェネラル。今お前の顔を歪ませてやるからな」
俺がアイテムボックスからあるものを取り出す。
その蓋を乱暴に開くと、ゴブリンジェネラルの目の部分めがけてかけた。
「グォォォォォォォォ!?」
「よし効いた!」
俺がゴブリンジェネラルにかけたもの。それはスーパーで手に入れたデスソースだった。
これはあまりにからく劇物の為、絶対に目に入れないように注意書きにもかいてある。
もし目に入れば視力低下を起こし、瞬間的だが目も痛くなるはずだ。
わずか数滴でもこの症状が起きる。それを液体に大量にかかってしまうとどうなると思う?
ゴブリンジェネラルは初めての痛みに耐えかねてるのか、目をこすりながら悲鳴をあげる。
「こすると余計に痛いのにな」
こすると逆効果で、手についたデスソースまで目に入り余計に痛みが増す。
目が見えないからかフラフラとしており、剣と盾は手放してしまっている。
「勝負ありだ」
装備品からスナイパーライフルを俺は取り出す。
目標は顔をくしゃくしゃにゆがめ悶絶するゴブリンジェネラル。
至近距離から、そいつの頭部に狙いを定める。
「悪いな。今回は俺の勝ちだ」
トリガーを引くと銃弾がゴブリンジェネラルの頭部を貫通する。
貫通後、短いうめき声を上げた。
「まだまだ」
2発目、3発目、4発目と時間をおかずに連続でトリガーを引く。
その全てがゴブリンジェネラルの頭部に命中し、やがてその巨体が地面に沈む。
そのままピクリとも動かなくなったゴブリンジェネラルの絶命を確認するのだった。
「勝負あったな」
どうやら今回も俺はまた勝てたらしい。らしいじゃない。勝ってしまった。
正直勝てると思わなかった。でも何とかギリギリ勝てた。全くスマートな方法じゃないけどな。
「これはもらってくぜ」
落ちていた剣と盾を拾い、アイテムボックスに収納する。
どうやらゴブリンジェネラルが持っていたのは青銅の剣というもので、ゴブリンソードのものよりも高性能のように見えた。
「そうだ!! 日向は?」
日向の方を見ると、丁度ゴブリンジェネラルの心臓に最後の一撃を入れているところだった。
奇策を使う俺とは違い、正攻法で日向は勝利したらしい。
胸に剣が刺さった状態ゴブリンは絶命し、それを日向は引き抜くと肩で息をしながら鞘にしまうのだった。
「さすが、勇者様。俺とは違うな」
デスソースを目にかけて視界を奪うような姑息な作戦ではなく、ちゃんと剣技で戦い勝負に勝った日向
その姿を見ると、俺と戦ったゴブリンジェネラルのことが気の毒のように思えた。
「空先輩、日向先輩!! お2人とも大丈夫ですか!?」
他のゴブリン達も全滅させたらしく、桜が俺達に向かって手を振っている。
結局この戦いで俺が得たものはなさそうだけど、デパートが無事守れてよかった。
デパートの方から、俺に向かって駆け寄ってくる桜の姿が見えた。
「空先輩! ご無事でよかったです」
「まぁな」
「てっきり、あの大きなゴブリンにやられたかと思いました」
「はは」
あやうく死にそうになったとは口が裂けてもいえない。
現に体中傷だらけでボロボロだし。デパートに行ったら悠里に頼んで治療してもらおう。
そう心に決めた。
「空!!」
反対側から日向が駆け寄ってくる。
駆け寄ってきた勢い、そのままに俺に抱きついてきた。
「おい、危ないって」
「やっぱり空だ! 生きててよかった」
その笑顔は、まるで死んだ奴が生き返ったかのような喜び方。
会ったら文句の1つでも言ってやろうと思ったが、日向の喜び方を見ると何も言えなくなるのだった。
「日向先輩ばかりずるいですよ」
「ずるいですよじゃなくて‥‥‥‥わっ!? お前まで抱きつくなよ桜」
日向に負けじと桜も俺の背中に抱きついてくる。
正直重いし辛い。後ろの柔らかいものの感触を楽しむ余裕もない。
「空先輩の背中温かいです」
そのように呟く桜。
気持ち良さそうな表情は、本当にさっきまでゴブリンの大群と戦っていたのかと思うほど、平和だった。
「全く、世話がやけるやつらだ」
地面に座って脱力し、空を見上げる。
雲ひとつ無いきれいな青空が、俺達のことを祝福してくれているように見えた。
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