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慢心創痍の勇者

「桜、準備出来たか?」


「はい、大丈夫です」



 いつもより少し遅い時間に起きた俺達は、遅めの朝食を一緒に食べた。その後それぞれ簡単な支度をして玄関の前に集合したのだった。



「忘れ物はないよな?」


「はい、大丈夫です」



 昨日荷造りをしていたおかげで、出発までスムーズに動くことが出来た。

 デパートに到着する時間だけど今日回収する物資のことも考えて、遅くても夕方までにはデパートには着くだろう。

 もし今問題をあげるとすれば、桜の服装くらいだ。



「桜、その格好で本当に大丈夫? 動き辛くないの?」


「大丈夫ですよ。それよりどうですか? この格好は?」



 

 青のフレアスカートに茶色のビッグスエットを着ている桜。

 確かに見た目は可愛い。可愛いけど、見るからに動き辛くそうに見えた。



「あぁ、可愛い可愛い」


「適当すぎます!! 昨日もそうでしたが、もう少し気持ちをこめて言ってくれてもいいじゃないですか!!」


「そう言われてもな‥‥‥」



 俺の語彙力じゃいくら考えたって、それ以上の感想なんか出てこないんだからしょうがないだろ。

 そんなに頬を膨らませて俺の事を見ても、何も感想は出てこないぞ。



「桜が着る物はセンスもいいし、どの服を着ても可愛いからな。他に言葉が見つからないんだよ」


「‥‥‥そう言うところですよ」


「そういうところ?」


「何でもないです。それより早く行きましょう」



 先程より機嫌がよくなった桜が靴を履き、外へ出る準備をする。

 機嫌がよくなってよかったとは思うけど、先程までの会話に何か機嫌がよくなる要素ってあったっけ?



「桜、敵の気配はないよな?」


「特に反応はありません。先輩の方はどうですか?」


「俺の方のスキルも反応はないな」


「じゃあ安全ですね。行きましょう」



 ドアを開けて外の様子を確認するが、どうやらモンスターの姿はいないようだ。

 それどころかマンションの外の様子も確認するが、昨日いたモンスター達の姿がどこにもない。

 何故かわからないが、その状況を不気味に思った。



「先輩、モンスターはいませんか?」


「どこにもいない」



 ゴブリンだけならまだしも、コポルト達の姿も見当たらない。

 モンスターが全くいないなんてこと、今まで殆どなかったのに。

 何か嫌な予感がする。



「先輩どうしたんですか?」


「なんでもない」


「また先輩お得意の疑心暗鬼ですか?」


「そう言うわけじゃないんだけど」



 なんだろう、何か忘れている気がする。こういう状況、過去に1度あったような‥‥。



「今なら安心して行動できますから、早く下に降りましょう」


「そうだな」



 桜に言われるまま、駐車場前まで行きバイクの点検をする。

 バイクの無事が確認できて、思わずほっとしてしまう。



「よかった、壊れてない」



 もしかしたら夜間に出現したモンスターに壊されていると思ったが、そんなことは無かったらしい。

 エンジンが無事にかかったことを確認し、バイクに乗る。

 桜も俺の後ろにまたがって、俺の背中にしがみつくのだった。



「先輩、今日はどこへ行くんですか?」


「この近くのコンビニやスーパーを回りながら、デパートに戻ろう」



 日向達の無事も確認しないといけない。後はゴブリン達が根城にしている場所の報告もしないとな。

 日向や三村の奴も心配しているだろうから、1回戻って俺達が見てきた情報を伝える必要があった。



「それじゃあ行きましょう。レッツゴー」


「別に掛け声はいらないから」


「こういうのは雰囲気が大事なのに」



 俺は日向達が無事に戻ってることを祈り、デパートへと向かう。

 その道中コンビニやドラッグストアーを探索したのだが、俺が想像していたよりもずっとおかしな状況になっていた。



「おかしい」


「何がおかしいんですか?」


「桜は気にならないか? モンスターがいないこと」



 デパート周辺のスーパーやコンビニを回っているのだが、その際1体もモンスターの姿が見えない。

 戦闘にならないのはいいことだ。いいことだが、ここまで1体のモンスターと鉢合わせないのはおかしい。。



「う~~んそうですね。もしかしたらどこか別の場所に行っちゃったんじゃないですか? 昨日みたいに」



 確かにその可能性もある。ゴブリンキングの後ろについて、新しい所を開拓している可能性も否定できない。

 だけど、本当にそうなのか? 俺には今置かれているこの状況が、どうにも嫌な予感がしてならない。

 この感覚、以前日向達と一緒にデパートに行った時と状況が似ているような‥‥‥そうか。



「急いでデパートに行こう」


「どうしたんですか? 先輩」


「デパートが危ないかもしれない」


「えぇ!?」



 バイクに桜を乗せ、急発進でデパートの方に向けて発進させる。

 何でもっと早く気づかなかったんだ。朝からの違和感はこれだったのか。



「先輩、デパートが危険ってどういうことですか?」


「この状況、俺達がデパートに初めて来た時と似てないか?」


「言われて見れば、確かに似てますね」



 そうだ。あの時はデパート周りにモンスターは殆どいなかった。

 それはここら一体にいるモンスターがデパートに集中していたからだ。



「あの時はまだ多少ではあるけど、モンスターと鉢合わせた。けど今回は全く出会っていない」



 それが意味すること。それはもちろん、モンスター達によるデパート襲撃。

 しかも今回は総力を結集して襲い掛かってるに違いない。



「先輩! デパートの方から敵の気配がします!!」


「あぁ」



 俺にも感じる。危険探知スキルもそっちに近づくなと言っている。

 デパートに近づくにつれ、俺の頭に警報の様なものが響いた。

 それはそっちに行ってはいけないと警告を発しているようでもあった。



「デパートの方から煙も上がってます!! 急がないと!!」


「わかった。スピードを上げるから、絶対に俺の体を放すんじゃないぞ」


「はい」



 どうやら俺の予想通り、デパートの方に敵が集中してしまってるみたいだ。

 もしかするとこの一体のモンスター全てがデパートに集まっているに違いない。



「先輩、もっとスピード上げられないんですか?」


「‥‥‥」


「先輩?」



 桜の言葉とは裏腹に、スピードを上げる手が止まってしまう。

 ここに来て、俺も臆病風に吹かれてしまっているようだ。

 今ならまだ逃げられる。大切な人と一緒に安全な所へ行けると。そう思ってしまう。



「(確かに桜と一緒に逃げられる。だけど、ここで逃げてどうする?)」



 逃げたところでゴブリンキングは生きている。生きている限り、俺はゴブリン達の脅威に怯えて生きないといけない。

 そんな生活は絶対嫌だ。モンスターの脅威にビクビクしながら生きるなんて、デパートの避難民達と同じだ。

 スピードを上げ再びデパートを向かう。徐々に俺の頭の警告音が大きくなっていく。

 それを無視して俺はデパートに向かって走り続けた。



「先輩、デパートの方から気配がします」


「どれくらいいるんだ?」


「20、30じゃないです。それよりももっと、もっと多くの‥‥‥‥」



 道が開けた。俺達の目の前に飛び込んできた光景は、想像以上だった。

 100匹以上のゴブリンがデパートを襲っている。襲っているのは100歩譲っていい。問題はその大軍相手に戦っている人物だ。



「日向!!」



 ボロボロの日向が1人で大量のゴブリン相手に戦ってるのである。

 服のいたるところが破け、肩で息をする日向。まさに慢心創痍の状態でゴブリン相手に大立ち回りをしていた。



「何が起きてるんだよ」



 遠めに見ているだけでも複数のゴブリンに囲まれ、1人で剣を振る日向。

 そんな姿になりながらも、目だけは死んでいなかった。



「先輩! 早く加勢に入らないと!!」



 桜は急いで、バイクから降りて槍を構えた。

 俺もバイクから降り、スナイパーライフルを取り出す。

 その時、通常のゴブリンより大きく大きな剣を持つ個体が見えた。

 その数2体。そいつらがゴブリン達に指示を出しているように見えた。



「ゴブリンソードですか?」


「いや、昨日俺達よりが戦った固体より大きいから違う。恐らくあいつは‥‥‥」



 敬称をつけるなら、ゴブリンジェネラルといった所か。剣や防具の他に盾まで持っていっぱしの兵隊と変わらない装備。

 もしかするとこいつ等がゴブリン達の群れのNo2みたいだな。

 きっとこいつがこのゴブリン達の大軍を指揮して、ここを襲ってるんだ。



「まずはあの雑魚達をどうにかしないと」



 ゴブリンジェネラルも強敵だが、その前に100匹近くいる雑魚を倒さないと親玉までいけない。

 むしろあのゴブリン達をこっちにおびき寄せれば、日向のことだ。ゴブリンジェネラル相手でも勝てる可能性がある。



「桜、俺が先に撃って敵をこっちにおびき寄せるから、寄ってきた敵の一掃を頼む」


「はい」


「俺も加勢に入るから、2人で一掃しよう」



 スナイパーライフルを構えてゴブリン達を狙い打とうとする。

 俺は長距離からスナイパーライフルを放つと1番近くにいたゴブリンの頭が風船のように爆ぜたのだった。

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