山村邸
「つまり先輩の話が本当なら、初期装備でもらった武器は絶対に壊れないってことですか?」
「あぁ、おそらくな」
バイクに乗りながら、俺は桜に先程の仮説を話した
デフォルトでもらった装備品は壊れない。
これはあくまで俺が立てた仮説である為、正しいとは限らない。
「それって本当の話ですか?」
「検証してみないことにはわからないが、確率は高いと思う」
桜が懐疑的に聞くのもわからなくはない。正直言って推測の域を出ない話なんだからな。
時間がある時に検証してみるしかない。
「それってゴブリンソードが持っていた剣の耐久性が低いだけじゃないですか?」
「もちろんその可能性もある」
だけどあれだけ立派な剣が簡単に折れたのだ。
俺の予想の範疇だけど、かなりの高い角度で予想が当たってる気がする。
「とりあえずその話は一旦保留しましょう」
「わかった」
「それよりこれからの話です。これからデパートに戻りますか?」
「今日はデパートじゃなくて、別の場所に泊まろう」
ゴブリンソードとの戦いに時間を取られたせいで、かなりの時間を消費してしまった。
このままではデパートに戻る前に、下手をすれば夜になる。
「どこに泊まるんですか?」
「それはもう決まってる」
バイクを走らせること20分弱。ようやく目的の場所に着く。
俺が止めたのはとあるオートロック付きのマンション前。その入り口にバイクを止めた。
「空先輩、ここって‥‥‥」
「あぁ」
そこは俺が現在住んでいるマンションである。
5階建のそこまで大きくないマンションだが、セキュリティーもしっかりしてるし、休むなら丁度いい所だろう。
「もうすぐ日暮れが近いし、この前みたいにスケルトンのモンスターが夜出るかもしれないから、今日はここで休もう」
「そうですね」
バイクをマンション専用の駐車場に停め、マンションの中を進む。
幸い電気と水もまだ生きているようで、オートロックも簡単に解除でき、無事自分の部屋へと到達できたのだった。
「ただいま~~」
「おい、こら。勝手に入るな」
桜もちょくちょくこの家に来るせいか、自分の家と勘違いしてる。
確かに桜の物も置いてあるけど、ここは実家じゃないんだぞ。
「桜、敵の気配とか何か感じないか?」
「いえ、何も感じないです。先輩は何か感じますか?」
「俺の方も何も感知してない」
どうやらここは平和のようだ。ここまで来るのに結構な時間を要した甲斐もあり追跡もされていないようだ。
「マンションにモンスターがいなくてよかったですね」
「そうだな」
もしかしたらモンスターがいるかもしれないと思い、かなり警戒して中に入ったのだが、そんなのは杞憂だったらしい。
このマンション内に限っていえば、特に危険は無いように思えた。
「やっぱり先輩は心配症なんですよ」
「心配症ぐらいがちょうどいいんだよ」
命の価値が軽くなった世界にいるんだ。石橋を叩いて渡るぐらいの慎重さを持って行動した方がいい。
「でも、そんな空先輩と行動してるからあたしも安心できるんですよね」
なるほどな。だから桜もこんなに安心して休めているのか。
でもあんまり俺の事を過信しすぎないでくれ。ミスも多いから。
「それよりあたし気になったことがあるんですけど?」
「なんだ?」
「この辺りってモンスターだけじゃなくて、人の気配もない気がするんですけど、何でですかね?」
「それは俺も思った」
マンションに入った時人の気配がなかった。
駐車場にも殆ど車がなかったことからもそれが伺える。
「何でこんなに人がいないのだろう」
もしかして、何か特別な理由があるんだろうか。
その理由は俺にはわからない。
「先輩、先輩」
「どうした桜?」
「これを見てください」
桜が指を指しているのは、今しがたつけたテレビだった。
一昨日見たようなキャスターのインタビュー映像は流れてなかったが、テレビには数々の指定非難区域が表示されていた。
「なんだ? これ?」
「たぶん避難所の一覧じゃないですか? ほら、この地区の避難所も載ってますよ」
「本当だ」
そこには全国の避難区域の一覧が流れていた。
俺達の地域の避難所の情報も書いてある。
「もしかして皆さん、ここに向かって非難してるんですか?」
「可能性はあるな」
思えば、いつもは満車の駐車場が空になっている時点で気づくべきだった。
あんなインタビュー映像を流して、こんな物を流せばそこに殺到するだろう。
「だからこんなに人がいなかったのか」
これで納得した。このマンションの住民はきっと、避難所に避難したのだ。
「このマップを見ると、俺達がいた中学校も指定避難所に入っている」
だけどあの近辺はゴブリンの巣窟になっていた。
てことは、このあたりの人は皆あそこを目指して‥‥‥。
嫌な想像だけが俺の頭を駆け巡る。
もしかしたら、桜の両親も‥‥‥。
「大丈夫ですよ。絶対にお父さん達は生きています」
「そうだな。あの人達がそう簡単に死ぬわけがない」
殺してもただでは死なない人達だ。そう簡単にあの2人が死ぬわけなんて無い。
この状況で桜が1番辛いはずなのに。強いんだな、心が。
「それよりも、空先輩。夕ご飯何か作りますよ」
「ありがとう。せっかくだから俺も手伝うよ」
「そしたら、スーパーで手に入れた調味料を出してください」
「わかった」
桜は冷蔵庫を開けて中のものを探り、俺は醤油やみりん等持っている限りの調味料を出していく。
調味料を出す俺のことは気にも留めずに、冷蔵庫の中を見ながら、テキパキと準備をしていく桜。
家主の俺よりも、この家のことを知りつくしているように見えた。
「思ったより色々使える食材がありますね」
「そうなのか?」
「冷凍庫に凍らせた肉類もありますし、野菜は新聞紙にくるんだものがあるので、意外と日持ちしていたみたいです」
なるほど、それで食料がまだ全然残ってるのか。
まてよ、でもそれって‥‥‥
「この前家に来た時、桜が俺の家でやってくれたことだよな?」
「はい」
そうだ。桜が1週間前に家に来た時、余った材料を全部冷蔵庫に保管したのである。
だって俺は殆ど自炊しないし、家で飯を作る時はは基本桜がいる時ぐらいだからこういうことは一切しない。
「そしたらあたしが野菜やお肉を切っていくので、空先輩はそれをお鍋で炒めてください」
「わかった」
そういうと桜が手際よく野菜や肉を切っていく。
それを俺はガス台に火をつけて炒めていった。
「桜、今日の献立は?」
「ハンバーグとホワイトシチューを作ろうと思います」
ハンバーグとホワイトシチューといえば、俺達の好きな料理だ。
ホワイトシチューは桜が好きな料理で、ハンバーグは俺が好きな料理。
2人の好きな料理を桜が作るようだ。
「せっかくですから、お互いの好きな料理を選んでみました」
「ありがとな。桜」
「いいえ。あたしもこのご飯が食べたかったので。それに‥‥‥」
「それに?」
「空先輩があたしのご飯を食べている所を見るのも、私は好きなので」
「そういう恥ずかしいことを言うなよ」
もしかしたら桜は1番それがいいたかったのかもしれない。
桜は恥ずかしそうに俺の事を見ていた。
「先輩、手が止まってますよ。早く動かしてください」
「わかってるよ」
「こう見るとまるで新婚夫婦のようですね」
「恥ずかしいこと言うなよ」
あぁもう、さっきから顔が熱い。
これもそれも桜が余計なことを言うからだ。
桜も自分で言ってて恥ずかしいのか、顔を赤らめていた。
「先輩、顔が赤いですよ」
「お前もな」
その後黙りこくった桜と二人で顔を赤くしながら、料理を作る。
しばらくして、出来上がった料理を桜と一緒に食べ、久々に桜の手料理を俺は堪能するのだった。
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