VS ゴブリンソード
昔の俺だったら、こんな展開になると足が震えて動けなかっただろう。
だが今の俺は違う。スキルの恩恵もあるけど、あのゴブリンキングと出会ったことで変わった。
確かにゴブリンソードは強いが、ゴブリンキングよりは弱い。だからだろうか、簡単に殺されないと理解しているからこそ、冷静に周りを見ることが出来た。
「こいつ等、油断してるな」
数の有利に加えてこの個体差、どう考えたって相手の方が有利だ。
だからこそあいつ等は油断している。何があっても俺に倒されることはないと、そう思っている。
「油断している時こそ、付け入る隙があるな」
ピンチとチャンスは表裏一体というが、まさにこのことだと思う。
どうすればこいつ等に勝てるんだろうと考えるけど、勝つことなんて簡単なことだ。
俺はこいつ等が油断している隙をつけばいい。ただそれだけだ。
「そこだ!!」
まずは正面の敵にハンドガンを6発打ち込む。4発は相手にはじかれたが、残りの2発はゴブリンソードの体に当たる。
そして5秒間のリロードタイム。相手に致命傷を与えられていればいいが、そう簡単にことが運ぶわけがない。
「やっぱり、あまり効いてないか」
距離があり、防具をつけているのでゴブリンソードにハンドガンはあまり効果がないのだろう。
そうなると俺の戦える武器の選択肢が、スナイパーライフル一択しかないわけだけど‥‥‥‥。
「こんな至近距離じゃ使えない」
さすがに距離が近すぎて、狙っている間に俺がやられてしまう。
構えるだけでも大変なのに、これをかつぎながらゴブリンソードの攻撃なんて避け切れるはずがない。
そうなると俺に出来ることといったら‥‥‥。
「クケケケケケケケケ」
不気味な笑いをするゴブリンソードの剣筋を間一髪で避けた。
今のは危ない。もし今の一撃が当たっていたら、今頃俺の首と胴が分かれる所だった。
「クェ!?」
よっぽど自信がある一撃だったのだろう。攻撃をしたゴブリンソードはそのまま前につんのめってしまう。
「チャンスだ」
ここで攻撃しないでいつ攻撃をする。そんな絶妙なタイミング。
俺は前につんのめったゴブリンソードの後頭部にハンドガンを押し当てる。
それを押し当てた時、リロードタイムの5秒が経った。
「急所を貫通しないなら、貫通する距離で打てばいいんだよな?」
そのまま頭に押し当てた銃を連発した。その数6発。パスッ、パスッと静かな音が俺の耳まで届く。
全ての銃弾撃ち終わるころには、ゴブリンソードの巨体は地面に沈み、ピクリとも動かなかった。
「まずは1体」
そしてハンドガンのリロードタイム。
この時間をどうやり過ごすかが、俺の生死の分かれ目となる。
すかさず俺は地面に倒れているゴブリンソードが持っていた剣をとった。
「重っ!?」
こいつらこんな重いものを片手で振っていたのかよ。
そういえば日向が使っている剣も重かったな。
剣ってこんな重いものなのかよ。
「空先輩!!」
「おっと」
後ろから切りかかってきたゴブリンの攻撃を間一髪で避け、持っていた剣でゴブリンソードに攻撃を仕掛けた。
だが、素人の剣術なんてゴミ当然。簡単にゴブリンソードに剣で受け止められた。
「ニチャリ」
剣を受けたゴブリンソードの顔が歪む。
お前の剣は甘いんだよ。まるでそういっているようだ。
そんなのは俺も百も承知だ。一朝一夕で剣術なんてマスターできるわけが無い。
「こいつ、俺が普段何の武器で戦ってるかわかってないな」
俺の目的はゴブリンソードに違和感なく近づくこと。
剣の押し込みの力を弱めると、俺が力負けしてると思ったのかゴブリンソードの方から俺に近づいてくる。
「本命はこっちだよ!!」
つばぜり合いで俺の顔の真前にゴブリンソードが顔を出した瞬間、持っていた銃をゴブリンソードの額に押し付けた。
慌てて俺から距離を取ろうとするがもう遅い。お前は俺の術中にはまってんだ。
「あの世で後悔するんだな」
そう言い残すと再びハンドガンを連射した。片手打ちの為、反動で多少狙いがずれるが問題ない。銃口を押し付けているんだから頭という場所の狙いから外れることはない。
6発全てゴブリンソードの頭部に命中し、2体目のゴブリンソードも力なく地面に突っ伏し絶命するのだった。
「よし! これであと1体」
「クェェェェェェェ!!」
ひときわ大きな叫び声を挙げたゴブリンソードは、問答無用で俺に切りかかってきた。
それを俺はゴブリンから奪った剣を使い、ひたすら受け続ける。
「やばい!!」
こいつ、力が強い。本当にさっきまで戦っていた相手なのかよ。
ゴブリンソードにさっきまでの余裕は消え失せて、本気で俺を殺そうとしている。
「このままじゃやられ‥‥‥」
そう思った時にはもう遅い。
俺が持っていた剣が折れてしまう。
「あっ!?」
剣って簡単に折れるものなんだな‥‥‥ってそんなことを思っている場合じゃない。
「やばい!!」
そう思ったときにはもう遅かった。
ゴブリンソードの剣が俺に迫っている。
「何か、何かないのか?」
何か、剣を防げる武器は何か無いのか?
アイテムボックスを使用している時間はない。
こうなればこれを使おう。せめて時間稼ぎぐらいにはなるはずだ。
「クェェェェェェェェェェェェェェェェ」
思わず俺は自分の手に持っていたもので、剣を防ごうとしてしまう。
そしてその直後、バキンという音が辺りに響いた。
死んだか。そう思ったが、いつまでも痛みが体にこない。
不思議に思い、恐る恐る目を開けると目の前には衝撃的な光景が広がっていた。
「何が起きた!?」
俺がガードのために使ったハンドガンに、ゴブリンソードの剣がぶつかり剣の方が折れてしまった。
いや、剣だけじゃない。一緒に装備したサイレンサーも壊れている。
攻撃したゴブリンソードの方も自分の剣が折れると思ってなかったようで、驚いた表情をしていた。
「チャンスだ!!」
剣が折れたゴブリンソードの頭にハンドガンを近づける。
そして乾いた音が6発聞こえゴブリンソードは頭部に銃撃を受け、そのまま絶命してしまう。
間一髪生き延びた俺はその場で呆然と立ち尽くすのだった。
「助かった‥‥‥のか?」
どうやら俺は生きているらしい。正直あの時死んだと思った。
何故ハンドガンで防いだ時、ゴブリンソードの剣が折れたのか。
普通はハンドガンの方が壊れるはずだ。それが壊れず、ゴブリンソードの剣の方が折れてしまった。
そうなると考えられることは1つ。
「だけど、この仮説は本当に正しいのか?」
俺のハンドガンが壊れなかったことについて、1つの仮説を立てた。
だが、その仮説は荒唐無稽な話しすぎて、信じられない。
実際に本当かどうかもわからないし、眉唾物の話である。
「もしかしてこのハンドガン、壊れないのか?」
これは初期にあの機械音声からもらったデフォルト武器。
デフォルト武器だからこそ、無くならない。
なくならないからこそ、この武器は絶対壊れることは無い。
現に装備としてつけたサイレンサーは壊れてしまったが、ハンドガンだけが残ったということは、そういうことなのだろう。
「だとすると‥‥‥」
デフォルトでもらった装備は、最強の防具にもなるってことだ。
つまりデフォルト武器の性能が強ければ強いほど、自分の戦闘が有利になるってことか。
「空先輩、今助け‥‥‥って、全部倒してる!?」
桜が慌てて加勢に来たが、もう既に戦闘は終わっている
さすがに全員倒しているとは思わなかったらしい。
構えてた槍をしまい、俺のことをジロジロと見ていた。
「なんだよ、そんなにジロジロとみて? 言いたいことがあれば言ってくれ」
「じゃあ聞きますけど、空先輩、あの数のゴブリンソードを相手にして、よく倒せましたね」
「なんとかな」
「どうやって倒したんですか? あたしは1体で苦戦してたのに」
俺だって苦戦したわ。むしろ死ぬかと思ったし。
むしろ1対3だったのがよかったのかもしれない。そのおかげでゴブリンソードの隙をついて倒すことが出来た。
「まぁ、運が良かったってとこかな」
「そういうものなんですか?」
「そういうものだ」
決して実力なんかじゃない。
実力だったら日向のように、もっとスマートに敵を倒せているはずだ。
こんな泥臭い戦いなんてあいつはしない。
だから今日は運の良さで勝ったんだ。それだけは肝に銘じておこう。
『山村空は片手剣のスキルを手に入れた』
『山村空は片手撃ちのスキルを手に入れた』
「手に入れるのが遅すぎるんだよ」
「空先輩? 何を言ってるんですか?」
「なんでもない」
いつものように無機質な機械音が頭の中に流れた。
その音声を聞いて、俺はゴブリンソード達に勝利したんだという達成感が沸く。
だが、こんな所でもたもたしている暇はない。急いで逃げないと、ゴブリン達の援軍が来てしまう。
「とりあえず援軍が来る前にここを脱出しよう。桜は後ろに乗れ」
「はい」
バイクに乗る前、2体目のゴブリンソードが落とした剣をアイテムボックスにしまう。
この剣は何かあった時に使える。直感でそう感じた。
「空先輩、何してるんですか?」
「悪い。今行く」
桜をバイクの背に乗せ、俺達はこの場所を後にする。
こうして俺達はゴブリンソード4体と戦い、薄氷の勝利を掴んだのだった。
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