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脱出

「先輩、これからどうしましょう?」


「とりあえずここでしばらく様子を見よう」



 あのゴブリンキングがまだこの辺をうろついている可能性がある。

 せっかくあいつが見逃してくれたんだ。それならここで待機して、あいつが去るのを待った方がいいだろう。



「きっとまだゴブリンキングが近くにいるから、少しここで待機してやり過ごそう」


「あたしも賛成です」



 足音は聞こえなくなったが、まだこの近くにあいつがいる可能性が高い。

 悔しいが今の俺達じゃあいつに太刀打ちできない。だったらここはみっともなくていいから、生きて逃げるしかない。

 生きぬいて力をつけて、絶対あのゴブリンキングを倒す。



「空先輩。スーパーの中に誰か入ってきませんか?」


「本当だな。足跡が聞こえる」



 バックヤードからスーパーの中を覗くと、複数のゴブリン達がスーパーの中へと入ってきた。

 たぶんさっきのゴブリンキングの家来だろう。もしかするとこうしてゴブリンキングが先に建物の安全を確認した後、配下がこうして食料を持って帰っているのかもしれない。



「先輩、どうしましょう」


「裏口から出よう。俺が先に外に出て安全を確認するから、桜は後方からゴブリン達がこないか確認をしてくれ」


「わかりました」



 やることの確認が完了したら後は動くだけだ。幸い体も問題なく動く。

 俺と桜は立ち上がり、裏口を目指すことにした。



「空先輩、何で裏口が開いたままになってるんですか?」


「たぶん二階堂の奴が開けたまま出て行ったからだろう」


 きっと慌ててたからだろうな。そうじゃなきゃ、あいつのことだ。痕跡を残したくないから、ちゃんと扉を閉めていくだろう。



「桜、ゴブリンの気配は?」


「後方はすぐ近くにゴブリンの気配はないですね。きっとゴブリン達がスーパーの中でご飯でも楽しんでるからだと思います」


「それならいいんだけどな」



 俺の危険感知スキルが何も反応をしないってことは、俺達でも充分撃退できるってことだな。

 逃げるなら今しかない。



「よし、大丈夫そうだ」


「気をつけてください。左奥の方に2匹いるようです」


「2匹か」



 それぐらいなら、俺と桜の2人でも対処できるだろう。行くなら今しかない。



「槍は持ってるよな?」


「はい。ちゃんと装備しました」


「それなら行くぞ」



 俺達が裏口から外へ出る。確かに左の奥には2体のゴブリンがいた。

 無警戒なのか、2体は俺達に背を向け立ち尽くしている。



「桜は左を頼む。俺は右を倒す」


「わかりました」



 手に持っていたハンドガンで、ゴブリンの頭部に狙いを定め引き金を引く。

 サイレンサーをつけているせいか、音は周りにそんなに響かない。



「当たれ!!」



 気づいた時にはもう遅い。銃弾はゴブリンの頭部に当たり、そのまま倒れた。

 最初の頃に比べると、俺の銃の腕前も格段に上がった気がする。



「こっちは終わった」


「こっちも終わりました」



 見ると桜の方も瞬殺だったらしい。ゴブリンの首を飛ばし、一瞬で倒したようだ。



「ただのゴブリンだと問題なさそうだな」


「はい」



 どうやら俺達は自分達が思っていた以上に強くなっていたみたいだ。

 ただのゴブリンぐらいなら、余裕で倒せる。



「空先輩、バイクはまだ無事みたいです」


「エンジンは?」


「ついたままになっていますけど‥‥‥」


「けど?」



 桜が眺めている所から顔を出すと、スーパーの前には5体のゴブリンがいた。

 全員が退屈しているように見えるから、たぶん見張りなんだろう。

 何体かのモンスターはエンジンのついているバイクに興味津々のように見えた。



「たくさんゴブリンがいますけど、どうしますか?」


「俺に任せてくれ」



 持っていたハンドガンをゴブリン達に向けた。

 ゴブリン達までそんなに距離は無いから、スナイパーライフルを使わなくても一撃で倒せるだろう。

 それにサイレンサーをつけている方が音が静かでいい。

 ゴブリン達に気づかれないように撃つなら、これを使うしかない。



「大丈夫ですか?」


「大丈夫だ」



 サイレンサーもつけてあるから、音対策もバッチリ。

 しっかりと狙いを定めて、ゴブリンの頭部をめがけて引き金を引く。

 銃弾はゴブリンの額に命中し、音も無く倒れるのだった。



「よし! 次だ」



 あいつ等、何をされたかわかっていないみたいだ。

 周りのゴブリン達が動揺している間に、次のゴブリンに狙いを定め引き金を引く。

 パスッ、パスッっという音がなるたびに、ゴブリンが次々と倒れていく。

 そして5体目のゴブリンが倒れたのを確認して、サイレンサー付きのハンドガンをアイテムボックスにしまったのだった。



「よし! 倒したぞ」


「やりましたね」


「早く行くぞ」


「はい」



 俺と桜は急いでバイクの元へと行く。エンジンはかかりっぱなしだったが、どうやら何もされていないみたいだ



「よかった。問題ない」



 バイクを確認するが、どうやら問題がないらしい。

 モンスター達もさすがにバイクには興味を示さなかったみたいだ。



「これでここを脱出できそうだ」



 やっとこのモンスターの巣窟ともおさらばできる。最初はどうなるか不安だったが、無事脱出できそうだ。



「桜乗れ」


「ヘルメット持ってないんですけど?」


「今はそんなことを言っている場合じゃないだろ? このままいくぞ」


「わかりました」



 桜を背中に乗せ、俺はこの場を後にした。

 幸いにもあのゴブリンキングの姿は見当たらない。

 もしかするとここでない別の所にいってしまった可能性もある。



「空先輩、よかったですね。ゴブリンキングがいなくて」


「そうだな」



 バイクを走らせながら、俺達は先程のスーパーから逃げる。

 後ろの方から、残ったゴブリン達の鳴き声が聞こえてくるが、それを無視した。



「よかったですね、無事に逃げられて」


「そうだな」


『山村空は騎乗のスキルを手に入れた』


「相変わらず、この音声だけは平和だな」


「何かあったんですか?」


「後で話す」



 どうやら新たなスキルを手に入れたらしい。騎乗スキル。後で確認してみよう。

 こうして俺達はスーパーを後にする。忽然と姿を消した二階堂のことは気になったが、俺達2人で無事にスーパーを脱出することが出来た。

 そして逃げる道中、幸いにも先程見たゴブリンキングは俺達の前には姿を見せることはなかった。

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